未だ約2000戸6000人の避難者が自宅へ戻ることができず、彼らが飼っていたペットも取り残されたままだ。そして、除染という新たな波が打ち寄せている。
村には今、あちらこちらに蛍光オレンジの工事用旗やテープが現れ、そこが除染予定区域であるということを知らせている。2014年初夏から除染が本格化し、1000人ほどだった作業員が4倍に増員され、村はにわかに活気を帯びている。草は刈られ、土は掘られ、木は倒され、草木が伸びきってしまった庭や農地は、新たに砂利や土で覆われた。農業が盛んだったこの土地は、作業員の姿と放射性廃棄物の詰まった袋の山が日常的な風景に変わった。
少なくとも3,000億円の税金が、飯舘村の除染に使われている。住宅地域と周辺農地の作業は2014年末までに完了する計画だが、村の75%を占める森林を、いかに効果的に除染するかについてはまだ模索中だ。たとえ、家と周辺の土地だけが除染されても、森林に散らばる放射性物質から出る放射能が、民家の方へ舞い戻ってしまうのではないかと多くの住人が懸念する。そして、わずか30kmしか離れていない原発から、いまだに放射能が漏れ続けているという事実は言うまでもない。