オーディオ・ビジュアルアート展「ETERNAL Art Space」が渋谷で開催

電子音楽とデジタルアートの祭典MUTEK.JP連動企画、11月24日まで
Eternal Art Space
Photo: Inoue Yoshikazu黒川良一『ground』
Time Out. Paid for by Eternal Art Space / Mutek Japan
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視覚と聴覚が私たちの意識に新たな気づきを与える瞬間がある。そのような知覚の相互作用が体験できるオーディオ・ビジュアルアート展「ETERNAL Art Space」が、渋谷で2024年11月24日(日)まで開催中だ。

会場となる「渋谷ヒカリエホールB」で、イタリアを代表するアートコレクティブ SPIME.IM + AKASHAと、アーティストの黒川良一による没入型インスタレーションが3作品上映される。ここでは、それぞれの作品について紹介する。

『HINT』(AKASHA +SPIME.IM)

Eternal Art Space
Photo: Inoue YoshikazuAKASHA +SPIME.IM『HINT』

アーティストのAKASHAとイタリアのアートコレクティブSPIME.IMが手がけた映像作品『HINT』は、ディープフェイク技術を駆使した高速コマ送り映像。画面は、撮影者の視点で展開し、まるでGoogle Earthで世界中の街を探検しているような感覚が与えられる。

映像は、ゴミで汚染され軍事展開によって破壊された退廃的な都市の場面から始まり、豪華絢爛なセレブリティのパーティーシーンへ、そして企業の支配によって大量生産されたバービー人形などの玩具が画面を埋め尽くす光景へと変遷していく。映像体験を通して、情報過多の現代社会や資本主義の終末的な未来を目の当たりにしているかのような映像体験が得られる。

『re-assembli』(黒川良一)

Eternal Art Space
Photo: Inoue Yoshikazu黒川良一『re-assembli』

黒川によるインスタレーション作品『re-assembli』は、廃虚となった建築物や森をレーザースキャンで3Dデータ化した素材を使用した没入型映像作品。デジタル空間に再現されたそれぞれの風景が2枚のスクリーンに映し出され、テクノミュージックのようなサウンドとともにテンポよく切り替わる。本作は、映像だけでなく、恐怖や焦燥感を呼び起こすサウンドやライティングも効果的に活用し、観る人の感覚を強く刺激する。

『ground』(黒川良一)

Eternal Art Space
Photo: Inoue Yoshikazu黒川良一『ground』

最後に、『ground』は、ベルギーの映画製作ダニエル・ドゥムスティエ(Daniel Demoustier)が中東諸国で過去10年以上にわたり個人的に収集した映像や音を、黒川が再構成した作品だ。本作は3枚のスクリーンとサウンドで構成され、紛争や戦争に巻き込まれた人々の状況をさまざまな視点から描く。

特徴的なのは、動きから動きへと映るゆっくりとしたトランジションだ。この長く引き伸ばされたシークエンスは、緊張感と圧迫感を生み出し、戦争の持つ恐怖を際立たせている。銃声や子どもの泣き声、耳をつんざく高周波音、不協和音の警告音は感覚に直接訴えかける。

MUTEK.JPでしか体験できないイベントが盛りだくさん

MUTEK.JP
画像提供:Mutek.jpWOMBでのライブの様子

同展は、カナダ・モントリオール発の電子音楽とデジタルアートの祭典「MUTEK.JP」の連動企画。日本での開催が9年目となる今回は、渋谷の「Spotify O-EAST」と「WOMB」の2カ所が舞台となる。

25人以上の新進気鋭のアーティストが国内外から集結し、実験的で多角的なアプローチによるサウンドやライブ、デジタルアートなどが融合した唯一無二のショーケースが楽しめる。

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画像提供:MUTEK.JP2023年度の様子

テクノロジーと生物学の交差点を探求するベルリン発のエレクトロニック・コンポーザー、カテリーナ・バルビエリ(Caterina Barbieri)によるスペシャルライブセットをはじめ、2024年の「ソナーフェスティバル」で絶賛されたアートミュージックプロジェクトVMO a.k.a Violent Magic Orchestraによるエクストリームなライブ、新世代エレクトロアコースティックを担うカラ・リズ・カバーデール(Kara-Lis Coverdale)によるエレクトロセットなど、見逃せないステージばかり。

MUTEK.JP
画像提供:MUTEK.JP2023年度の様子

恒例となったWOMBのオールナイトプログラムでは、22日(金)はUKのドラムンベースコミュニティ−で活躍するDJ Tashaが初来日。23日(土)はリカルド・ヴィラロボス(Ricardo Villalobos)と世界中のフェスティバルなどを共に展開するパレスチナ人アーティストMaher Danielも日本初来日を果たす。

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画像提供:Mutek.jpMUTEK_Pro Conference

また、会期中は渋谷ヒカリエホールBで、デジタルクリエーションの未来を探るカンファレンス「MUTEK.JP Pro Conference in collaboration with MAWARI」が開催。空間コンピューティングにおける独自の3Dストリーミング技術やDePIN(分散型物理インフラネットワーク)を提供するMAWARIとの共同企画となっている。

「未来を切り開く最新技術」をテーマに、永松歩や江原彩子といった国内外から集結したアーティストや、技術者、専門家、そしてKDDIやパナソニック、MAWARI、Niantic、J-WAVEなど企業リーダーたちがトークセッションを繰り広げる。

「生成から視る芸術」や「バーチャルの現在形〜ワールドに鳴り続くインタラクティブなミュージック〜」といったテーマを通じて、最新技術とデジタルクリエーティビティの未来について深く掘り下げられる。AI同時通訳ツール「ポケトークカンファレンス」を活用し、リアルタイムで多言語翻訳に対応。入場は無料なので、この貴重な機会を見逃さないように。

チケットは公式ウェブサイトで購入できる。高度な技術による演出で、現実と仮想の境界が曖昧になる感覚を体験しながら希望や平和について改めて考える機会となるだろう。

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