東北

東北探索 第1回『武士の歴史を追って 福島県西部』

タイムアウトニューヨークの記者による東北探索

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タイムアウト東京 > トラベル > 東北探索 第1回『武士の歴史を追って 福島県西部』

in association with NHK WORLD
テキスト:Joel Meares
写真:Keisuke Tanigawa
翻訳:Momoko Asai

今年で東日本大震災から5年が経つことを受け、タイムアウトニューヨークの記者が東北地方を巡り、現在の東北をレポートする記事をタイムアウトニューヨークのウェブサイト、タイムアウト東京の英語サイトで連載している。全4回の連載の第1回目は、『Following the samurai in western Fukushima』と題し、会津若松の名物を紹介。

第1回『武士の歴史を追って 福島県西部』
第2回『東北で見つけた海の生き物たちとフラダンス』
第3回『宮城で島めぐりと人間観察』

会津は東京の北部に位置する景観の美しい地域で、東京からは新幹線で郡山駅まで行き、そこから在来線に乗り換える。とんかつは、この歴史的な町の名物料理だ。会津市内のたいていのレストランで、プロが作ったパン粉の衣を纏ったこの豚肉料理が味わえる。そして、今までショッピングモールで食べていた、まずいとんかつを忘れさせてくれることだろう。編集部が選んだのは、とん亭(福島県会津若松市天寧寺町1-11)だ。ピリ辛で甘酸っぱいソースのかかった、ジューシーで歯ごたえのある3枚の丸々とした厚切りの豚肉の美味しさに、30分近く口数が減ってしまった。

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会津の素晴らしさは食べ物だけではない(と言っても美味しいものは多い)。日本人や外国人の旅行客は、会津を訪れミネラル豊富な温泉に浸かり、侍の歴史を堪能し、1600年代から変わらない町並みを楽しむ。2013年にテレビで放送され大人気となった歴史ドラマ『八重の桜』は、会津のジャンヌ・ダルクともいえる女性を主人公に、この地で撮影され、観光客を惹きつける新たな魅力になっている。

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会津は、福島県の最西部に位置する。福島という名に聞き覚えはあるだろう。2011年3月11日に、日本の北東部を襲ったマグニチュード9.0の地震と津波により最も破壊された地域で、メルトダウンとその後数ヶ月におよぶ混乱の現場になった福島第一原子力発電所もその中に含まれる。現在、発電所は機能を停止した状態で立ち入り禁止区域に指定されているが、会津からは120km以上離れており、会津には活気を取り戻している兆候があちこちに見られ、古くからの歴史は最近の事件よりも人々を惹きつけている。

会津若松の観光の目玉は鶴ヶ城(福島県会津若松市追手町1-1)だ。1384年に築かれ、戊辰戦争の後に一度取り壊されたが、50年後に再建された。城の中心にそびえる約36mの天守閣は、見張り塔としての役割を持ち、5階の張り出しから会津の町と遠くの山々が見渡せる(現在は、鶴ヶ城に関する博物館もある)。天守閣を上りながら、歴代の会津藩主たちにまつわる歴史を学んだり、古川兼定など当時の地元の刀職人の手による名刀を眺め、白虎隊の話を聞くのもいいだろう。白虎隊は20名の10代の若侍からなる集団で、戊辰戦争の際に城が落城したと信じ、それを嘆いて近くの飯盛山で自害したことで知られている。白虎隊の墓は飯盛山にあり、訪れることができる(山の途中で売られている手作りのまんじゅうも勧めたい)。

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鶴ヶ城で歴史への好奇心が刺激されたら、会津のどこへ行っても楽しめる。侍の住居を再建した会津武家屋敷(福島県会津若松市東山町大字石山院内1)では、侍たちの生活の様子を体験でき、市内から離れた場所にある1640年に開かれた山あいの宿場 大内宿(福島県南会津郡下郷町)では、江戸時代から変わらない茅葺き屋根の街並みを眺められる。現在、建物のほとんどはレストランで、その中には気前良く酒の試飲をさせてくれるフレンドリーな日本酒販売店もあった。

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温泉での入浴は、江戸時代より古くから続く日本の伝統的習慣だ。過去に浸りたいなら、温泉旅館への宿泊を勧めたい。会津若山の駅から車で10分ほどの山の中にある庄助の宿 瀧の湯(福島県会津若松市東山温泉108)では、会津の名所伏見ヶ滝を見下ろすことのできる露天風呂や内風呂が楽しめる。和室でくつろいで、浴衣に着替えたら、朝早くから夜遅くまで風呂から風呂へと廊下を移動する日本人の宿泊客に混じってみよう。

この旅館に泊まる利点は、タクシーですぐ会津郷土食 鶴我(福島県会津若松市東栄町4-21)に行けることだ。とても伝統的なこのレストランのメニューは、西欧人にはちょっと難しいくらい異国を感じさせる。絶品の馬肉の刺身や、絶妙に塩気の効いた燻製卵、甘い豚ひき肉のソースがたっぷり塗られた分厚い豆腐のステーキは外せない。カウンターの上に並ぶ満面の笑顔を浮かべている芸能人たちの写真には理由があるのだ。ここでの食事は、最高の思い出のひとつになるだろう。もちろん、昼に食べたとんかつも。

『Following the samurai in western Fukushima』の原文はこちら
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