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2018年冬にパリのラ・ヴィレットで好評を博した『MANGA⇔TOKYO』展。その待望の凱旋展が、2020年8月12日、六本木の国立新美術館で開幕を迎えた。本展は新型コロナウイルス感染症の影響で約1カ月延期しての開催となったが、自粛期間中はかえってマンガ、アニメ、ゲームに触れる機会が多く、それらの文化を醸成する時期にあったのかもしれない。
「東京」という特定の都市を舞台にしたマンガ、アニメ、ゲーム、特撮を横断的に展示する本展は一つの作品や作家に焦点を当てた展示とは異なり、通常は隣り合わないはずの作品たちが意外なテーマで結び付き、相互作用を及ぼす。
テレビウォールと1000分の1の縮尺で東京を再現した巨大模型を囲むように、戦争や自然災害によるスクラップアンドビルドの繰り返しから生まれた作品群が並ぶ『セクション1 破壊と復興の反復』、江戸から現在に至る人々の生活を映し出す『
1. 虚構の東京に没入する。
アニメ監督の押井守は「アニメーションというのは不思議なもので、『ここはどこだ』とはっきり言わないと、大体『そこは東京である』と思っちゃうんです」と語る。この指摘はまさに本展の核心を突いたもので、東京という都市が無意識にも日本のマンガ、アニメ史の中でリアリティーの基盤になってきたことを表出する。まずは会場中央の巨大な装置の前に立ち、アニメーションと地図、模型を交互に見比べることで、現実と虚構を行き来しながら徐々に二つが溶け合っていく感覚を味わってほしい。
2. 女性キャラに注目する。
都市や社会の変遷を辿る上で興味深い作品が並ぶなか、女性キャラクターがどのように表象されているかもチェックポイントに加えてみよう。例えば『はいからさんが通る』のヒロインのコスチュームは、着物に編み上げブーツを組み合わせており、当時の西洋風の指向を知ることができる。
蜷川実花によって映画化された花魁(おいらん)を描く『さくらん』など、かつては座敷の存在だった女性が経済成長とともに社会進出し、1990年代には『美少女戦士セーラームーン』のように戦いのイメージが付与されるに至ったことも注目に値する。現実を映し出す鏡としてのマンガ、アニメ、ゲーム、特撮は、これからの女性社会を考えるにあたって示唆を与えてくれるかもしれない。
3. 修正跡にも目を凝らす。
本展は複製原画だけでなく、数多くの貴重な原画も展示される。手塚治虫の『陽だまりの樹』や石ノ森章太郎の『佐武と市捕物控』をはじめ、『あしたのジョー』『シティーハンター』『3月のライオン』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など、ここには書ききれない名作の原画が、作家という枠を超えて一堂に会する機会はまたとない。修正のホワイトや鉛筆の下書きまで見て取れる、原画ならではの良さを存分に楽しもう。
4. 耳を澄ませる。
セクション2までは、静ひつな空間で画や映像にじっと目を凝らす展示となるが、セクション3の『キャラクターvs. 都市』では一度目を閉じて、耳でも鑑賞してみてほしい。耳を澄ませば、キャラクターの「萌え声」や電車の音が聞こえてくることだろう。ここで展示されているのは、主に『コンビニエンスストアと「初音ミク」』『電車と「ラブライブ!」』という注目すべき二つのインスタレーション。
この展示空間に満ちる音を聞くだけでも、東京の街に放り込まれた感覚になるのだから不思議だ。いかに虚構のキャラクターたちが現実の都市を浸食しているか、それを私たちがいかに自然に受け入れていたかに気づくだろう。
5. オタクTシャツをゲットする
展示室を出た先にあるショップブースでは、『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』など、展示にはなかった人気作品のグッズが多数そろっている。なかでもおすすめは棚一面に並ぶTシャツ。『ゴジラ』や『機動戦士ガンダム』がド派手にプリントされたものなど、外へ着ていくには勇気がいるけれど、記念に残るTシャツを購入してみてほしい。
『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』の詳しい情報はこちら
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