カフェはある種の「公開実験」
−カフェでは、どのような人がロボットを操作するのでしょう。
操作者は、あらゆる理由で外出困難だった人を対象に募集しました。ASLやキンジストロフィーなどの難病を抱える人のほか、精神的な理由で外出が難しい人など、様々です。遠隔操作が可能になるため、最も遠距離では、島根県から操作する人もいます。
今回、ロボットを操作する人全員に共通しているのは「働きたい」という強い意志です。例えば事故で突然体が動かなくなったら、在宅でできる仕事は限られてしまいます。しかし、今回ご紹介するような遠隔操作があれば、自分にもいろいろできる、と感じていただけたと思います。
−カフェ開催を通して、期待することは。
今回のように、重度障がいを持つ人たちがロボットを遠隔操作して客をもてなすのは、前代未聞の試みです。ロボットたちのチームワークや、SNSを使用したチームでの反省会などがうまくいくのかなど、まさに実験だらけ。ある種の「公開実験」でもあり、ある意味では、ロボットを操作する人が、カフェ運営でどのようなところにつまづくのかという「失敗」を発見することこそ、大きな学びになるでしょう。今回の開催で、膨大なデータが溜まると思うので、それを次のステップにつなげて行きたいですね。
そして、ロボット操作をしてくれた人が楽しく働けたかというのも、大事なポイントです。重度の障害を抱える人は、障害者受給などの給付もあり、給料のために就労したい、という人は少ないのかもしれない。しかし、誰かの役に立ちたいという思いがあるから働くわけで、そこを楽しくできないと、カフェの開催自体が無意味になります。
—全身型ロボットのオリヒメ-Dを開発されたきっかけは。
昨年に亡くなりましたが、私には、番田という親友で、かつ我社の秘書も務めた男がいました。彼も交通事故による脊髄損傷のため、首から下は動かせず、オリヒメを使って出社していました。そんな彼とは、将来的には卓上型や、持ち運びに便利な小型のものなど、様々な形のオリヒメを製作し、使い分けるようになるだろう話していたんです。
彼は食事面でのサポートが必要でしたが、自分の代わりに動かせる分身ロボットがいれば、食事を自分の口に運んだり、誰かを出迎えに行くなど、できることが増える。すると、自分の介護も自分でできる日が来るかもしれない。そんな思いから120cmのオリヒメ-Dは生まれました。
そのように分身ロボットがもっと普及すれば、自分の分身を世界各地に置いて、瞬時に移動して仕事をしたり、車輪をつけて本来の自分よりも早く走ったり、生身の体以上のことができるようになるかもしれませんよね。