能声楽家の青木涼子が、新型コロナウイルス終息祈願『能声楽奉納』を各国の作曲家とともにオンラインで開催。祈りの芸能ともいえる能の謡の曲を、配信に協力する作曲家の暮らす国の人々に向けて演奏する。
2020年5月30日の第1回はヨーロッパで被害の大きかったイタリアへの奉納のために、ミラノから作曲家フェデリコ・ガルデッラが参加し、東京フィルハーモニー交響楽団首席フルート奏者の斎藤和志と青木で共演した。
第2回は7月4日(土)にフランス在住の作曲家、馬場法子が『源氏物語』第9帖の『葵』を題材にした『NoperaAOI葵』を奉納演奏。青木涼子がwrittenafterwardsの山縣良和による衣装を着て、嫉妬のため生霊となった六条御息所の心の葛藤を、フルートの斎藤和志と打楽器の畑中明香の演奏とともに描き出そうと試みた。
第3回は7月11日(土)にスペインのチェリスト、アルド・マタとリアルタイムでの遠隔合奏。スペイン在住の作曲家ブルーノ・ドッツァ『エウリディーチェ』を演奏した。
第4回『オランダのために』では、12月7日(月)に世界三大オーケストラの一つであるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団メンバーとともに馬場法子『ハゴロモ・スイート』を奉納演奏する。
第5回『ドイツのために』は、2021年2月19日(金)、ケルンを本拠地とする現代音楽の最高峰グループ『アンサンブル・ムジークファブリーク』とともに奉納演奏。ハンガリーの著名な作曲家で指揮者のペーテル・エトヴェシュが、青木のために作曲した『くちづけ』を扱う。『くちづけ』の原作となった小説からは、原三溪が経営した富岡製糸場が思い起こされることから、横浜三渓園とケルンをつないで配信するという。
なお、第4回、第5回はそれぞれ2018年2月にアムステルダムのコンセルトヘボウ、2019年9月にベルリン・フィルハーモニーホールで同じラインアップで演奏されている。
過去の公演も含めたライブは、YouTubeの公式チャンネルから視聴でき、PeatixとPayPalで支援金を受け付けている。ポストコロナの文化を考える上で意欲的な公演だ。