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アンソニー・ボーディン、東京を愛した人気フードジャーナリストが死去 彼が訪れた店5軒

Lim Chee Wah
テキスト:
Lim Chee Wah
Editor-in-Chief, Time Out Tokyo
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去る68日、世界中の人々の憧れの的だったフードジャーナリスト アンソニー・ボーディンが死去した。自殺とみられ、フランスのホテルの客室で発見された時、彼は既に死亡していたと言われる。享年61歳だった。

レストラン業界の裏側を暴露した著書「キッチン・コンフィデンシャル」の発表以来、彼の作品を追い続けてきた多くのファンにとって、ボーディンはただの有名フードライターやシェフ、番組司会者ではなく、フードジャーナリズムの世界に新たなスタイルをもたらした存在だった。

その語り口は、現実的で共感しやすく、断固とした正直さがありながらも軽妙。外食産業の厨房における弱者(部門シェフや皿洗いなど)にスポットライトを当て、外食業界を超える部分にまで人々の注目を広げ、本物の食の世界を紹介してくれた。人々、文化、力関係、臓物、切り落とし部位にまでいたる、真の食の世界を。

テレビ番組の司会者としてのキャリアの中で、ボーディンは何度か日本を訪れた。彼は東京への愛を繰り返し表明しており、2017年のマクシム誌のインタビューでは「もし今後死ぬまで1つの国か1つの都市に住み、そこを離れることができないとしたら、即決で東京を選びます」と語っている。

「ライス ヌードル フィッシュ」という本の序文で、我らが愛すべき東京について、彼は美しくも的を射た見解を述べている。「東京は非常に濃密で、多様なもので満ちあふれています。本当に複雑で、魅惑的で、美味で、知り尽くすことができないように思えます。たった1つのビルの中にも、狂おしいほど興味深い居酒屋が多層的に集まっています。1区画を探索するだけでも一生かかりそうです。最初に東京を訪問した時、私の感覚は輝かしくも永続的に狂わされ、それ以来、元には戻っていません」。

ボーディンに敬意を表し、彼の番組「No Reservations」と「Parts Unknown」の中で取り上げられたレストランとバーをいくつかリストアップした。彼と同じものを食べ、飲み、その足跡をたどってみたいファンにはうってつけのリストだ。

ロボットレストラン

新宿にあるこのディナーショー劇場は、奇妙でやりすぎの感があり、人々が思い浮かべる東京の姿そのものだ。ダンスやロボットの戦い、またたく光、特殊効果や激しい音楽に満ちあふれた90分間の高出力のショーなどを見ることができる。アンソニー・ボーディンは、このショーをジャニス・ジョプリン、デヴィッド・ボウイ、ジミ・ヘンドリクスのライブと比較し、「今までの人生で見た中で、一番のショーです」と熱狂した。

バー・アルバトロス

ボーディンは、ロボットレストランのショーを見終えた後、思い出横町にあるこのバーを訪れ、東京のバー文化、特にバーテンダーと客との関係に思いを巡らせた。

スシ バー ヤスダ

東京でも一流のこの寿司屋のシェフ安田直道は、普通は切り落とされる部位に注目し、風味を高めるために身を熟成させることで有名だ。ボーディンと安田は、日本を象徴する料理の寿司の見方を変えるであろう言葉のやりとりを交わしている。

ボーディン:「シャリとネタのどちらがより重要ですか?」

安田:「シャリが(重要性の)9割を占めます。ネタは2番目の食材です。メインの食材はシャリなのです」

更科堀井

このそば屋は1789年から続いており、そばの実の中心部から取れる白いそば粉を使ったそばで知られている。ボーディンは、ここでそば打ちを練習した。

「そばの風味を楽しむには、コシのあるそばを素早くつゆにつけ、音を立てて空気と共にすすることが重要です。私には、そこのところが正しくできていないようです」。

とり喜

錦糸町にあるこの有名な焼鳥屋で、ボーディンはあまり知られていない部位の鶏肉と、鶏の刺身に挑戦した。

「これくらい新鮮で美しい鶏肉を食べるなら、生が一番です」。

親愛なるアンソニー・ボーディン、東京を世界に紹介してくれてありがとう。あなたの貢献、特にすがすがしいほど新鮮で率直な語り口を、フードジャーナリズムの世界に取り入れてくれたことに感謝したい。東京はあなたの存在を強く恋しく思うだろう。

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