新潮社唯一のサブカル雑誌
「03」と聞いてピンと来る人は、立派な都市生活中毒者と言えよう。さらに雑誌のタイトルの方を思い出す人は、出版業界の者でなければ、よほどの雑誌マニアに違いない。
「03」はもちろん、東京の市外局番である。その名を冠した雑誌が、短い期間だがかつて新潮社から発行されていた。
『TRANS-CULTURE MAGAZINE 03 TOKYO Calling』と題された本誌は1989年12月号が創刊号。同社では珍しい、デザイン性も重視したサブカルチャーマガジンだった。1896年創業の老舗出版社の歴史のなかで、サブカルを扱ったのは本誌が最初で最後ではなかろうか。編集・発行人は吉武力生(よしたけ・りきお)。アートディレクターは、駿東宏(しゅんとう・ひろし)。
新潮社はむしろ、ハイカルチャー側に立つ文化の担い手であり、その中からマイノリティーの声であるサブカルマガジンが誕生したことは、当時の出版界でも驚きを持って迎えられた。各号ごとに東京に比する世界都市のサブカルを切り取り読者に届ける……。それが創刊当初のコンセプトだったろう。