大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)
1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。
タイムアウト東京 > Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第17回 航空機での移動 〜チケット購入編〜
国内外の長距離移動には欠かせない飛行機。多くの車いすユーザーにとって、航空機の利用は、移動の中で最もハードルが高いものの一つではないだろうか。僕も、現在では仕事やプライベートでの航空機を利用した移動に慣れたが、車いすユーザーになって間もない頃は、陸を移動する新幹線でさえ大変なのだから、空を飛ぶ航空機は予約手続きや事前連絡、搭乗方法がさらに煩雑で面倒なものだと思っていた。
当時の僕のように不安な思いをされている方、またはまだ飛行機に乗ったことがない方に向けて、僕の目線(※障害の種類、程度)から、気軽に快適に空の旅を楽しむための入門編として、まずはチケット購入時のポイントについてお伝えしようと思う。
※脊髄(TH-10)損傷、完全麻痺
航空券の予約は、手続きの簡単さからオンラインがオススメだ。チケット料金は、国内の場合は障害者手帳を持っていれば障害者割引(区分によって対象が異なる)が適用されるため、航空会社により割引率は多少異なるが、一般的なチケットよりも約3割程度安く購入することができる。しかし、早期購入の割引がある場合、そちらの方が断然安い場合がほとんどなので、3週間以上先のスケジュールであれば、迷わず早期購入割引を選択した方が良いだろう。
バルクヘッド席を選ばない3つの理由
予約する際に最も重要なのが、座席選び。車いすから座席には移乗しやすい席はどこか、トイレは近いのか、そもそも車いすで入れるトイレはあるのかなど、不安を感じる人は多いだろう。オンラインで予約する際には、シートマップが表示されるので、車いすで入れるトイレの位置や、席の並び方を見て、希望の席を選ぶことができる。
しかし、フライト当日にチェックインカウンターに行くと、一般的にバルクヘッド席といわれる、目の前にスクリーンや壁のある席への振り替えを提案されることがある。なぜかというと、この席はバシネット(乳児用の簡易ベッド)を着けられるようになっており、前方のスペースが広く確保されているため、機内用の車いすを座席に対して直角にアプローチできるようになっている。しかも機体の前方に設けられている席なので、案内する側も長い距離を移動しなくてもよく、航空会社側の負担軽減にもなるからだ。
しかし、僕はこの提案をいつもお断りしている。なぜかというと、
①アームレストが固定式である
②テーブルが小さく不安定
③着陸時に体を支えることができない
という理由からだ。
この席は、他の座席のように座席の背面に収納するタイプのテーブルを設置することができないので、折りたたみ式のテーブルを格納するためにアームレストが固定式になってしまっている。僕の場合、アームレストが上がらないと、車いすから席に移譲する際に極めて邪魔になる。
そして、このアームレストの中に入っている折りたたみ式の小さなテーブルは、片側だけで支持するタイプなので非常に不安定だ。しかも僕のように下肢の感覚が全くない人の場合、褥瘡(じょくそう、床ずれ)ができないように、自分の車いすで使用しているクッションを持ち込むことになるので、座席の上にこのクッションを敷けば、自然と腿(もも)の位置が高くなり、折りたたみ式のテーブルにぶつかり斜めになってしまうのだ。最後の理由は、足に力を入れることのできない僕にとって、前に座席がないと、着陸時にかかるGから体を支えるのが大変だからだ。
障害は十人十色。自分の障害の種類や程度によって、リクエスト内容や航空会社に提供する情報は異なってくる。車いすユーザーの場合は、チェックインカウンターで必ず、車いすの種類や規格、歩行の可否についてヒアリングされ、毎回面倒だと感じている人が多いだろう。現在、大手航空会社では、搭乗予約や当日の案内を円滑化するために、搭乗時に必要なアシストや配慮してほしいことなど、自身の情報を事前登録できるシステムが整っているし、障害のあるゲスト専用の電話相談窓口もあるので、自分に合った方法で手続きを進めてほしい。
次回は、チェックインから搭乗・機内・降機について、押さえておきたいポイントをお伝えする。
大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)
1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。
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