「渋谷区立松濤美術館」で、さまざまな年代の「空」に焦点を当てた展覧会が開催。「空」の表現の変遷を通じて、そこに映し込まれる意識の揺らぎを浮かび上がらせる。
近世まで「空」を現実的に描こうとする意識が希薄であった日本美術の中では、空が「余白」のような位置づけであった水墨画や、金雲などが描かれた障屛画(しょうへいが)を紹介。写実主義の西洋美術の中からは、風景画で名を成すイギリスのジョン・コンスタブル(John Constable)などを中心に、西洋美術と日本美術の視点を比較する。
明治以降は、西洋画教育や気象観測の導入を受け、変化する雲や陽光を写しとろうとする画家が登場。また、自画像に、個性的な色合いの雲を描き込んだ萬鉄五郎(よろず・てつごろう)など、空に自身の心象を託すようにもなった。
江戸時代には、天体観測の様子が描かれている葛飾北斎の『富嶽百景』《浅草鳥越の不二図》などから、宇宙の認識が見てとれる。さらに、池田遙邨(いけだ・ようそん)が1923年の関東大震災時の体験をもとに描いた『災禍の跡』などを通して、カタストロフィーによってあらわになる空の姿も追う。
現代からは、最新のデジタル技術によって一瞬をとらえるAKI INOMATAなど、空を主役に据えることで、アート自体を揺さぶろうとするアーティストたちに注目する。本展を通じ、あらゆる空の表現と出合ってほしい。
※10~18時(金曜は20時まで)/入場は閉館の30分前まで/休館日は月曜(祝日の場合は翌日)/料金は1,000円、学生800円、60歳以上・高校生500円、小・中学生100円(土・日曜・祝日は小・中学生無料)、金曜は渋谷区民無料、団体10名・渋谷区民は2割引