都会にあってどこかのんびりとした空気の漂う世田谷線沿線。三軒茶屋と下高井戸を結ぶこの線の中間地点にあたる松陰神社前駅は、松陰神社から世田谷通りにかけて続く約500mの松陰神社通り商店街を中心に、個性溢れる商店が立ち並ぶ穴場スポット。人気の老舗はもちろん、意欲的な若者たちによる新しい店もここ数年でさらに増えてきている。パン屋やカフェ、ラーメン、レストラン、居酒屋……目に入る店どこに入ってもハズレなし。ここでは、朝食からディナーまで、ショッピングもしながら、松陰神社前で充実した時間を過ごすおすすめコースを紹介したい。
朝
松陰神社前住民の幸せなところは、この短い商店街にハイレベルなパン屋やケーキショップが集まっていること。買い求める客が遠方からもやってくるというこの4軒は外せない。
松陰神社前にある創業明治45年の老舗パン屋。店内に並ぶコロッケパンや、チョココロネ、クリームパンなどはどれも懐かしい味わい。看板商品の『ニコラス食パン』はどんな食べ方にも合うようにとシンプルな材料で作られており飽きのこない一品で、ひと月以上先まで予約で埋まってしまうことも。一斤160円と値段が手頃なのも嬉しい。
広告
2014年7月にオープンしたMERCI BAKEは、イートインもできるケーキショップ。カップケーキやタルト、チョコレートプリン、キャロットケーキ、クッキーなど、見た目も可愛い焼き菓子を販売している。濃厚なチーズクリームが乗った『キャロットケーキ』や、小瓶入りで滑らかな舌触りとミルキーな味わいの『レアチーズケーキ』が人気商品。時間帯によっては混み合っているので、テイクアウトのつもりで訪れるといいだろう。
数々の名店でシェフブーランジェを歴任し、コンクールでも多くの賞を受賞してきた須藤秀男が2009年10月にオープンしたブーランジェリー 。毎朝開店と同時に多くの客で溢れる同店だが、定番の『クロワッサン』や『クイニーアマン』 、各種料理パンにロールパン、バゲットなど、いずれもシンプルながら一度食べたら忘れられない美味しさだ。
広告
松陰神社通り商店街を抜け、世田谷通りを渡った所にあるパン屋。こじんまりとした店内には、食パン、ハード系をはじめ、菓子パンや総菜パン、ジャムや蜂蜜も販売している。無農薬で知られる山梨県の北杜の小麦を使用しており、食感が比較的もちもちしているのが特徴だ。菓子パンで使用されているチョコレートも、甘すぎずコクがあり、スイーツのような味わい。手間を惜しまない手作りならではの美味しさは、地元のみならず遠方から足を運ぶ人もいるほどだ。 特集記事 松陰神社前ご近所ガイド
北を攻める。
美味しいパンを買い込んだら、つまみ食いしながら踏切を挟んで北側の商店街へ。昔ながらの松陰神社の姿が残るこちらは、日用品や衣服を扱う店などが集まるエリア。今のうちにここを攻略しておけば、夜の飲み屋で知ったかぶりができるというもの。
広告
松陰神社商店街の北側に店を構える、1972年創業のオーダーシャツ専門店。映画『人間失格』や、2015年8月公開の映画『日本のいちばん長い日』などの衣装も手がける名店だ。生地選びからデザイン、ボタンまでを店主の伊川孝次と一緒に選びながら、とっておきのワイシャツを作ることができる。価格は一般的なもので5千円から1万3千円ほどで、高いものは数万円のものもある。
松陰神社商店街の憩いの場である囲碁 将棋倶楽部は、老若男女が気軽に、時に真剣にゲームを楽しめる貴重な空間だ。入場料金の600円(子ども400円)を支払えば一日中楽しめる。半分シャッターの閉まった外観は、一見すると入りづらそうだが、これはただ日差しよけのために降ろしているだけなので心配ない。指南番をはじめ、常連客たちもみな気さくなので、一見でも臆することなく腕試しに挑んでほしい。なお、囲碁、将棋の両目で指南番に勝てば、料金が無料になる。
昼
ランチはラーメンにする。
一局終えて頭を使ったら、そろそろ腹の空いてくるころ。松陰神社前はラーメン屋のクオリティも文句なしということで、ランチはラーメンと行こう。商店街からは少し外れたところには、まぜそばのかましもある。
世田谷通り沿いにある人気ラーメン店。看板メニューの『ふくいしらーめん』は、「あっさり」と背脂入りの「こってり」から選べる。博多系に近く、細麺が旨みたっぷりのスープによく絡む。
特集記事
東京のDJ20人が選ぶラーメン店
広告
松陰神社駅すぐそば、線路沿いにあるラーメン店。一見、カフェのような外観、内装で女性の一人客の姿も多い。おすすめは、団子が6つ入った『ワンタン麺』(800円)。肉、野菜、煮干しで取られたスープはあっさりとしているがコクがあり、縮れ細麺との相性も良い。餃子にも似た味のワンタンは、しっかりとあんが詰まっており食べごたえ十分。テーブルに置かれた揚げた玉ねぎフレークを、一振りするのもいいだろう。サービスでかやくご飯が付くのも嬉しい。 特集記事 松陰神社前ご近所ガイド
世田谷通り沿いの中華料理店。手頃な値段とボリュームたっぷりの本格中華が味わえる人気店だ。なかでも、エビの乗った『五目炒飯』は都内屈指の量と味。赤耳のチャーシューがインパクトのある『チャーシューメン』もおすすめだ。
広告
土産を買う。
食欲が満たされたら次はショッピング。雑貨、本、音楽。店主の見事なセンスが光る3軒を紹介する。
松陰神社通り商店街に、2012年9月にオープンした輸入雑貨店。小じんまりとした店内には、ヨーロッパから買い付けたアクセサリー、インテリアや手芸雑貨のほか、国内メーカー品がずらり。ガーリーなデザインのアイテムのものが多く、海外の蚤の市のような雰囲気が溢れるショップだ。 特集記事 松陰神社前ご近所ガイド
広告
昔ながらの商店が軒を連ねる、世田谷の松陰神社通りにある、nostos books。元八百屋だった店をリノベーションし、2013年8月に誕生した。商店街で一際目立つ、ガラス張りの店内は、外からものぞくことができ、地元客もふらりと訪れる。「店主のマインドマップ」をそのまま反映させてという本の数々は、60年代~80年代を中心に、デザインやアート、写真、文学、エッセイなどの古本が約3000冊並ぶ。個性的な造本やデザインが美しい装丁を探すにも、ぴったりの場所だ。
松陰神社通り商店街内、共悦マーケットにあるCD/カセットショップ。松陰神社の地で30年以上に渡って営業を続ける老舗だ。2014年に旧店舗から現在の店舗に引っ越した。世田谷線沿いで唯一音楽カセットを取り扱う同店の棚には、演歌のシングルカセットがぎっしりと詰まっている。貴重な品揃えに、現在でも根強いファンが遠方からやってくるという。CDの棚に目をやると、ほぼすべての商品に主人手作りのタイトルラベルが着けられているのに気付くだろう。現代でも変わらぬ姿勢で愛情をもって音楽を扱う様に心打たれる。
広告
おやつの時間にする。
良い店の多い商店街は、歩くだけで妙に小腹が空いてくるもの。松陰神社通り商店街は、寿司にコロッケ、ドーナツ、おでんと、抗いがたい誘惑に満ちている。土産のつもりで余分に買ってつまみ食い、これがどうしようもなく美味いのだ。
世田谷通りから、松陰神社通り商店街に入るところにあるテイクアウトの箱寿司専門店。バッテラ、茶巾、いなりやのり巻きなど、大阪寿司を販売している。店先で注文すると、その場で職人が詰めてくれるという安心感も、地元で長く愛されている理由のひとつ。おすすめは定番『大阪寿司』(1280円)と、酸味の中にほどよい甘みが広がる『バッテラ』(560円)。ひとつひとつ丁寧に作られた寿司の美味しさは、土産やもてなしの一品としても使い勝手がいい。 特集記事 松陰神社前ご近所ガイド
夜
シメの一軒を探す。
松陰様に挨拶を済ませたら、いよいよクライマックス。濃密なる松陰神社前の旅を締めくくるベストな一軒を見つけよう。牡蠣、ハワイアン、インドカレー、蕎麦……どこも味はピカイチだ。酒が飲みたくなったら老舗居酒屋の門を叩いて、人生の先輩たちの人情に触れると良いだろう。
店名の宗谷とはもちろん、北海道稚内市にある日本最北端の地、宗谷岬のこと。松陰神社通り商店街内の共悦マーケットを抜けた裏路地にある宗谷は、昔ながらの人情味に溢れた居酒屋だ。魚介類は刺身や焼き魚、から揚げなど、その日によって様々なメニューをそろえる。新鮮な素材をいかしたシンプルな料理はハズレなし。道産子たちも唸らす逸品が安く食べられる。日本酒も北海道産のものなど豊富に揃えている。店内の壁に貼られたセクシーな漫画調のポップは、2013年に亡くなった主人が書いたもの。大黒柱を失い閉店も考えたというが、新たな常連客たちに支えられて現在は女将の女手一つで切り盛りしている。
広告
松陰神社商店街に2015年1月にオープンしたハワイアンレストラン。店舗は、同地で50年以上店を構えていた乾物店、サンエス食品店を改装したもの。レトロな外観とは裏腹に、高い天井にシーリングファンの回る店内には南国の雰囲気が満ちており、気分を盛り上げてくれる。レアでジューシーなビーフステーキがたっぷりとのった『ビフテキライス』(1,500円)や、『マグロとアボカドのポキ丼』(1,100円)、『オムレツカレー』(900円)、ビールとの相性が抜群の『ガーリックシュリンプ』など、本格ハワイアンの味が手頃な価格で楽しめる。ビールはコナビールを各種揃えている。優雅な気持ちにさせてくれる鉄板の一軒だ。
松陰神社前駅から商店街を南に抜け、世田谷通り沿いを左に行くと現れるインド料理店。オーナーはネパール出身
、シェフはインド人といった体制で、昼はインド料理、夜はネパール料理を主に提供している。メニューはチキン、マトン、キーマ、野菜、シーフード、サグなど、オーソドックスなものだが、インドカレー好きも唸らせる味と評判だ。ランチタイムはナン、ライスがおかわり自由。洒落たカフェ風の内装と、親切丁寧なスタッフも好印象だ。
広告
松陰神社通り商店街の南側、nostos booksの隣に2014年4月にオープンした牡蠣とおばんざいの居酒屋。店先では農家から仕入れた野菜も販売しており、厨房をカウンターが囲むシャビーな内装の店内は、バルやカフェのような雰囲気。以前は築地に務めていた店主が仕入れる新鮮な牡蠣を中心としたフードメニューと、種類豊富な日本酒、ビールなどを揃える。『牡蠣三種盛り』は、その時々の仕入れによって変化する様々な種類の牡蠣を食べることができる。
仙川と 学芸大学にも店舗を展開する蕎麦屋の本店。毎朝職人が挽いて、手打ちしている蕎麦は、コシが強く薫り高い。『せいろ』と『田舎せいろ』の2種類があり、いずれも麺の艶やかな光沢が食欲をそそる。また、季節限定の個性的な蕎麦も提供している。酒の肴も豊富で、刺身はおすすめ。
関連情報
関連情報
Discover Time Out original video
広告