欧州連合(EU)は、渡航希望者が安全かつ入国に適した人物であるかを判断するETIAS(欧州渡航情報認証制度)の導入を進めている。この制度は、約60カ国(日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリアなど)からの旅行者がヨーロッパのシェンゲン圏に含まれる国とアンドラ公国へ渡航する際、事前の登録が必要となるというものだ。
観光やビジネス、トランジットといった目的の旅行にのみ利用可能で、ETIASの申請が承認されていない場合、旅行者は飛行機や船舶、バスなどに搭乗することができない。また、シェンゲン圏に含まれる国で乗り継ぎをする場合にもETIASの申請が必要になるようだ。
現在、シェンゲン圏を構成するのはEUに加盟している22カ国のほか、EU非加盟の4カ国、ヨーロッパにある「ミニ国家」と呼ばれる国のうち4カ国。ETIASの運用開始後、入国前に登録が必要となる国のリストは以下の通りである。
EU加盟国
オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン
EU非加盟国
アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン
ミニ国家
サンマリノ、バチカン、モナコ、アンドラ
また、以下の国はシェンゲン協定への加盟手続き中であるが、ETIAS導入時には上記の国々と同じく入国前の登録が必要となる。
ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、キプロス
この制度は、当初2021年1月1日に施行される予定だったが、2022年末からの施行に延期された。施行後も少なくとも6カ月間は義務化されない。多くの旅行者は、この6カ月の間に数カ月後にはヨーロッパへ行く際に有効な渡航認証、つまりETIASが必要になることについて、じわじわと実感していくだろう。
ETIASをビザだと思っているのであればそれは違う。これについて、欧州委員会は、2018年に発表したファクトシートで次のように示している。
「ETIASによる渡航認証は、ビザのような義務を再導入するものではありません。申請のために領事館に行く必要はなく、生体情報も収集されません。ビザ申請手続きに比べて収集される情報はかなり少ないのです。シェンゲンビザの手続きには原則として15日かかり、場合によっては30日や60日かかることもありますが、オンラインによるETIASの申請は数分で記入が可能です」
ETIASは一度承認されると3年間有効で、入域回数に制限はない。申請には、メールアドレス、有効なパスポート、クレジットカードが必要で、申請料は現時点で7ユーロ(約930円)。18歳未満も申請自体は必要だが、その際に手数料はかからない。手続きはオンラインでできるが、申請から審査結果が届くまでには最大で4週間前後かかることが予想されているので、早めに申請をするのが良さそうだ。
また、ヨーロッパでは現在、新型コロナウイルスの予防接種を受けた人や感染から回復した人、PCR検査が陰性の旅行者を対象に発行するデジタルパスポート『グリーンパス』の導入も検討している。検疫や隔離などを回避することができ、EU諸国への入国をよりスムーズにできる『グリーンパス』も併せてチェックしておこう。