—「印刷は過去のものとなった」と言われている時代に本屋を開いたのはなぜですか?
「印刷は過去のものとなった」と思ったことは一度もありません。本は依然として多くの人に読まれています。読んでいる本に物理的に触れることで生まれる感情や、今の自分にピンとくる本を探しながら本棚を見て回る楽しさなどは、ほかのものでは代用できません。そうは言うものの、印刷に投資する人は減ってきているのは事実で、それは残念ですね。
—印刷に投資するほか、紙の雑誌(『ケトル』)の編集もしていらっしゃいますが、その雑誌の哲学は何ですか?
この雑誌には1つ規則があります。掲載される記事すべてに、僕を驚かせる、僕が知らなかった事実が最低1つは入っている、ということです。編集会議の際は、ライターにそういったネタを準備しておくよう伝え、私が「それは知らなかった」という情報が入っていればその記事は掲載。逆にそうでなければ、新しいネタを考えてもらいます。
—そうすることで、面白い記事ができるのですね……。
ええ、そう願っています。読者を驚かせることができなくなると、雑誌は型にはまったものになってしまう。『ケトル』ではそうならないようにしたいと思っています。雑誌はそういう細部へのこだわりが大事だと思うのです。