世界目線台湾

台湾進出への一歩を踏み出す

FUJIN TREE GROUPのインバウンド、クールジャパン戦略とは

Mari Hiratsuka
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2015年12月18日(金)、タイムアウト東京が主催するトークイベント『世界目線で考える。インバウンド台湾編2015』が開催された。今回は、台湾を視察する日本の企業や自治体の多くが、まず初めに打ち合わせのアポイントを取ると言われ、日本のアパレルやエンタメ業界の台湾進出のプロデュースから、中央省庁や地方自治体の台湾展開のサポートまで、数多く実施しているFUJIN TREE GROUPから、代表のジェイ・ウー、CEO(執行長)の小路輔、チーフマーチャンダイザーの高島大輔の3名が登場。第1部では、台湾マーケットの最新情報が、「台湾からのインバウンド」や「台湾でのクールジャパン」など事例を交えて紹介され、第2部では、タイムアウト東京代表の伏谷博之が聞き手として参加し、一般参加者との質疑応答も交えたトークセッションが行われた。

小路:こんにちは。FUJIN TREE GROUPの小路です。本日はFUJIN TREEからは代表のジェイ、チーフの高島と僕の3人で来ていますので、簡単に紹介します。ジェイを紹介するにあたり一番分かりやすいのが、台湾で出ている雑誌『GQ』です。今年の夏に発行された「Idea Makers」というタイトルの号で、日本の仕掛人が特集されています。例えば小山薫堂さん、トランジットの中村貞裕さん、服部滋樹さん、山崎亮さんだったり、台湾でもとても注目されているアイデアメーカーが紹介されています。そんな中、台湾でのアイデアメーカーは誰がいるのかとなると、ジェイが紹介されるような感じですね。ですので、クールジャパンやインバウンドについて、ジェイに問い合わせがある際には、台湾人目線で見ると「この商品はどうでしょうか」みたいな問い合わせが多いです。

僕と高島は、この間、台湾にある弊社のオフィスでフリーマーケットを開催したのですが、そのフリマに僕と高島も出品して。このときのアプローチが、僕や高島の台湾でのアプローチをすごく表していると思うので、紹介します。フリマの出店は20から30ブースで、出店者は雑誌の編集長やアパレルブランドのオーナーだったり、デザイナーやモデルです。お客さんは一般の台湾人で、1日だけで800人から900人くらいが来場されてすごく盛り上がったんですが、僕と高島のブースがいちばん売れていたんです。僕のブースのテーマは「メイドインジャパン」、「ハンドメイド」、「オンリーワン」、「台湾初上陸」、「ワークショップ」、「フォトジェニック」、「インスタジェニック」です。今まで僕が携わってきた台湾でのビジネスの成功事例をすべてフリマのブースに集約したら、ものすごく売れました(笑)。

高島は、骨董のブースをやったんですが、実はこの骨董のブースは、別にメイドインジャパンでも何でもなくて、朝までほかの台北市郊外の骨董市で売っていた商品を単純に並び変えただけなんです。そして、値段を1.5倍とかにして売ったら、これも即完で売れたんですね。メイドインジャパンでも全然ないんです。なぜかというと、見せ方を変えたんです。台湾人がどこでも買えるものを、ただ並び変えて、組み合わせを変えて見せるだけでもとても売れるんです。日本の企業や自治体からの問い合わせの多くは、ジェイの台湾人目線で、みたいな事が多いのですが、実はそういう組み合わせを変えただけとか見せ方を変えただけで、台湾人に響いたり響かなかったりするというのも、どこか頭に入れておくと、今後のインバウンドとかクールジャパンのヒントになるんじゃないかと思います。

去年もこのセミナーに来たことある方いらっしゃいますか?あ、ほぼいない。リピート率が少ない。去年のセミナーの最後の質疑応答が印象的で心に残っています。それは、「なぜ台湾人は、日本に来るんですか」というすごくシンプルな質問があったんです。その質問をされた方は、広告代理店の方で、様々なリサーチをして様々なデータを見ている。だけど、台湾人は親日家で、日本食が大好きで、日本のファッションとかショッピングが大好きで、みたいなデータはあるけど、本当になぜ来てるのか分からないというような質問だったんです。その時にジェイが答えたのが、僕には印象的でした。ジェイがすごく考えた上で、「なんとなく」って言ったんですね。たぶん「なんとなく」がすごい正解だなって思って、日本で僕らがインバウンドを考えていく上で、なんとなく台湾人が来てるんだなって思うと、台湾人のインバウンドが上手く捉えられるような気がします。僕らは、インバウンドのコンサルティング会社でもなければ、インバウンドの広告代理店でもなく、普通に台湾で事業をやっている会社です。ですので、今日は「なんとなく台湾人が日本に来てるな」っていうのを話していき、皆さんにもそういう風に思っていただければ、僕らは嬉しいなと思います。

FUJIN TREE GROUPの活動

さて、FUJIN TREE GROUPという会社は、大きく分けて3つの事業をしています。1つ目は、自社の店舗を運営しています。松山空港(ソンシャンくうこう)から歩いて10分くらいのところに富錦街(フージンストリート)と呼ばれる800mくらいの1本のストリートがあります。そこを中心に、自社の店舗を運営しています。だいたい10業種、10店舗を運営しております。個別に少し紹介させていただきます。

Fujin Tree355は、レディースのセレクトショップです。1番初めにオープンしたショップで、日本、台湾、そして世界のものを組み合わせて販売しています。その隣にFujin Tree 353 Cafeをオープンしています。大体コーヒー1杯180~200元(新台湾ドル)くらいです。

そして、レディースのセレクトショップとカフェの向かい側に、インテリア雑貨を取り扱っているFujin Tree 352 Home、少し離れたところに台湾のダイニングレストランもオープンしています。(地図を見せながら)左側がカレースタンドで、右側がメンズのセレクトショップです。左側がリラクゼーションサロン、右側がボタニカルショップですね。今一番新しいのがオイスターバーです。これは本当に先週オープンしたばかりのギャラリーですが、僕らはポップアップスペースと呼んでいます。今までFujin Tree Homeや、カフェで日本の企業や自治体のイベントをたくさんやってきたのですが、ニーズが多いので、独立した形の場所をつくりました。先週はちょうど兵庫の「播州そろばん」と「播州の刃物」などの展示をしました。

自社店舗運営のポイントなんですが、富錦街を中心に展開し、10業種、10店舗で運営しています。1業種につきほぼ1店舗、つまり2号店がないということです。普通カフェが成功したらカフェを広げていくと思うのですが、私たちはどちらかというとカフェに来てくれたお客様に対して、次に何を提供するかということを考えています。この後、説明しますが、台湾では『BEAMS』の代行もやっていて、『BEAMS』の服を着てカフェに来てもらう、カフェに来てもらったらそのままデート、インテリア雑貨屋さんで雑貨を買う、彼氏のプレゼントを買いにメンズのセレクトショップに行く、お腹が空いてカレー屋さんに行く、ちょっと歩き疲れたんでマッサージに行って、夜ご飯はダイニングレストランに行く、飲み足りないのでバーに行く。みたいなストーリーを追って、ライフスタイルを提案しています。僕らが『BEAMS』をやった時っていうのも、『BEAMS』の服を着てどこに行けばいいのかっていうのを、台湾人から聞かれたので、この服を着てここに行ってこうやったらいいよっていうところまで台湾人に提案すると、台湾人ていうのはきちんと動いてくれるんじゃないかなと思います。

2つ目の事業は運営代行です。日本や欧米のブランドの、台湾での運営代行をしています。まずは『BEAMS』です。上が富錦街にある店舗です。下が誠品書店にある店舗になります。これは『BEAMS』と『レクサス』と『GQ』のコラボしたポップアップショップです。そして、『UNITED ARROWS』、『BEAUTY & YOUTH』、『journal standard Furniture』。

また、2016年1月下旬に三井アウトレットパークが台湾の桃園空港の近くにオープンします。そこにもかなりの数の日本のアパレルや飲食店が入るので、その運営代行もしております。そのほかには日本のブランドではないのですが、スイスの『FREITAG』なども手がけております。FUJIN TREE GROUPEは、富錦街でしかやってないと思われがちですが、大手百貨店の中のショップの運営代行も行っています。なぜ、他業種かつ数多くの運営代行ができるかというと、自社店舗運営を10業種10店舗行っているからです。そこで得たノウハウを単純に提供してるという形になります。

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3つ目が、マーケティング支援の事業です。この分野は結構幅広いので、蔵前にある文房具店のカキモリと、創業400年を迎える佐賀県の有田焼の事例をお話いたします。今年の4月に、カキモリという蔵前にある小さな文房具屋さんが、台湾の華山でポップアップショップを展開しました。4月から6月までの3ヶ月間オープンしてとても売り上げが良くて、インクの購入に5時間半待ちの行列ができたほどです。華山で今年1番並んだポップアップショップと言われています。もともとは、台湾の人はカキモリのことをほとんど知らなかったと思います。ただ5時間半待ったりとか、売り上げがすごく良かった理由っていうのは、この後説明していきたいと思います。

まず、カキモリの広瀬社長から、最初に台湾で展開したいって言われたとき、僕らは2つのことを考えました。まず、「誰に情報を伝えるか」です。一般的な日本企業のポップアップショップは大手百貨店で大きくやっていろんな人に伝えるんですが、カキモリってそういうブランドじゃないと思ったので、情報を伝える人を絞り、その人にだけ伝えるようにしました。具体的に言うと、文房具マニアとかイラストレーターとかアーティストの方だけにカキモリの情報を出して、スタートはそういう人からどんどん広げてくようにしました。もうひとつは、「誰から情報を伝えるか」です。当初、台湾の人はカキモリのことは誰も知らないので、カキモリではなくFUJIN TREEから伝えることにしました。「FUJIN TREEがすすめる、日本で今いちばん面白い文房具店です」といったように。その後、認知され始めたら、カキモリからの情報を徐々に多くしていくようにシフトしていきました。

あと、これは想定していなかったんですけれども、5時間半も待たせたりしたので、『Facebook』やメールとかでクレームが結構ありました。その時にカキモリの社長から、1通の手紙を『Facebook』に上げてくれ、と言われたんです。社長の直筆で、「お待たせしてごめんなさい。蔵前の小さな工房で職人さんたちが作っているので、すぐに対応できないのですが、必ず届けますので、お待ちください」と書いたら、台湾の文房具マニアからその対応が神だと称賛され、逆にこの後「いつまでも待ちます」というようなコメントが多くなったんです。リスクマネージメントというよりは、クライシスマネージメントだと思うんですが、なにかトラブルが起きた後の対応って、日本人はすごく上手いなって思います。そういうところも台湾人に見せてあげると、心に響くんじゃないかなと。

たとえば、日本の飲食店とかで、厨房でお皿を割ると、フロアのスタッフ全員で「失礼いたしました」と反射的に言いますが、何か起きた際のの対応が日本人は得意。それを台湾人から見ると、面白いというか興味深いことだったりします。ポップアップ終了後、富錦街でポップアップショップを継続したり、先週は弊社のオンラインショップでインクを販売したのですが、インクの色を手にとって確められないような状態にも関わらず、一晩で完売となりました。

次は、創業400年を迎える佐賀県の有田焼の事例ですが、こちらは台湾人目線で考えて、台湾人目線で選んで、台湾人目線で伝える、という点にこだわって展開しています。はじめに、ジェイが佐賀県の有田に行って有田焼の窯元を回って、この商品が台湾で受けるとか受けないというのを判断するための滞在をするというところからから始まっています。ここがポイントで、台湾で日本の食器や器の展示会を行うときは、日本でセレクトしたものを大手百貨店の催事場などで展示会をやるのが一般的だと思うのですが、そうではなく、ダイニングレストランでは、その日だけ器をすべて有田焼にして、いつも提供している台湾料理を盛り付けることにしました。そこに台湾のメディアやインフルエンサーを呼んで、そこから広げていくという展開です。有田焼の器に何を入れるのか、というところは、すべて台湾人のシェフやスタッフに任せています。お重のような器の中にはビーフンが入っていたり、3,000円くらいするきれいな醤油皿には、台湾では醤油は入れられないと、前菜を入れてるんです。台湾人目線で台湾人に向けてアプローチしていくのはとても効果的だったようで、多くのメディアやインフルエンサーに取り上げられました。そのダイニングレストランでの展開の後、弊社のインテリア雑貨を取り扱っているショップなどで展示販売をしています。

台湾人のライフスタイルに溶け込んだ展開

今日は、インバウンドに興味ある方が多くいらっしゃっていると思うので、弊社がどういうインバウンドの企画書で日本の企業や自治体の展開を台湾で実施しているかを簡単に説明します。それは、有田焼の事例と似ているのですが、FUJIN TREE GROUPの店舗やオンラインサイト、ウェブマガジンを使って、いろんなことやりましょうという内容です。

まず、スタッフが、実際にその商品を使ったり、それを作っている現場に行ったり、その土地に行って体験したりします。そして、それを、弊社の10業種10店舗の店舗でコラボレーションした展示販売をします。その後、弊社のギャラリーをプレスルームとして活用しながら、メディアやインフルエンサーに貸し出したり問い合わせの窓口をつくります。また、弊社のスタッフが体験するところから、それを記事化して弊社が運営するウェブマガジンの『haveAnice』に掲載し、『Facebook』や『instagram』で拡散させます。さらに、その掲載内容を冊子にして、展示販売会でのPOPツールに使用することもやります。

日本の企業や自治体にこの企画書を提案すると、とても受けがいいです。台湾だとSNSとかインフルエンサーを活用した施策が良いよ、みたいなことは日本の企業や自治体は良く分かっているのですが、実はこの紙に落とすというのがすごく大切で、SNSが効果的なマーケット過ぎて、「いいね!」などは付くけど印象に残りにくく実売につながらないことがよくあります。有田焼の場合は、代表のジェイが有田市に行った旅行記のような冊子にして、ダイニングレストランのイベントやインテリア雑貨を取り扱うショップでの展示販売の時などに配っています。

また、弊社では展示販売終了後に必ずギャラリーを活用してプレスルームとして展開するんですが、ここもすごく重要です。日本の企業や自治体は、台湾でイベントなどを実施するときに、金、土、日曜日に商談会や展示販売会をして、月曜日にその商品をすべて日本に持って帰ってしまいます。実はその後がメディアとかインフルエンサーからの問い合わせが1番多いんです。もしそれが台湾に残っていたら、メディアにも掲載されるし、インフルエンサーにも取り上げられるのに、わざわざまた送料や関税をかけて持って帰るので、なるべくなら置いていく方が、効果的だと思います。

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「テイスティング」、「スピーカーを考える」、「インバウンドとして捉えない」

最後に、台湾でのインバウンドのポイントです。弊社では、日本の企業や自治体に提案するとき、ほぼこの3つしか言ってないです。「テイスティングをさせる」、「スピーカーを考える、パートナーを考える」、「インバウンドとして捉えない」です。

「テイスティングをさせる」というのは、まさにカキモリさんの事例だと思うのですが、カキモリさんは別にインバウンドが目的で台湾展開しているわけじゃなくて。台湾進出して台湾人に届けたいからやっています。結果、台湾であれだけ有名になったら、蔵前の店にその週から台湾人が大勢押し寄せることになりました。クールジャパンとかビジットジャパンって別々のものじゃなくて、表裏一体のものだと思います。カキモリの場合、台湾の華山でちょっとテイスティングした人のうち、10人に1人は日本に来ているので、その10人に1人が浅草周辺に旅行に行った時に、絶対にカキモリに寄りたくなるんじゃないかなと思います。たとえば、ブルーボトルコーヒー。去年の2月に清澄白河にオープンしましたが、オープン当社に清澄白河に行った人って、その後、サンフランシスコやオークランド行ったら、そのブルーボトルコーヒーの前で写真を撮って『Instagram』とかに上げると思うんですよ。来年、ダンデライオンチョコレートが蔵前にオープンするみたいなので、バレンタインなどに行った人が、サンフランシスコに行ったりしたら、本店に行って『Instagram』に上げるんじゃないかなと思います。ちょっとテイスティングさせてあげると、その国や地域に旅行した時にそのお店に立ち寄ってくれると思います。

僕が前職で海外事業をやっていた時に、社長によく言われてたことがあるんです。台湾、香港のパートナーはこういう会社ですって報告すると、社長が、どんな服を着ているか、どんな音楽を聴いているのか、どんな本を読んでいるのかと、まずはじめに聞くんです。こういう服を着て、こういう音楽を聴いてましたと言うと、それならやろうよとか、それならやらないようにしようとか、同じものを見ているかが大切でした。パートナーが自分たちと同じようなものに興味があったり、同じものをみているかがわかったら、後はパートナーに任せたほうがリスクは少ないのではないかなって思います。

2016
1月から『The Wonder 500』という経済産業省が支援するプロジェクトを台湾で実施するんですけれども、これもすごいパートナーやスピーカーを考えて企画しています。簡単に言うと、日本の地域物産などの商品を台湾で展示販売するんですが、台湾は「誠品書店」、「VVG」、「小器」、「FUJIN TREE」の4社が協力して台湾マーケットに伝えます。この4社が共同で何かひとつのプロジェクトをやるというのは初めてで、今後もないと思うんです。4社のスピーカーがどう伝えるかというのは今から楽しみです。

最後に、「インバウンドとして捉えない」ですが、最近、インバウンドというとマーケティング用語っぽくなっていますけど、すごくシンプルに考えたら台湾人の普通の海外旅行、訪日旅行なんです。ただ単純に台湾人が海外旅行に来ていると考えると、本質が捉えやすいかなと思っています。今ちょうど、マレーシア人の友人が日本に来ているんですが、その友人は皆さんが思うような商業施設だったり観光施設を回って、それをずっと『
Facebook』に投稿しているんです。その中で最も「いいね!」が付いているのが、カプセルホテルで部屋着か何かを頭に被ってポーズを決めて、『スターウォーズ』のジェダイコスチュームみたいだって言っている写真なんです。これに1000とか2000いいね!が付いてたんです。それ以外の風光明媚な場所や、美味しいご飯の投稿もあるのですが、そのカプセルホテルの写真が、マレーシア人に良いと思われる写真だったんですね。普通の海外旅行って捉えたら、本当に箸が転がっただけでも面白かったりするので、そんなに日本の本当の魅力を伝えてあげようと思わないで、マレーシア人が旅行に来たらその旅行がちょっとでも楽しくなるようなものがうちにはあるよ、くらいに考えていけば良いのではないかなと思っています。マレーシア人がマレーシアに帰って、東京は楽しかったけど「やっぱり家がいちばんだよね」とか言われたとしても、それはそれで海外旅行ってそんなもんじゃないかなと思ってます。

伏谷博之:小路さん、ジェイさん、高島さん、本日はありがとうございます。『世界目線で考える』というイベントは2011年震災の年に始めました。今回は、最大規模のお客様が入っているということで、素晴らしいですね。ジェイさん、大人気で!どうですか、小路さん緊張しましたか。ジェイさんは、いかがですか。

ジェイ・ウー:皆さんご来場いただきまして、ありがとうございます。小路が話すのを改めて聞いたら、すごく面白いと思いました。

伏谷:去年も来ていただいて、世界目線でやっていただいたんですが、その時にジェイさんが構想を語っていました。こういうプランがあるんだとか、オイスターバーを作るんだとか。すべてこの1年でやったんですね。

ジェイ:はい、そうですね。去年は今の半分くらいのお店しか持っていなかったんです。

伏谷:それが倍ぐらいになったと。

ジェイ:はい。

伏谷:現在、FUJIN TREE GROUPは、何人ぐらいスタッフがいるんですか。

ジェイ:140人くらいですかね。

伏谷:140人!すごいですね。

ジェイ:日本にはインバウンドでいい武器がたくさんあります。さっきのレポートで改めて思いました。

伏谷:そうですね。有田焼のやつ面白いですね。有田焼を見に行って、これが台湾で売れるっていうポイントは何かあったんですか。

ジェイ:まずデザインと創業400年という歴史があると言うことですね。有田焼を通して、台湾に今あるデザインを少し変えるだけでライフスタイルが大きく変わるということを台湾人に伝えれば、共感するんじゃないかなと思いました。台湾の食べ物は美味しいのですが、かっこよさに対してあまり力を入れていないんですよね。

伏谷:食べ物には興味があるけど、どういうプレゼンテーションでっていうのは興味がなかったと。

ジェイ:日本人のセンスとデザインを、台湾の美味しい食べ物とあわせて一緒に提案したらすごいポイントになるかなと考えました。

伏谷:そうなんですね。日本でも今、伝統的なものを若い人たちが使うっていうムードがありますが、どうしても「有田焼か……」という風になりがちなところを、ジェイさんたちが魅力を引き出していると思いますね。

ジェイ:そうですね。

伏谷:ジェイさん非常に日本語が達者なんですが、奥様が日本人の方で、そこもやはり目利きして持って帰ったという感じですか(笑)。はい、余計なことは言うなと。そして今回、はじめて高島さんにお越しいただいたので、お話を伺えればと思います。

高島大輔:よろしくお願いします。 伏谷:高島さんは『BEAMS』の出身ですが、どのような経緯でジェイさんの所へ合流されたのですか。

高島:『BEAMS』でレイアウトと商品構成をやっていたんですが、台湾に進出する時にジェイの所に商品を持っていって、レイアウトする機会がありまして、そこで意気投合しました。その後もジェイが来るたびに飲んだりして、ジェイの行動力って魅力的だと思ったんです。

伏谷:4月に台湾に行ってみて、実際の台湾の若者マーケットなどはどうでしたか。

高島:住んでみないと分からないことは、たくさんありますね。台湾へは、何回か行ったことがあって、知識もあったのですが、実際に住むと全然違いますね。もちろん文化が違うので、『ウォシュレット』がないだけでも、こんなに不便なんだとか(笑)。

伏谷:そこですか。

高島:そういう単純なところだけでも、違いがあるなという感じがしますね。

伏谷:昨年のイベントの時に、ジェイさんがお話をされていて印象的だったのが、ダウンジャケット。日本のメーカーの人とかお店の人は、台湾は暑いからダウンジャケットは売れるわけないって話をしていて、でもジェイさんだけは「売れます」ということで、やったって話あったじゃないですか。今日は、リピートの方あまりいらっしゃらないんで、その話を少ししていただいてもいいですか。

ジェイ:はい。アパレル関係のリサーチ会社が日本から来ることが多いのですが、たいていの方が台湾に着いたら暑いと言います。こんな暑い国だったら、冬がないんじゃないって言われるんです。なので、ダウンジャケットは売れないというのはほぼ全員の意見でした。でも結構、こっちではダウンジャケットを着ています。なぜかというと、寒さの感覚が全然違うんですよね。たとえば台湾の冬は12度で寒いほうです。夏は37、38度とかで湿気があるので、15度から20度下がると、非常に寒く感じるんですよ。10度下がると、すぐにダウンジャケットを着始めます。ヒーターもなくて。

伏谷:高島さんは当時、その話を聞いていてどう思われましたか。

高島:ダウンジャケットを送ってくれと言われたんですが、いや売れないなと思ったんですよね。しかし、実際住んでみると、ちょっと寒くなっただけで、バイクに乗っている人たちは、日本ならまだナイロンブルゾンでいいような時期に、ダウンジャケットをここぞとばかりに着てくるんですよ。なので、確かに売れるかもしれないと感じました。

伏谷:なるほど。そういうギャップを感じた商品は何かありましたか。日本が持っている台湾のイメージと、実際に行ってみて、ここはちょっと違うんだなっていう。商品でなくても生活の中で何かありましたか。

高島:男女の関係みたいなところですかね。向こうのカップルって、彼氏、彼女がもうベッタリで。職場まで彼氏が迎えにくるとか、彼女が迎えにくるとか、仕事が終わるまで待ってるとか、その辺はちょっと驚きました。仕事に対する意識っていうのも、日本とは何かしら違うのかなと思いましたね。

小路:あと、マザコンがとても多い気がします(笑)。道教の人が多い国というのも関係しているのかもしれませんが、長男とその母親の関係が強くて。ですので、草食系の男子とか、LGBTの方も多いんですよ。アジアで最大のゲイパレードをやっていたりしますし。たとえば、七五三みたいに子どもの写真を撮るときに、アルバムに入れる写真を選ぶのって日本だと主に母親だと思うんですけど、でも台湾だと、父親とその祖母がほとんどです。

伏谷:ダイバーシティーとか、草食男子的には台湾の方が日本より先進的で学ぶところがあるということですかね。

ジェイ:台湾の男性は優しいイメージがありますけど、深く知り合うと結構面倒です。

高島:面倒とは言わないけど、そういうところは少しあると思いますね。優しいのは、優しいです。女性に対しては。

伏谷:なるほど。消費の財布を握ってるのは、たとえば夫婦だったらどちらでしょうか。

ジェイ:僕は自分で考えますけど、一般の台湾人だったら、妻が了承しないとだめですね。
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日本人がなぜ台湾に行くのか、台湾に興味があるのか

伏谷:分かりました。先ほどのお話の中から、いくつか伺いたいのですが。「なぜ台湾人は日本に来るのか」という質問が印象的だったと言うことでしたが、逆に、日本人がなぜ台湾に行くのか、台湾に興味があるのか、というのはどのようにご覧になっていますか。

小路:多分、元々は興味はあまりなかったと思います。3年前とかは、台湾は(市場として)人口も少ないだろうとか言ってました。

伏谷:ちなみに小路さんは、もともとJTBグループから、ZOZOTOWNへ移られて海外事業の立ち上げをずっとされていたんですよね。

小路:その時、メインは中国だったんです。アパレルで中国に行ったのに全然物が売れなくて全部撤退してきました。残っているのはどこだろうってなって、香港とか台湾かなって。あと、震災の後なんか優しくしてくれたということが、日本人がこれほどまでに台湾に興味を持たきっかけだったんじゃないかと思っています。

伏谷:なるほど。ジェイさん的にはなにかありますか。

ジェイ:なぜ台湾に興味があるかというと、多分台湾に一度来ると、興味が深まると思うんですね。先月、日本の雑誌『POPEYE』の編集長の木下さんが台湾にいらしたんですが、それまでは台湾に来たことがなかったみたいなんです。その時に、木下さんに台湾を案内したら、とても感動していました。帰ってすぐにメールが来て、台湾がすごく面白かったから、特集をしたいと。今まで欧米に行って写真など撮っていたんですが、そこまで行かなくても、台湾にも色々なものがあって、欧米にまだないものもいっぱいあるから、違う目線で見ると、すごく魅力だなとなって。それが一回見たらわかるんですよね。マーケット的には様々な戦略があるんですが、たとえば、最近中国に行って思ったのは、日本人が中国で直接ビジネスをやると、難しいということです。文化、感覚の違い、言葉の壁と、色々な意味で難しいと思います。日本は色んな素晴らしいものを持っていて、モノとかサービスとか。台湾を通すと、中国に行くのが、だいぶ楽になるというところも、ビジネス戦略だと思います。

伏谷:なるほど。前回の『世界目線』では『KKBOX』(アジア最大級の定額音楽配信サービス)の八木さんに来てもらって、話したなかで、音楽の世界でもアジアのマーケットに出ていくのに、台湾でまずデビューして、という話が出ていたのですが、やぱり台湾がハブになって、世界を目指すにも、そこを経由して出ていったほうが良いんじゃないかなという感じですか。

ジェイ:はい、エンターテインメントも間違いないです。

小路:最近は台湾経由で中国に行くのもすごく大変、むしろそっちの方が大変なので、台湾を通して南に下がるパターンも多くなっています。台湾からタイ、シンガポール、インドネシアなどに下がっていくということです。

伏谷:実際、私も何回か台北とかFUJIN TREEにも行かせてもらって、特にカフェのカルチャーとか、ジェイさんが広めたセレクトショップとか、東京とは違うディレクションではあるんだけど、ある意味進んでるというか。こういう言い方すると語弊があるかもしれないんですが、大手アパレルショップのお店もジェイさんが台湾でやってる方がかっこいいんじゃないかなと思って。そういうのってジェイさん的にはどうなんですか?日本のブランドを台湾でもう一度プロデュースして、お店を出したりされていて、日本から見ても、新しいかっこよさがあるように見えるんですが、そういうのは意識していますか。

ジェイ:日本のファッション、トレンドは結構かっこいいと思っています。日本は欧米のデザインを学んでサイズを変えて、アジア人のスタイルに合うように、日本で編集するんですね。その編集力がすごく高いなと思って。ただ、それを台湾に進出させるという話になると結構大変です。日本の大きな会社は役員会とか稟議とかがたくさんあるし、リサーチやデータを大切にするのでなかなか前に進まないし、進んだころにはそのタイミングを逸しているということもあります。ですので、まずはさっき言った「テイスティング」をやってみてという形になってきてしまうかと思います。日本は良いものをたくさん持っていますが、海外進出はあまり上手くないかもしれません。そのギャップは僕らが調整しなくてはいけないと思っています。それを海外に、台湾、香港、中国に持っていくときに、どうやって伝えるか、どうすれば現地の人が感動するか、そこがすごく大事なポイントだと思います。

伏谷:今日は台湾人目線で、っていうお話が出てまして。昨日ですかね、クールジャパンの新しい会議があって、ミーシャっていうファッションブロガーの「自分からクールだなんて言っても受け入れられないし、外国人の目線でやるべき」みたいな発言がネットでかなり回ってました。おっしゃる通りで。日本の企業なりそういうところから見ると、アジア周辺に対して、少し上から目線になっているときに、さあ委ねましょうっていうのは、結構勇気がいるというか、決断が必要なのかなって思うんです。多分、ジェイさんのところに委ねている企業もいるし、委ねきれなかった企業もあると思うのですが、実際のビジネスに違いが出たのかとか、そのあたり、教えてもらってもよろしいですか。

小路:台湾に視察に来て打ち合わせする時に、50歳くらいの事業部長と30歳くらいの部下が来て、50歳くらいの人がまず初めに「お日柄もよろしく」みたいなこと言って、30歳くらいの人が「弊社は……」みたいなこと言う企業や自治体は、だいたいだめですよね。そういう企業や自治体に限って、打ち合わせ風景の写真を撮って良いですか、とか言って(笑)。

伏谷:高島さんどうですか。『BEAMS』のときもオペレーション入られたと思うんですが、委ねきれるのかきれないのかどうか、葛藤があったと思うんですね。

高島:委ねきってはいけないところもあると思うんですよね。『BEAMS』とかは、オリジナルに関しては持っていける、でも仕入れのものに関しては、現地で仕入れなければいけないなかで、それを現地の人に任せてしまうのは、ちょっと違うなと思いました。ただ、イベントの時に、ノベルティで日本だとバンダナとかを配るんですが、それをそのままやろうとしたら、台湾の人に、いやいやバンダナは別れの意味を示すから、台湾ではあまり良くないんだよって、そんなものをノベルティにしたら人は来ないよ、というのがあって。現地でないと分からない部分っていうのはあるし、協力すべきところとか、自分たちのアイデンティティーを保つところは別に持っていても良いのかなって思います。

伏谷:なるほど。では、ジェイさんお願いします。

ジェイ:よくあるパターンは、海外に出たい、でも怖がっている。どうやってやるか分からない。信じたいけど信じられない。そういうのがよくあるんです。よく聞かれるのは、「このエリアは日本だとどこ?」ということなんです。でも全然違うんです。そこから考えるとだめですね。台湾だとどういうエリアなのか、と考えた方が良いです。お互いに良く話して、状況を分かって、任せるという方が、成功すると思います。いちいち報告していると、日本人目線になりすぎている可能性があって、上手くいかなかったりします。

伏谷:今日は、台湾進出を考えていたり、台湾からのインバウンドやビジネスを考えている方がいらっしゃると思いますが、すごく勉強になるというか、甘くはないぞ、というところですよね。
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伏谷:日本から視察として訪れる人が大勢いるそうですが、現在、FUJIN TREEにはどのくらいの人が視察にがいらしているのでしょうか。

小路:今日来ている3人で数えてみたのですが、年間で約1000人でした。ですので、毎日誰かが誰かの視察をアテンドするという状況です。だいたいアテンドする場所やお店はいつも同じなので、僕らは毎日そこで食べているみたいな状況になっています。ゲストは美味しい美味しいと言ってますが、僕らはあまり食べていません(笑)。ゲストからローカルなところに行きたいとよく言われますが、僕らが30元でお昼ご飯食べているような場所はさすがに紹介できないので(笑)。

伏谷:富錦街の冷麺が美味しかったですよね。現在、1000人以上来られているということですが、最近の日本からのオファーや興味は、どのようなカテゴリーの案件が多いのでしょう。

小路:1年前くらいは、広告代理店やコンサルティング会社などが増えていました。その後、メーカーやブランドが来るのかなとか思っていたんですが、意外とデベロッパーが多く来ます。なので、まだメーカーとかブランドとか単体で台湾に進出するのはちょっと難しいと思っているのかなとも感じています。

伏谷:三井不動産のアウトレットモールへ出店する企業やブランドの中にもFUJIN TREEが手がけているものはありますか。

高島:はい、現時点で、複数社の運営代行をやらせていただいく予定です。大手アパレルブランドや飲食店も新規出店する予定です。単純な運営代行だけではなく、飲食に関しては現地での食材の仕入れから、メニュー開発、運営まで任せていただいています。

伏谷:話せないかもしれませんが、今、日本からこれを台湾に持っていくと流行りそうだと思うものなどありますか。先ほどのカキモリさんなども素晴らしい事例だと思うんですが、第2、第3のヒットも期待しているので。

小路:話が変わるかもしれませんが、台湾で流行りそうな日本のコンテンツは、引越し業者ですかね。クールジャパンって思います。

伏谷:それはご自身が引っ越した時の経験からでしょうか。

小路:台湾の引越し業社って最初にそれを入れちゃうのって物から入れちゃって、後で詰め直したりしてるんですよ。日本の手際の良さと、それをバイトまで伝えているというのは、台湾だとなかなか考えられないことでして。

伏谷:引っ越し業者はチャンスだと。

ジェイ:本当ですね。そこがとても難しくて、教育も関係してくると思うんですよ。たとえば、何を先に入れるのか、何が壊れやすいとか。そういった部分が台湾人の感覚だとよく分からないんですよね。あと、飲食は最近、日本から世界へ進出していると思います。日本の味は、世界中どこへでも行けると思います。ラーメン、寿司、焼き肉。世界のどこへ持っていっても成功できると思います。

台湾人が行けば、ここ凄いという何かがきっとある

伏谷:では、そろそろ皆さんから質問を伺いましょう。

質問者:私は鉄道会社で、様々な地域を起点に海外の方も含め、たくさんの人が訪れるための仕組みを作っています。有田焼の事例は、応用の可能性が高いなと思いました。モノをフックにプレゼンテーションをして、その土地に人が行くという仕組みは非常に分かりやすい。しかし、歴史や土地としては素晴らしくても、商品という意味ではフックになるものがない場合はどのようなアプローチが良いのでしょうか。

小路:台湾人が行けば、ここすごいという何かがきっとあるはずです。

ジェイ:賛成です。たとえば鉄道自体もそうですよね。私自身、日本の新幹線とか普通の電車に乗るんですが、本当に素晴らしい。世界一のシステム、インフラだと思います。そういうものは絶対にあるので、ポイントを探して、そこを宣伝すれば良いのではないでしょか。

小路:日本の企業や自治体には、日本でナンバーワンのものでないとそれを魅力として言ってはいけない、みたいな風潮があると思います。でも、そんなことはなくて、台湾には日本人は誰も知らないようなうどん屋さんが「うどん発祥の店です」みたいに売ってたりしています。さらに言えば、『ITF』(台湾で開催される大規模な旅行博)で韓国が桜を売りにして、うちの桜は元祖ですみたいに言ってたりもしているんで(笑)。

質問者:商品に限らず、同じような仕組みでアプローチできるんじゃないかということですかね。ありがとうございました。

小路:そこにいる人などでも良いと思いますよ。それこそカキモリの広瀬社長は台湾で大人気になってから、広瀬さんが何か言うだけでそれが文房具好きの間で話題になるような状態になっています。台湾人って人が好きなので、人を前面に出すというのも一つかと思います。

伏谷:本日広瀬さんがいらしているので、ご興味ある方はぜひ名刺交換などされて下さい。

質問者:浅草と押上でセカイカフェという外国人向けのカフェをやっています。最初ハラル対応を始めました。「世界の人と同じテーブルで食を楽しめる」というコンセプトでやっているものですから、ベジタリアンもともに対応しようと。当初気付いてなかったのですが、中国のベジタリアンの方への対応が必要だなと感じて。あと、台湾の方って、1日、15日、誕生日に素食を食べる方、完璧なベジタリアン、あとは願掛けで、願いが叶うまで素食にするとか。ライフスタイルの中の食でそういった素食の部分を上手く組み合わせていると聞きました。また、若い人も素食が進んでいると。その辺をネットで検索している状態です。素食の部分と、実際若い人たちがどのように対応してるのか、というところを聞きたいです。なぜ聞きたいかというと、日本のベジタリアンの流れも台湾から来るんじゃないかなと思っていて。そして、特に若者へのインパクトがあるのではないかと。

小路:実は、台湾はベジタリアンがとても多いんです。たしか、世界で台湾は人口に対するベジタリアンの割合が2位なんですよ。1位がインド30%、2位が台湾で9%、そしてイギリス、ドイツと続いていくんです。台湾はベジタリアン大国で、それに加えて、最近ヨガなどの健康ブームもきています。

ジェイ:台湾のベジタリアン料理は、とても美味しいんです。メニューの開発も優れていて、海外のものと比べてもレベルが高いと思います。そこは参考になります。しかも、台湾ではベジタリアンのレストランは何百坪もの面積でやっているんです。それもいつも満席です。機会があれば台湾に見に行ってください。

伏谷:世界2位なんですね、まったく知らなかったです。

質問者:私はリクルートという会社で、『ゼクシィ』という結婚情報の媒体雑誌をやっております。昨日、台湾の方向けに前撮りを日本でしてもらおうというウェブサイトを作りまして、話を聞く中でドキッとしたのが、お父さん、お祖父さんの影響力がかなり強いという話です。日本の場合だと女性が、こんなことをやりたいと男性にお願いすれば、たいていは好きにやったらいいよみたいな話になると思っていて。なので、主に女性が気に入ってくれるようなデザインを意識して作っていました。台湾の方は結婚に関して、親御さんのみならず、お祖父さん、お祖母さんもかなり口を出してくるのか。そういったところのお話を伺えればと思っています。

小路:とても強いと思います。特に新郎の母親はすごく影響力が強いですね。むしろ、そこが突破口みたいな。日本ですと花嫁のお父さんじゃないですか。真逆ですね。

ジェイ:そういうことですね。親の影響力は強いんです。結局、誰のための結婚式かぐらいの強さです。たとえば、親の反対で結婚ができない、交際ができないみたいなこともあります。結婚関連についてのマーケティングを考えるときは、親の部分もよく考えた方が良いと思います。

質問者:私は、現在メディカルツーリズムの会社の立ち上げを行っています。美容整形外科と顔治療に特化してやっているのですが、台湾人の方は美容整形に関してどういう感覚を持っているのかなと思いまして。たとえば中国の方でしたら気軽に考えていて「今日フライトで8時に帰国するから、3時間でちょっと顔変えて」みたいな気軽さで来ます。なので、台湾の方はどういう認識を持っているのかなと。年齢によっても、変わると思うんですが、中国の方は結構、芸能人みたいにしたいとか、自分の顔をガラッと変えたいというニーズが強いです。台湾の方はガラッと変えたいのか、もしくは自分の顔のテイストを残しながら、自然に良くしたいのか。その辺の考えをお聞かせいただけますか。

高島:韓国人ほど整形はオープンではない気がします。しかし、日本人よりも少しオープンではあるので、実はやっている感じの人が意外と多いのかなと思います。

伏谷:プチ整形?

高島:そうですね。もしかしたらもっとやっている人もいるかもしれないです。そこまでオープンではないので、逆に社員も整形をしているのではと不安に駆られますが、あまり気安く聞けないというのはありますね。

小路:台湾は韓国と比べると気温が暑いので化粧はしづらいです。そこもプチ整形をニーズを探るポイントかなと思います。

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伏谷:長時間にわたり、ありがとうございました。最後にみなさんからメッセージをもらいましょうか。

小路:たとえば、ワールドカップとか、オリンピックに対する感覚は僕らと全然違って、オリンピックが東京に決まったとき、台湾人のモデルとか、インフルエンサーはSNSで「やったー!」って言うんです。ワールドカップで本田がゴールを決めても「やったー!」って言うんです。なぜかと言うと、彼らは自国でオリンピックができないし、ワールドカップには出場できなかったという状況の中で、どこに感情移入するかというと一番近い日本なんですよね。僕らは、日本が勝っても台湾人が喜んでいるとはまったく思いませんが、実は彼らは喜んでる。そういうところも考えていくと本質が捉えやすくなると思います。

高島:僕は、まだ台湾に行ってそんなに時間が経っていないのですが、台湾に住んでいて、日本のここが素晴らしいと実感した部分があります。日本人って分析することとかがすごく得意だなって思います。多種多様な国のカルチャーが東京にはあるのですが、もともとあった国よりも深く掘り下げて、しかもそれをローカライズして東京のものにするみたいな。そういったところも、台湾人から見て魅力的な都市のひとつなのではと思います。

ジェイ:台湾人は、本当に日本が好きなんで、気軽によく訪れます。たとえば、金、月曜に会社を休んで、週末と合わせて3日間日本に来ることがよくあるんです。弊社のスタッフも、会社には特に言わずに週末に日本へ行き、帰ってきたらお土産持ってきて、実は東京行ってきた、みたいなこともよくあります。僕も、月に1、2回は必ず来ていますが、毎回文化の違いに気付かされます。日本人は人がたくさんいる公共の場ではマナーを守ったり静かにしている。逆に日本人が台湾に行くと、たくさん喋ってすごく賑やかになったりして。特におばさんとか(笑)。日本で疲れたら台湾に行ってエネルギーをもらっているのではと感じます。逆に僕は、台湾で疲れたらこっちで静かにしたいなって思って来ます。また、頻繁に来ているので、さらにコンテンツを提供したいと思っています。たとえば、台湾にないものだと、東京の人口は1200万人で台湾は全体で2300万人ですから、マーケットは小さくて。ビックカメラみたいな見せ方をしている家電量販店は台湾にはないんです。台湾人は、台湾の家電量販店に行っても、テレビを買うとか、冷蔵庫を買うとか明確な目的でしか行かないんですよ。でも、日本ではちょっと入って何か新しいものがあるかなと、探しに行きます。家電量販店だけでなく、本屋もそう。日本の色々なものをもっとアピールできると、もっと観光客が来ると思います。これが日本しか持っていないものだと思いますね。香港にもないし、中国にもない。日本しか持っていないものです。それをもっと強くいかすほうがいいと思いますね。

伏谷:タイムアウトで広告してくださいね。

ジェイ:そうですね。はい(笑)。

伏谷:最後にジェイさんの来年の野望をお願いします、皆さん聞きたいと思うので。

ジェイ:世界中いろいろ回って、良い物を正しいマーケットに伝えられたらと思っています。特にライフスタイルが、異なるので、面白いと思うんですよ。それを世界にどんどん伝えていきたい。台湾だけじゃなくて、来年は中国にも進出して。台湾系のホテルを立ち上げて、僕らの飲食を進出させたいと。もうひとつは、様々な日本企業を台湾に展開していきたいです。僕らが持っているノウハウをいかして、日本の企業を助けて、台湾で成功できるようにしたいですね。

伏谷:ジェイさん、楽しみにしています。来年お会いしたときに、どれだけ大きくなっているのか!

ジェイ:頑張ります!

伏谷:本日は台湾からFUJIN TREE GROUPのジェイさん、小路さん、高島さんにお越しいただきました。ありがとうございました。
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