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テキスト、写真:宮田紀子
デザイナー古田泰子によるブランド『TOGA(トーガ)』の設立20周年を記念した、雑誌『WERK(ヴェルク)』の最新号『TOGA-WERK No.25: ARCHIVES』が、800冊限定で発売中だ。フォトグラファーの鈴木親が撮影してきた『TOGA』のイメージ写真をまとめた1冊となっている。12月8日には、発売を記念したトークショーが都内で開催された。独自のデザインや女性像を作り上げてきた『TOGA』が、いかにしてブランドとして成長を続けてきたのか、古田と鈴木の発言からひも解いてみる。
ファッションによって、デザイナーとフォトグラファーがリンクした
古田と鈴木は、職業は違うにせよ、「ファッション」という同じ土俵で、いくつもの試練を乗り越えてきた。ファッション業界の伝統と前衛が交差した1990年代に、2人はパリに留学し、現在のスタイルの基礎を作った。古田は「アルバイトをしながら、(ジャン=ポール・)ゴルチエの右腕の人のアシスタントをし、同時に(マルタン・)マルジェラのようなアントワープ集団からも影響を受けていました。自分はどういう方向でやっていくのか、ちょうど狭間で考えていた時期でした。その激動の時期に、親君と同じ場所で、同じように悩んでいたというのは、大きくリンクする部分だと思います」と振り返る。鈴木は、留学を機にフランス発のインディペンデントマガジン『Purple』を中心に、インターナショナルな活動を続けてきた。「『Purple』は、ブランドから直接送られてきた洋服を好きに撮影して掲載するんですよ。フォトグラファーが全責任でやっていたんです。今のTOGAとの仕事もこれに似ていて、編集長的な目線でディレクションをしています」。
強い意志でレンズをのぞける人でないと、良いビジュアルはできない
ブランドのアイコンモデルはすべて鈴木の提案からだそう。「洋服のイメージからではなく、その時代にどういう女性が必要なのか。『TOGA』の女性像を明確に作り、エッジがあることが必要かなと思いました」と鈴木。古田も全幅の信頼を寄せており、「2004-‘05秋冬コレクションの『メタル・コア・ファンタジー』で親君が自由に写真を撮った時、私が望んでいるものを確実に形にできる人だという信頼が生まれ、以来、ディレクションをしてもらっています。強い意志でレンズをのぞける人でないと、良いビジュアルはできないと学びました。『TOGA』というブランドをどういう形で作っていくのかを考えた時に、1、2年で終わる話ではないなと思いました」。
古田は、『TOGA-WERK No.25: ARCHIVES』のデザインを手掛けたテセウス・チャンにも、厚い信頼を寄せている。「以前、テセウスがデザインした出版物を見て、彼自身のスタイルがきちんと表現されていた印象だったので、この人だったら託してもいいと感じました。私はいつも、クリエイターに託したら出来上がりをただ待ちます。親君に写真のセレクトもすべて任せました。『TOGA』のアーカイブではなく、テセウスが改めて『TOGA』をプロデュースするという意味も含めた1冊になりました。ページをめくっていくだけで、私たちがやってきたことが時間軸を持って動いていき、静かな風景で終わる。1つの物語として作り上げられたと感じます」。
信頼し合ったクリエイターたちによって紡がれる、『TOGA』のストーリー。「個」の力を最大限に活かすことで、絶対的な世界観を作り出す。20年を迎えてもなお、新しいことを生み出すことに余念がない彼女たちの姿を、これからも追い続けたい。
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