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夏休みのような長期ゴールデンウィークが終わり、現実に引き戻された5月。今月は、実存の人物を題材にした作品が目立った。ガス・ヴァン・サントの新作で、アル中の風刺漫画家をホアキン・フェニックスが演じる『ドント・ウォー リー』や、実在のガールズスケートクルーを中心に描かれる青春劇『スケート・キッチン』などだ。人生を思い切り走り抜く彼らにインスパイアされて、爽快な気持ちで劇場を後にしてみよう。
『ドント・ウォーリー』 ※5月3日公開
(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC
亡きロビン・ウィリアムスとの構想から20年の時を経て、ガス・ヴァン・サントが完成させた渾身の最新作。交通事故による麻痺を抱えるアル中の風刺漫画家をホアキン・フェニックスが熱演する。ほかにも、ジャック・ブラックとジョナ・ ヒル、ルーニー・マーラなど信頼のおける個性派俳優が勢ぞろいしている。優しく、でもどこか心がヒリヒリさせられるような「ガス・ヴァン・サント節」は今作でも健在だ。
『スケート・キッチン』 ※5月10日公開
(C)2017 Skate Girl Film LLC.
ダウンタウン、ニューヨークの「今」を最もリアルに描いている作品。1990年代のストリートカルチャーのバイブル的映画『KIDS』の現代版、そして女子版ともいえるだろう。実在する女子スケートクルー、スケート・キッチン。実際のメンバーを中心にストーリーが展開する。人種や年齢、性別なんか関係なしにやりたいことはやる。 反抗心と、理解し合える仲間との出会い、そして恋。リアルとフィクションのギリギリを突く青春映画。
『アメリカン・アニマルズ』 ※5月17日公開
(C)AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018
大学の図書館に所蔵されている約12億円の文献を目当てに、学生たちが引き起こした強盗事件の映画化。まさかの実話である。退屈な生活を送る学生が、特別な何者かになりたいという承認欲求のようなものが間違った方向に突き進む。ド素人の学生集団は『レザボア・ドッグス』や『オーシャンズ11』など、犯罪映画を参考に作戦を練っていく……。 監督がドキュメンタリー上がりの人物で、実際の映像と巧みに絡み合って映画が進む、ドキュメンタリーとドラマのハイブリッドであることが本作の注目ポイントだ。
『貞子』 ※5月24日公開
(C)2019「貞子」製作委員会
ジェイソンやフレディがいるならば、日本のホラーアイコンは貞子だ。鈴木光司のベストセラー小説『リング』シリーズの『タイド』を原作にした絶叫ホラー映画。監督は『リング』の中田秀夫が務める。池田エライザ演じる主人公の弟で、動画クリエイターの和真が、視聴者数欲しさに放火事件現場へ動画撮影に行ったところ……。映画『リング』では呪いのビデオテープがキーとなっていたが、時代が変わり今作では配信動画へと呪いがアップデートされている。
『イングランド イズ マイン』 ※5月31日公開
(C)2017 ESSOLDO LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
1980年代、痛烈な言葉と独特の音楽性で、イギリスの音楽シーンを席巻した伝説のバンド、ザ・スミスのフロントマン、スティーヴン・モリッシー。学校をドロップアウトして、就職してみたものの周りとなじめないひねくれ文学青年の苦悩と挫折を乗り越えた先のサクセスストーリーが描かれる。ダークで死の匂いのする歌詞と美しいメロディーで、世界中に狂信的なファンを生んだバンドが伝説になる前の物語だ。全ての負け犬たちに捧げるロック映画。