国分寺の急な坂道を上ったところにある「丘の上APT」は、隠れた名ギャラリーである。建築家の藤森照信が設計した建物は、外壁がトタン板のうろこ張りで、銀色に光るトタンをパッチワークのように編み込んでいる仕上がりが特徴的だ。内装はしっくいと木材の素材感あふれるつくりになっている。
隣接するオーナー一家の住まいである「チョコレートハウス」も藤森が設計。これほど近くに「藤森建築」が並んでいるのは全国でもかなり珍しい。銅版で覆われた壁面と突き出た茶室が独創的だ。民家なので中には入れないが、来訪者のために前庭までは自由に観覧できるように解放している。ぜひ併せて楽しんでほしい。
建築だけでも十二分に堪能できるが、中のコレクションも見逃せない。年7回ほど特別展を実施し、洋画家・児島善三郎の作品などをはじめ、絵画や彫刻などオーナーの兒嶋俊郎が「その時々に必要だと感じたもの」を展示。日本の近現代美術作品、伝統的染織(BORO)や縄文土器なども扱っている。
特に児島作品やBOROは海外でも人気で、はるばる海外から訪れる人もいるそう。兒嶋が近所の子どもたちのために作ったという木彫りの椅子や動物たちも方々でくつろいでいる。飄々(ひょうひょう)としたたたずまいがどこかホッとする。