大阪・関西万博の巨大パビリオンにかける「未来の都市」にしかできないこととは
Photo: Keisuke Tanigawa 山岸功(左)、古見修一(右)
Photo: Keisuke Tanigawa

大阪・関西万博の巨大パビリオン「未来の都市」にしかできないこととは

クリエイティブディレクター古見修一とコンセプトデザイナーは山岸功にインタビュー

テキスト: Nana Yasuda
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2025年4月13日(日)から、同年10月13日(月)まで開幕される「日本国際博覧会」(以降、「大阪・関西万博」)。20年ぶりに日本で開催されるとあって、大きな注目を集めている。中でも未来社会ショーケース事業のフューチャーライフ万博「未来の都市」は、施設の長さが約150m、面積4800平米と万博でも最大級の規模だ。博覧会協会が主体となる共通展示と、15のアトラクションによるさまざまな未来体験ができる。

この事業のクリエイティブディレクターを務めるのは上海万博の「自動車工業会」「ガス協会」「UNESCO」などのパビリオンをプロデュースしたことでも知られる空間プロデューサーの古見修一である。そしてコンセプトデザイナーは山岸功が務める。ここでは二人に大阪・関西万博へかける思いや、注目ポイントを聞いた。

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博覧会史上、最もユニークな展示にしたい

——未来社会ショーケース事業として展開する「未来の都市」のパビリオン概要が明らかになりました。まずは古見さんにクリエイティブディレクターの立場から現在の心境を聞かせてください。

古見修一(以下、古見):開催まで半年を切りました。建築物も展示物もこれまでにない新しい試みにチャレンジしようとしているわけですから、緊張の連続です。現在も試行錯誤しながらさまざまなテストをしています。最初のイメージ通りできているのか連日ドキドキ、ハラハラしています。

——「未来の都市」のクリエイティブディレクターへ打診されたときはどんな気持ちでしたか?

古見:日本国際博覧会協会から連絡があったときは、やりがいを感じると共に「さて、どこから手をつけたらいいものか…」という心境でした。パビリオンの面積はみなさんが想像している以上に大きなものなので、どんな風にストーリーを構成して、展開していこうかと戸惑いもありました。

——以前の発表会で「博覧会史上、最もユニークな展示にしたい」と語られていましたが、どんな点に注目してほしいですか。

古見:ありとあらゆる映像が日常的にある時代で、魅力ある体験する空間を創ることができるか、みなさんに伝えたいメッセージを印象深くに届けることができるか、というところがポイントになってくると思います。

スケールの大きいテーマ映像・コモン展示01・コモン展示02と、今までにないは訴求面、機能面、やアイディア面の融合により、大いに魅力あるパビリオンになっていると思います。そうした意味で万博史上、最もユニークな構成と展示になると思いますよ。

若手クリエーターも積極的に参加

——1970年に開催された「大阪万博」から数えて6回目の万博となります。今回の万博の課題はどんなところだと思われますか?

山岸功(以下、山岸):日本での開催は20年ぶりなので、万博の記憶がおぼろげな人や万博に行ったことがない人も多いと思います。そんな方々たちに今回の万博をどのように受け入れてもらうか、どうやって足を運んでもらうかが我々のミッションです。

特に20歳以下の人たちにとっては経験したことがないことばかりだと思うので、今回の万博が若い方々にとって色々な発見の場となるとうれしいですね。

——創り手であるクリエーターも若い人が大勢参加していますね。

古見:親子ほど年齢が離れた人もいるので行動様式の違いに戸惑うこともありますが、クリエーティブというのはある種、自分との闘いでもあります。ありとあらゆる個性を持った人が参加してくれているので頼もしくもあります。

山岸:古見さんのおっしゃる通り、年齢差を感じることもあります。しかしこれまでの万博に直接関わっていない人ばかりなので逆にそんな人々だからこそ出てくるアイディアや手法を生かしてくれています。また、今の若い人たちはSNSを駆使して自分のクリエーティブな部分をその場で見せることができます。それぞれの個性を生かした世界を繰り広げているので感心しています。

古見:自分放送局がある時代ですからね。そういう自己表現する場を持っているクリエーターの人々が参加しているので、これまでの万博にはない面白いものができていると思います。そういう世代の人とも対等に意見を交わしながら、我々もがんばって作っています。

——博覧会協会と日本を代表するさまざまな業種を担う企業が関わり、一つの事業を成し遂げることは時間も労力も我々の想像以上かと思います。

山岸:博覧会史上でも希な奥行きのある体験を12の企業・団体で共に創っていくわけですが、個々で展示をすればいいというわけではありません。パビリオンとしてのストーリーをきちんと創り、その中で各者の展示を活かしていくイメージです。集合体としての強みを生かし、共有しながら同じゴールに向かっている段階です。

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未来は自分たちの手で作れる

——来館者には「幸せな都市へ」をテーマに、人工知能(AI)やデジタルを活用する次世代の都市像を考えてもらうことも狙いの一つかと思います。未来を背負っていく子どもたちにはどんな風に感じてもらいたいですか?

古見:大阪・関西万博は色々な顔を持っていると感じています。そんな中でも子どもたちには「未来は作っていける」ということを感じてもらいたいです。そして、「未来に夢をもってもらいたい、未来をもっともっと楽しんで、遊んでもらいたい」と思っています。

そのためにもまずは一人でも多くのお子さんに来館してほしいわけです。現在は教育機関にも働きかけて、遊びに来る機会を提案しています。

——開催される来年度も訪日される外国人観光客の数はさらに増えることが予想されますが、外国人が楽しめる工夫はされていますか?

古見:大阪・関西万博自体、特に外国人・日本人と意識して作られていないのでどんな人が訪れても15のアトラクションによる未来体験を楽しんでいただけると思います。訪れたみなさんが地球課題、社会課題をそれぞれ考えるきっかけになるのではないでしょうか。

山岸:会場に来てもらえると分かりますが、美しさと大きさ、そして迫力を誰もが感じることができると思いますよ。

——シアターを設けたことで、来場者が2035年の未来を覗(のぞ)き、課題解決に参加できるサイバー空間にいざなわれるそうですね。バーチャルな世界に入り込む体験によって、未来への課題もより鮮明に受け取れそうです。一体、どんな課題を持ち帰ってほしいですか?

古見:私の思いとしては、2つあります。1つ目は、日常的にもっと社会に目を向けてほしいということ。もう一つは、12者が織り成す未来へのソリューションで、未来は自分たちで作ることができるということを感じてもらえたらうれしいです。

とにかく大阪・関西という広いメディアを使って、人々が来る未来を面白がってくれたらいいなと思います。

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