変化するスタッフの役割
ヌイ・プロジェクトの作品が世界に評価されつつある中、木工や陶芸、絵画・造形の工房でもオリジナル商品の開発が行われた。それに伴い、職員の役割も変わっていく。
利用者は、工房で気の向くままに作品を作る。職員はその様子を見守りながら、利用者が気に入りそうな布や糸、紙、木などの素材を目に入る場所に置いておく。そこから新しい作風が生まれることもあるという。
最も大事な仕事は、利用者が作ったものをどう商品化するのかを考えることだった。「利用者の手によってくぎの跡が残ったお盆や傷のついたテーブルも、見方によっては模様に変わります。そういう発想で、利用者の作品を世に送り出すコーディネート力が欠かせません」
2005年には一人の職員の提案で、ファッション雑誌「装苑」の一般公募展にヌイ・プロジェクトのメンバー、翁長ノブ子の作品を応募。それがテキスタイルデザイン部門で大賞を受賞した。これもまた、良いものを見極める職員の眼力であり、コーディネート力だろう。
利用者の個性や可能性に目を向けるようになったことで、日々の生活や行動に規律を求める厳しさも自然と薄れて、少しずつ利用者にとっても心地いい場所になっていった。