Free photo 95354768 © creativecommonsstockphotos - Dreamstime.com
Free photo 95354768 © creativecommonsstockphotos - Dreamstime.com
Free photo 95354768 © creativecommonsstockphotos - Dreamstime.com

車いす目線で考える 第22回 車いすユーザーが考える感染対策の在り方

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

広告

タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第22回 車いすユーザーが考える感染対策の在り方

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今月7日に緊急事態宣言が発令された。これによって、人々の社会生活に非常に大きな影響を及ぼしている。

車いす目線からのソーシャルディスタンス

感染拡大の予防策として、3つの密を避けることや、他者との一定の距離を保つ、「ソーシャルディスタンス」という動きが世界中で広まっている。大手企業では、このソーシャルディスタンスを視覚的に理解できるように、おなじみのロゴを一部改変して、その重要性を訴えかけている。空ける距離は1メートル、できれば2メートルとされているため、テレビ番組では、司会者や出演者の距離が取られ、一部自宅から、またはホテルからなど遠隔で出演するというスタイルが当たり前の風景になりつつある。また飲食店では、テーブルを1席分空けて配置したり、スーパーマーケットやコンビニでも、会計時に並ぶ位置を床面にステッカー表示したり、テープで囲いを作るなどして対策を講じているところが増えてきた。

しかし、今までに人との距離を空ける習慣がなかったせいか、印があったとしても距離を詰めてしまっている光景も目にする。特に入手困難となっているマスクをはじめ、アルコール除菌やウェットティッシュなどを取り扱う店舗では、店のオープン前に行列を作っていたり、商品を求めて、開店と同時に店内を全速力で走り回る人もいる。このように、世の中に広がる不安がマナーを守れない状況を作ってしまっているような気がする。

車いすユーザーにとっては、実はこのソーシャルディスタンス、意外と日常的なものだと感じる。僕は、車いすで移動する際、常に周りに注意をしながら、近くにいる人とぶつからない(接触しない)ように、普段から適切な距離を保っているし、特に回転するときには、更に十分な距離を確保するようにしているからだ。バリアフリー法でも、車いすが回転しやすい寸法を180センチメートルとしているため、全ての人が車いすで移動するイメージを持てば、必然と安全な距離を空けることができるかもしれない。

テレワークのもたらす利点

そして、不要不急の外出自粛が叫ばれる中で、今まで以上に多くの企業が、テレワークを導入するようになってきている。もちろん導入困難な業種業界もあるが、こうした緊急事態の時だからこそ、働き方を今一度見直して、テレワーク移行可能な仕事を新たに見つけることを推奨したい。通勤困難な障害当事者にとっては、在宅勤務スタイルのテレワークはおなじみのものでもあるため、領域が拡充されることで、選択肢が増え、働く機会をさらに得ることができるかもしれない。そうすることで、障害者の法定雇用率を満たすことができる企業が増えてくるだろう。

いつ終息するか分からない状況下で、ポジティブなことを考えるのは大変難しいと思うが、嘆いているだけでは何も変わらない。日本中が、そして世界中が同じ敵と戦っている。最前線で日々、見えない敵と戦ってる医療関係者に心から感謝するとともに、彼らの世話にならないように、私たちができることは、さらにテレワークを推進させ、ソーシャルディスタンスをしっかりと理解し守ること。

自分が保菌者かもしれないという自覚を持って、自主的ロックダウンを行うべきだと思う。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

車いす目線で考えるを振り返る……

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告