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東京でもっとPRしてほしい所とは? 6都市のタイムアウトスタッフに聞く世界目線の観光戦略

東京観光財団×タイムアウト東京のタイアップ座談会をレポート(後編)

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タイムアウトの海外都市ライターやエディター8人が集い、開催された座談会。テーマは「人々は何に惹かれて東京にやってくるのか」。今回は、東京観光財団とのタイアップ企画として行われた本座談会の後編だ(前編は以下の関連記事をチェック)。海外旅行客目線の東京の魅力が多いに語られた前半に続き、後半では、グローバル都市として発展し続ける東京の今後の課題や戦略についても、興味深い意見が交わされた。

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「同じ東京には二度と出会えない」刻一刻と変化する巨大都市

リム:東京が世界のほかの都市と一線を画すように感じるのは、そのダイナミックで圧倒的なパワーだと思います。東京ではやりたいことがあふれ、いくら時間があっても足りません。

ウェブ:毎回「今と同じ東京を訪れることは二度とできないんだ」と感じます。何度訪れても、東京は常に変化していて、決して制覇できないのです。少し移動するとまったく予期していなかった場所やものに出くわすことも多いので、東京では、いっそ道に迷ってみるのも手です。偶然出会うお店や人、太鼓の音に誘われてたどり着くお祭りなどこそ、いい思い出になるものですよ。

ナング:シンガポール生まれの私にとって、東京は巨大都市。電車などの移動は最初の頃ほど不安を感じませんが、旅行の際は、移動手段も含めてしっかり予定を立てます。初めて訪れる人はまず渋谷などの主要スポット、その後で小規模なエリアへ移っていくといいのではと思います。

コアソンブン:私の東京に対する印象は、昔からあまり変わりません。私はバンコク出身ですが、東京には「大都市」という共通点を見いだしつつ、カルチャーや四季の移ろいなど、バンコクとは異なる魅力に心惹かれます。特に、季節限定の商品や催事は日本ならではだと感じますね。

サステナビリティという観点から見る東京

ウェブ:サステナビリティが人々の旅の目的になることはないと思いますが、「また戻ってきたい」という「共感」を生み出す要素ではあると思います。

ナング:現地の人々の習慣を見て、自分たちの暮らしを考え直すというようなことですよね。例えば、日本のごみ分別方法やトイレの清潔さ、飲食店の地産地消の取り組みは、「帰国したら実践したい」という旅行者の思いにつながるかもしれません。

コアソンブン:最近、ミシュランガイドの関係で東京を訪れましたが、多くのレストランでサステナビリティアプローチについて言及がありました。

リム:食に関わるサステナビリティで言うと、植物由来の食や廃棄物の削減、「農場から食卓へ」という動きが活発化しています。こうした点は、観光客へのアピールポイントになるでしょうか?

ナング:なると思います。「Noma」の催しのように、今、一流レストランが日本各地の食材を使った料理に力を入れていますね。旅行客は日本各地の味を楽しみたくても、あちこちへ行って調理することはできないので、こうした取り組みは旅行者にとって大変魅力的です。

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さらなるグローバル都市に成長するため、東京ができること

ウェブ:「東京は毎回新しい経験ができる、そしてどんな願いもかなう場所だ」という部分をもっと伝えていってはどうでしょう。アート、食、ショッピング、好きなことを好きなだけ味わえます。さまざまな経験をかいつまむように旅するのもいいですね。

リム:より多くの旅行者層にPRしていくことも大切かと。東京にはハラルミートに対応した飲食店もありますが、まだまだ認知不足です。幼い子どもだけでなくティーンエイジャーまで、子ども連れの家族向け施設やイベントなどの情報もより広く伝えていく必要がありそうです。

ナング:多様性のある東京を数日間で楽しみ尽くすのは無理があります。ゆったり滞在してこそ隠れた魅力に出合えるのが東京。スローケーションやワーケーションにも向くでしょうね。「東京のホテルで仕事しながら観光」という旅行者の新たな可能性を追求し、PRしてみてはどうでしょうか。

チャン:東京は低予算でも十分楽しめる都市ですから、食事や体験などリーズナブルなサービスももっと紹介してもいいですよね。

ナング:世界中で続く物価高を考えると、「東京ではおいしいラーメンが10ドル(約1,500円、2024年3月4日時点)以下で食べられる」「洋服からサービスまで、新しいものが手頃に楽しめる」というのは確かに魅力ですね。

リム:単に「円安だから」ということではなく、東京のサービスや商品の質は高く、支払った金額への対価を大きく感じられるのだと思います。

コアソンブン:映画やドラマなど、作品を通じて都市をプロモーションするのも手です。私は、韓国やシンガポールを舞台とした作品に旅行欲をかき立てられました。

ウェブ:2003年の「ロスト・イン・トランスレーション」はアメリカを中心に世界中で大ヒットしましたよね。「朝はこれ、午後はここ」というふうに、時間帯ごとのおすすめアクティビティを提案するのもいいかもしれません。それにしても、皆さんのアイデアは、「トップダウン型」以外のアプローチでとても参考になりました。

守られるべき東京の唯一性

山村:話に出た「ロスト・イン・トランスレーション」ですが、私はこの映画を通して海外旅行客の視点を知り、大きな影響を受けました。彼らの目には、東京という場所がほかの惑星のように映っているんだなと。

ウェブ:アメリカの都市などを訪れると、どこでも見慣れたお店があって既視感を覚えます。一方、東京は私たちにとってまさに別の惑星のようでした。圧倒的でありながら親しみを感じられる、かつ唯一性があって私たちに元気をくれるんです。

リム:東京のブランディングは素晴らしいですが、大切なのは「今の東京」の魅力を、継続的に世界に伝えていくことだと思います。観光客が惹かれるのは、必ずしも「新しさ」だけではないですから。

コアソンブン:そうですね。東京は観光地化されるべきではないと思います。バンコクを含む世界の観光都市は、ターゲットとなる海外旅行客を常に意識し、都市自体を調整していく傾向にあるように思いますが、私はこうしたアプローチにはあまり賛成できません。東京はあくまで東京として残ってほしいですし、そうあるべきだと感じます。

ウェブ:ニューヨークのタイムズスクエアやロンドンのレスタースクウェアは、現地に暮らす人々が訪れることのないような観光地と化してしまいました。その意味で、東京はとてもいい状態を保っていると思います。例えば渋谷は、観光スポットでありながら、地元の人もしっかりそこにいます。このバランスは見事ですし、ぜひこの状態で残ってほしいですね。

リム・チーワ(Chee Wah Lim)

タイムアウト東京(英語版)編集長

マレーシア出身。2008 年よりタイムアウトクアラルンプールの編集長として活躍し、2016年にはタイムアウトシンガポールのディレクターを兼任。同年にデジタル版ELLE マレーシアを立ち上げ、合わせて編集長を務める。グローバルメディアをローカライズして展開するエキスパートとして、メンズヘルスマレーシア、 ウィメンズヘルスマレーシアも手がけた実績がある。

マーカス・ウェブ(Marcus Webb)

タイムアウト東京エディトリアル・ディレクター

タイムアウトのGlobal editor in chiefとして活躍。在任中の2011年に『The Slow Journalism Company』を設立。スロージャーナリズムを提唱する『Delayed Gratification』を創刊し、BBCなど数々のメディアに取り上げられる。2016年、タイムアウトを退社。複数年に渡りBritish Society of Magazine EditorsのIndependent Editor of The Yearに選出されている。

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トップ・コアソンブン(Top Koaysomboon)

タイムアウトバンコク編集長

チェリー・チャン(Cherry Chan)

タイムアウト香港編集部

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ニコルマリー・ナング(Nicole-Marie Ng)

タイムアウトAPACコンテンツディレクター

ウィルケン・ホ(Wilken Ho)

タイムアウト東京編集部

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