車いす目線
モバイルトイレ
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車いす目線で考える 第33回 バリアフリートイレの未来

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

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誰にとっても、生きていく上で必要不可欠な「排泄(はいせつ)」。日本国内において、健常者が外出時にトイレで困ることはほとんどないと思うが、車いすユーザーにとっては、非常に困難を感じるものの一つだ。

一般のトイレに比べて多機能トイレの数は圧倒的に少ないし、街のどこに多機能トイレがあるかについての情報も限られている。つまり、自分が使えるトイレに行き着くことが容易にはできないのだ。そうした理由から、トイレに関する心配事をなくすために、真夏であるにもかかわらず水分摂取量を減らす人もいれば、排泄をコントロールする薬を服用したり、補助器具や用具を使用したりするなど事前準備が欠かせない人もいる。

また普段の外出以上に困難さを極めるのが、初めて訪れる観光名所、屋外で行われる祭りや各種イベント、スポーツ観戦時。行きたい場所に「使えるトイレ」があれば、誰もが平等に余暇を楽しめるはずだろう。 

モバイルトイレ

こうした希望をかなえてくれる、任意の場所に移動可能なけん引式のトイレの1号車が2020年に誕生した。TOYOTALIXILが共同開発した、移動型バリアフリートイレ『モバイルトイレ』だ。イベントで多機能トイレが不足したときだけでなく、災害時の利用も想定している。

先日、1号車を一部改良した2号車を体験させてもらう機会を得た。2号車は1号車に比べると、前室をなくしたことによって車両の全長が4.7メートル、全幅が2.2メートルと一般的な駐車場1台分にすっぽりと収まる大きさになった。外装も、明るい木目調でよりスタイリッシュなイメージに様変わりしている。

細かな配慮

トイレに入る前には緩やかなスロープがあり、その先に広く設けられた平らな場所から引き戸で入室できるように配慮されている。扉横に設置されているモニターには、内部の快適性(温度や湿度)が表示され、モニター上部には、外部から満空状態が分かるように空室の場合は青ライト、使用中は赤ライトが点灯。将来的には専用アプリで離れた場所から時間を指定、使用予約もできるようになる可能性がある。

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モバイルトイレのスロープ

トイレ内部は、グレーと白を基調とした壁面に手すりや荷物をかけるフックが設けられ、床との境目にはライトグリーンを採用するなど各装備の視認性を高くするために色彩の配慮がなされている。非常呼び出しボタンは、座面レベルと床レベルに1つずつ。床に近い方には、ひもの先端に輪っかが付いており、少ない力で呼び出しボタンを作動させられる。

便座に腰掛けた状態で手が届く位置に手洗い器とゴミ箱があり、ユニバーサルシート、エアコンまで完備。天井にはトップライトが設けられている上、自然光も入りやすく天井も高いので、快適空間そのものだ。

改善に耳を傾ける

このように先進性と快適性、デザイン性を兼ね備えたモバイルトイレ。体験当日には私のほかに、障害の種類、程度が違う車いすユーザーやバリアフリー環境整備の専門家が参加しており、実際の体験を通じて感じた改善点を皆で共有してみた。この時に開発担当者らが、参加者の声に対して熱心に耳を傾け、真剣に質問する姿は素晴らしかった。

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デザイン性も兼ね備えた外装

ここでは具体的な内容に触れることを控えるが、誰にとっても100%バリアフリーというのは不可能ではあるものの、ちょっとした工夫でより使いやすく、より使いたくなるようにすることは可能だと思った。今後もさまざまな場所で実証実験をして、多様な利用者のニーズを正確に把握することで、さらなる改善につなげていってほしい。

こうした取り組みが特別なものや真新しいものではなく、社会にとって当たり前のものになることがインクルーシブな社会を創り出すことにつながるのだと思う。そのためにも、多くの企業があらゆる社会課題に対して高い意識を持つだけでなく、障害当事者がより具体的かつ効果的な解決方法を提案できるように成長していく必要があるだろう。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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