現在、渋谷は再開発工事が進行中で、その規模は世紀に一度のものと言われている。渋谷区長の長谷部健と、今回の開発に携わっている東京急行電鉄株式会社より、 都市創造本部の東浦亮典の2名を招き、 区域の将来について議論を交わしてもらった。理想的な渋谷の未来像を実現するべく、自治体を代表する長谷部区長と、民間デベロッパーを代表する東浦が手を取り合い協力してゆく。
長谷部:渋谷は長年様々なストリートカルチャーの中心地となってきました。これらストリートカルチャーは、地域のコミュニティーから生み出されているものであり、自治体が作り出しているものではありません。現在、この地域が文化のハブとしての活力を以前よりも失っているのではないかと危機感を持っています。私は渋谷で生まれ育ち、その影響力がどれだけ大きいものだったかを知っているので。
ですから、コミュニティー活性化のためのよりよい環境を作り、自治体の立場から支援を行うことが、私の任務であると確信しています。「コミュニティー」と言う場合、私は決して渋谷の住民以外を除いてはおらず、渋谷に住む、働く、またはここで時間を過ごすことが好きな人すべてを指したいと思っています。
東浦:その考えにまったく同感です。色々な人を寛大に受け入れられるというのは、渋谷の素晴らしい特徴の一つであり、他のどの地域においても、発展するための重要な鍵となることでもあります。私も若いころは渋谷でアルバイトをしていたので、この街でよく遊んでいました。ですから、どれだけ多くの様々なコミュニティーと文化が受け入れられているのかを目にしてきました。
長谷部健
長谷部:渋谷にはカウンターカルチャーを生み出す活力のようなものがあります。たとえば、富ヶ谷、代々木八幡エリアは今では「裏渋谷」の愛称で呼ばれ、たくさんの面白い飲食店が開店してきています。このようなコミュニティーが渋谷をいきいきとして面白いものにするのです。このような雰囲気を維持すべく、それぞれの地区のスターたちに注目したコミュニティーFM局を再開させたいとも思っています。
東浦:そうですね、常に渋谷は私たちに新しい姿を見せてくれます。それが人々が何度もこの街に足を運ぶ理由でもあると思います。 スクランブル交差点のような有名どころだけではなく、渋谷の違った面を発見しにやってくる。都市化が起きるとき、多くの場合は鉄道駅周辺に巨大なビルが建設され、駅の利用客はほぼ毎回その中で時間を過ごすようになってしまう。でも私は、駅の外も歩き回ってもらいたい。そういった意味で、安全で便利な交通システムと、都市基盤を提供することは我々の使命のひとつでもあります。
長谷部:その通りですね、私の場合コミュニティー支援の一環として、歩行者にとって道路を利用しやすくすることに特に注目しています。さらなるストリート文化を作り出すためにも、歩行者天国の設置をすることがもう一つの目標です。
東浦:それは素晴らしい! デベロッパーとして私たちはこの開発に、より多くの人を巻き込み、理想的な将来像を議論をする必要があると感じています。一般的にジェントリフィケーションといって、大規模開発することにより、地域の小規模ビジネスが追い出され、近隣社会の個性を台無しにしてしまう可能性というのがあります。これを避けるためにも、私たちが現在建設している新しいビルには、小規模な企業のための多くのオフィススペースやシェアスペース、そしてクリエイティブ空間を設ける予定です。
私たちも常にコミュニティーに貢献できることは何かということを考えています。たとえば、昨年10月に開催された、『”かも"づくり (Making Maybe) フューチャーセッション 討論会』では、「渋谷民」と呼ばれる渋谷の来街者、就業者を含めて渋谷の将来について深く話し合いました。地域の声に触れ続け、ともに行動を起こすために、このような討論会を定期的に開催することが重要だと思っています。
東浦亮典
長谷部:行動を起こす、という話では、ハロウィン後の清掃イベントは大成功でしたね。
東浦:そうですね、実に渋谷らしいクリエイティブな社会改題解決方法でした。たった2時間で渋谷がいつもよりきれいになるなんて!