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2017年のベストバー、バー・ラ・ユロット、その懐深き魅力

テキスト:
Kunihiro Miki
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2017年11月2日(木)に渋谷ヒカリエホールにて開催された『Love Tokyo Awards 2017』で、2017年のベストバーとして表彰されたバー・ラ・ユロット(Bar la Hulotte)。受賞後、店には麻布や六本木で働く欧米人たちが多く訪ねて来るようになったという。初めて店の扉を開けた彼らの多くは、「麻布にこんなバーがあったなんて」という驚きの言葉を漏らす。確かに、周辺エリアの表通りに並ぶ煌(きら)びやかなバーたちとは異なる、洒脱のひと言では片付けられない奥深い雰囲気が、ラ・ユロットにはある。『Love Tokyo Awards』の審査員たちの心を鷲掴みにした名店の、その魅力を探ってみよう。

川瀬彰由


すでに知られているように、店主の川瀬彰由は、青山の名店 バー・ラジオで修行を積んだバーテンダーのひとりだ。ラジオのオーナー尾崎浩司といえば、日本のバー文化を象徴する人物である。当時、静岡県富士宮市から大学進学のために上京した川瀬は、すぐさまバーの世界に飛び込み、授業そっちのけでバーテンダーのアルバイトに勤しんでいた。

「その時に働いていた銀座のバーの次に働く店を探していた時に、ラジオを勧められたんです。飲みに行くと、この店で働いてみたいと強く思わせるものがありました。その後4年間の修行で、尾崎さんやラジオから得たものが、現在の私の基礎を作ったことは間違いありません」。

 バー ラジオ:尾崎浩司


華道、茶道、武道と、あらゆる「道」に通じている尾崎の教育は、手取り足取り教えることはなく、尾崎の動作を見て盗み、学ぶことを求めるものだったという。過去に尾崎が語った「謙虚さを失うと(店は)つぶれます」という言葉の真意を、川瀬に尋ねた。

「でしゃばるな、ということじゃないでしょうか。その姿勢は私も受け継いでいることですが、お客さんに何かを押し付けたり、上からものを言うようなことはすべきではないと考えています。」

ラジオで染み付いたスタイル、尾崎から受け継いだ考え方が現在の川瀬を形作った一方で、ラ・ユロットが唯一無二の店として評価されているのは、川瀬の理想が結晶した確固たる「ラ・ユロットらしさ」が確立されているからだ。

「開店から5、6年経ったあたりで、だんだんとお客さんたちが自然とお店の雰囲気を作って維持してくれるようになりましたね。これが自分の店を作るということなのか、と。うちは、棚や細かな金具がアンティークであるなど、内装はこだわって作っています。個人的にも100点の出来だと思っています。カクテルにしても、最高のものをお出ししている。けれど、今回の『Love Tokyo Awards』が、うちのそうした部分だけを評価したものだったら、お断りするつもりでした。うちの全体の雰囲気、ラ・ユロットらしさを評価してもらったという内容だったから、お受けしたんです。

例えば、うちは24時を回ったら雰囲気が一変して、馬鹿話に花を咲かせるざっくばらんな感じになります。おすすめのカクテルを聞かれたら、なるべく答えるようにしますし、若くてバーに不慣れなカップルが来たら、男が恥をかかないように気を使ったりね。そういうやり方を良しとしないお店もありますが、僕は、バー文化を愛する人の分母を増やしていきたいと考えていますから。」

実際、ラ・ユロットには常連客も多いが、20代〜30代の若者や外国人客も珍しくない。

「謙虚さの話にも通じますが、脇を開けてあげることですね。昔は、ここまで登ってこい、というのがバーのあり方でしたが、今の若い子はそれでは逃げてしまうから。出張らずに、懐に入りやすいよう脇を開けておく。そうすることで、カウンターに若者と外国人、常連客たちが並ぶ。現代のバーのあり方はそれが理想だと思っています」。

すべてに100パーセントのこだわりを注ぐ川瀬だが、そのこだわりは独りよがりなものであると、ばっさりと断言する。客の立場に立つこと、バー文化を発展を最優先する姿勢こそが、同店が東京で最も行くべきバーとして選ばれた理由なのだろう。

【バー・ラ・ユロットで飲むべきカクテル】

「スタンダードを注文される方が多い」というバー・ラ・ユロットで、まず飲むべきカクテルを紹介する。川瀬が特に好きなカクテルであるという『サイドカー』と『マンハッタン』、そして外国人に人気の高い『オールドファッション』の3杯だ。

 『サイドカー

  『マンハッタン』  

『オールドファッション』

バー・ラ・ユロットの詳しい情報はこちら

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