白金の商店街にある、このどちらかと言えば控えめな中古の着物屋は、予期せぬ掘り出し物に出会える宝の山のような店だ。店から着物を着こなした、どことなく気品と洒落っ気のある紳士が出てきたら、彼こそがこのきものや ろふていのオーナー、河内だ。かつては歌舞伎俳優として、現在はモデルとしても活躍する彼が、恵比寿に着物屋をオープンして15年になる(現在の白金に移ったのは5年ほど前)。洋服を着ることをすっぱりとやめ、着物一筋になってから20年、彼の究極の願いは再び人々が着物を日常的に着るようになることだ。着物のスタイリングやルールについて聞く上で、彼以上の適任者がいるだろうか。河内の話をより深く、詳しくするべくコメントを入れてくるスタッフの女性の声にもぜひ耳をかたむけたい。2人の話は我々の知らないことばかりで、取材に行った際は予想の倍以上の時間ががかかってしまった。
着物を「探す」という意味では、同店はもしかしたら他店より探すのが難しいかもしれない。なぜならただ畳まれて棚に陳列されているわけではなく、ビニールに入っているからだ(取り出し、試着可能)。商品の値段はだいたい6,000~40,000円で、アンティークとなるとさらに高くなり、はっきりいって安さ目当ての人には手放しに勧めることはできない。しかし、外にある正絹、絹100%の羽織は驚きの500円で売っていたりする(なかにはポリエステルのものもありクオリティも順当だが、その美しさに変わりはない)。また、男性ものの着物も豊富に扱っており、河内が丁寧に帯の組み合わせや着物を着た時の姿勢を教えてくれる。もしより詳しく着物について、または身のこなしなどを知りたいなら、レッスンや、お直し、クリーニングサービスまで請け負ってくれる。文字通り、ワンストップの着物屋だ。
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