2013年1月23日にパブリックキャット第9回で紹介したインドサラサの店で、営業部長として日々仕事に励んでいたサラサも現在では隠居中。彼自身は自由気ままに、元気に過ごしているようだが、折れ曲がった小さな耳が愛らしいサラサの接客を楽しみにしていたという人にとって、この隠居という知らせはきっと悲しい知らせであったに違いない。しかし先日、彼の後を継ぐ新たな看板猫2匹が、池袋駅近くに店を移した同店で働いているとの情報を入手。その2匹の働きぶりを取材するべく、タイムアウト東京編集部は再び池袋にあるインドサラサの店を訪ねてみた。
店に入ると、窓際でくつろぐ1匹の猫を発見。彼の名は「ぎん」で、生後5ヶ月の子猫。まるでチャップリンの髭のような鼻の周りの黒い部分がチャームポイントだ。段ボールの上に敷いてあるふわふわのカーディガンが大のお気に入りだそうで、1日のほとんどの時間をこの場所で過ごしている。
しばし窓際のぎんに癒されていると、店の奥からもう1匹の猫がやってきた。続いて店内に姿を現したのは、同じく生後5ヶ月の「きん」。一見黒猫だが、実は腹や脚の辺りが少し白っぽくなっているのがきんの特徴だ。凛とした顔立ちでイケメン看板猫として活躍しているが、バースデーケーキのろうそくで髭を焦がしてしまうという、少々おっちょこちょいな一面も。
2匹はもともと社長の友人によって保護されていたが、生後2ヶ月のときに社長に引き取られこの店にやってきた。当初は1匹だけ引き取る予定だったが、2匹が兄弟だと聞いて一緒に引き取ったのだという。それ以来、生後2ヶ月という若さで看板猫として働くように。夜は店長の家や同店で働く女性店員の家に帰るため、猫専用のバッグに入り電車や自転車で通勤している。
大きな物音が怖く、電車に乗っている際は常に小さな声で鳴いているきんに対し、電車の中であってもぐっすり眠っているぎん。繊細な性格のきんに比べ、ぎんはかなりマイペースだ。動物病院に行った際には、診察に怯えて鳴くぎんを心配して一緒に鳴き出したきんに対し、きんが診察に怯えて鳴いていたときにぎんはというとスヤスヤ昼寝。さらに、ぎんの鳴き声がどこからか聞こえればきんはすぐに駆けつけるが、逆の状況のときに珍しくぎんが駆け付けたかと思えば、最後のとどめと言わんばかりにきんの首にガブッと嚙みつくなんてことも……。どうやら、今のところはきんの優しさが一方通行のようだ。しかし、ぎんも少し不器用なだけで根は優しい奴。きっとそのうち、心の内に秘めている優しさを見せてくれるはずだ。
しばらくすると、きんが袋で遊びだした。きんは、このカサカサと音のする袋が大好き。袋が登場すると無邪気に飛びつき、無我夢中で遊んでいた。ぎんも袋で遊ぶのは好きなようだが、きんが遊びだしても決してすぐには遊ばない。なぜだかは分からないが、じっときんが遊ぶ様子を眺めていて、少し時間がたってから満を持して登場するのがぎんのいつものお決まりパターン。
最後には癒しの「ネコタッチ」を披露してくれた。なんと、きんとぎんは餌をもらう際に、お手、お替わり、ネコタッチができるのだ。お手とお替わりはイメージがつくと思うが、ネコタッチは彼らに掌を向けると前足をその掌にタッチしてくれる、ハイタッチのようなもの。この姿が本当に愛おしく、一度ネコタッチを経験したらきっと誰もが永遠に餌をあげ続けたくなるはずだ。
商品を傷つけたり来店客に噛み付いたりしないよう躾としてもちろん叱ることもあるが、その時間を10秒以内と決めていたり、来店客にも物凄く可愛がられてきたため、2匹とも人間に対してまったくの警戒心や恐怖心がない。そのためとても人懐こく、ふと店を訪ねた人であっても一瞬で彼らに心を掴まれてしまうことだろう。きんもぎんも今はまだ新米看板猫だが、今後さらに腕を上げていくはず。これからも2匹で店を盛り上げてくれるであろう彼らの仕事ぶりに期待したい。
店員のお姉さんが身につけているアオザイですっかり味をしめてしまい、2匹とも大のスカート好き。スカートで来店する際は要注意である
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