Ibamoto Takehiko
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車いす目線で考える 第16回 防災のヒントはキャンプにあり

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

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災害は予告なしにやってくるし、誰にでも降りかかる可能性があるもの。だからこそ、平時から準備をしておく必要がある。

以前、僕が代表を務めるNPO法人アクセシブル・ラボで、『車いすユーザーによる防災会議』を開催したところ、家族内で避難計画を立てたことのある人の割合は5%だった。どのようにしたら防災意識を高められるか、どんな備えをするべきかを議論していると、1人の車いすユーザーから、「防災にも役立つから、毎年必ず家族でキャンプをしている」という話が上がった。電気や水の使用を最小限にして、日常生活に比べて不便になる時間を、楽しみながら体験させているという。

僕も小学生時代には、友人家族と一緒によくキャンプに行ったものだが、車いすユーザーになってからは一度もない。そもそもキャンプ場は、悪路が多く移動するだけでも大変だし、車いすユーザーにとって縁遠いものだと思っていたからだ。しかし、さまざまなキャンプ場に問い合わせてみると(残念ながらウェブサイトには、バリアフリー情報がほとんど掲載されていない)、全てバリアフリー化されているとは言えないが、多目的トイレがあったり、敷地内の一部が整地されていて車いすでも楽しめそうなキャンプ場は、関東近郊だけでも20カ所以上もあったのだ。なかには、車いすのままお風呂に行けるところもあった。

実は先日、僕もテントを購入して、那須野が原公園内にあるキャンプ場で、友人たちと20年ぶりにキャンプを楽しんだ。この1日を通して、キャンプ用品とキャンプスキルは、確かに災害時に役に立つと確信した。ランタンは、停電状態にあっても電池やガス、ガソリンや灯油があれば、暗い中でも明かりを灯すことができる。テントがあれば、プライベートな空間を簡単に作ることができる。さらに寝袋やマットがあれば、快適にくつろぐことができるだろう。今のテントは良くできていて、車いすユーザーの僕一人でも難なく組み立てられるものもあるくらいだ。

そのほか、ウォータータンクやガスコンロも役に立つ。キャンプ当日の夜は雨が降ったので、車いすでの走行はハンドリムが滑ってしまい、移動がしづらくなる。ここで大活躍したのが、たき火や調理の時に使う耐熱の革グローブ。薪をくべたり熱い鉄板を移動させたりするときにだけ使っていたのだが、車いすの濡れたハンドリムにもグリップが効いて操作しやすいことが分かったのだ。

いろんな発見のある楽しいキャンプだったが、キャンプ用品が整っていても、使い方や、キャンプ自体に慣れていなくては何の意味もない。だから、その場で友人たちと、年に2回はキャンプをやろうと約束した。備えあれば憂いなし。

食欲の秋、気の置けない仲間と一緒に、おいしい食と自然を満喫しながら、防災訓練がてら秋キャンプを楽しんでみてはいかがだろうか。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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