「永青文庫」で、熊本県指定重要文化財の『領内名勝図巻』に焦点を当てた「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」が開催される。
『領内名勝図巻』は、熊本藩のお抱え絵師・矢野良勝(やの・よしかつ、1760~1821年)と衛藤良行(えとう・よしゆき、1761~1823年)によって制作された。主に熊本領内の滝や名所、川沿いの風景などの絶景が全15巻にわたって描かれた作品で、写生図巻の先駆的作例だ。
巻物は縦約30センチほどの大きさが一般的だが、本作は約60センチあり、大迫力のパノラマが展開。全巻の長さの合計は400メートルにも及ぶ。これほどまで長大で迫力に富んだ作品は類がなく、日本最長の画巻と見られ、そのスケールの大きさを実感できるだろう。
矢野と衛藤は名所や絶景ポイントを実際に訪れ、この実景図を描いた。会場では、現存14巻の中からえりすぐりの7巻を通して、本作の迫真の風景描写や制作背景を、現地写真とともに紹介。比較すると、絵師たちが滝や奇岩の特徴をよく捉えていることが分かる。とりわけ滝の描写は、その流れ落ちる音が聞こえてきそうなほど圧巻だ。
また画面には、洞窟を探検する一行の姿や温泉で体を癒やす人々といった、ごく小さな人物が描きこまれている。現地を取材した絵師たちの姿と重なり、鑑賞者を画巻の世界へと誘い込むだろう。
豊かな水と緑をたたえる熊本の大自然が広がる本作。旅人になった気分で楽しんでほしい。
※10時〜16時30分(入館は閉館の30分前まで)/休館日は月曜(5月5日は開館)、5月7日/料金は1,000円、70歳以上800円、学生500円、中学生以下無料