Kengo Kuma | Time Out Tokyo
Photo by Katsumi Omori

インタビュー:隈研吾

新国立競技場を設計した隈研吾に聞く、東京の未来

Ili Saarinen
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東京では、変化こそ唯一の不変だともいわれている。個性のないガラスと鋼の高層ビル、そして同じようなショッピングモールのために新しい街のスペースを勝ち取ろうという争奪戦が繰り広げられ、「再開発」という表現の圧力が押し寄せる。しかし、都市発展のための控えめながらも練り上げられた野心的な取り組みには、まだまだ希望を見いだすことが可能だ。東京の新しいオリンピックスタジアムの設計者である隈研吾が提唱する、より緑にあふれ、より人間の体の大きさに合った、伝統を尊重した街づくりは、希望あるもう一つの未来を作り出す有力な手段であると言える。

今回は青山にある隈研吾のオフィスを訪ね、2020年までの準備期間とその先の未来に、彼がどのような東京の発展を期待しているか、聞いてきた。

ーあなたのオリンピックスタジアムが今後何十年も東京のシンボルとなる可能性について、どう感じていますか?

僕はスタジアムそのものよりも、周囲の緑との融合がシンボルらしいものになるのではないかと見ています。すぐそばを取り囲む明治神宮と新宿御苑もあわせて、周囲に広がる自然の緑のつながりの中心にスタジアムを据えています。

 ー今回のスタジアムとその周囲の環境にどのようなメッセージを込めようとしていますか?

伝統的なことを言えば、日本の建築は単体で目立つ建築物を造ることを目指してはいません。その代わり、建物と周辺の自然などといった関係が強調されます。今回のスタジアムでは木材が使用されており、全体の調和という点で自然と木が取り入れられていますし、地上から見上げたときも見る人を圧倒するような印象を与えないように意図して設計されています。こうすることでもう一度、日本建築のこうした要素を世界中の人に知ってもらう役に立てればと考えています。

“Kengo

ー建築家の目を通して見て、東京の未来についてどのような考えを持っていますか?

世界の都市が国際競争を繰り広げる時代では、東京は巨大な建築物で競い合おうとする考えを捨てるべきだと僕は思います。そのやり方では僕たちは勝てません。僕たちの強みはもっとほかのところにあります。緑があふれ、人に優しい通りです。そびえ立つど派手な高層ビルではありません。

 ー住民に優しい建築、ほかの言葉に言い換えると?

そうですね……世界中の都市が、たとえば中国の胡同や東南アジアの路地のような、類似する狭い路地の文化を持っています。しかし、東京の家庭的で、通る人を快く迎え入れるような心地よい裏通りはほかに類を見ないもので、保護してもっと広めるべきものです。

 ーほかに2017年に向けて楽しみにしている、東京で進行中のプロジェクトは?

現在進めている日本橋三越本店の改装の一部が2017年に完了します。僕は古い建物のリノベーションが大好きで、三越は子どものころに深い感銘を受けた記憶があります。昔の百貨店はとてもきらびやかで、そこにあるあらゆるものからオーラが放たれていました。かつての壮観さが修復されたところを見られれば嬉しいです。

ーでは、新しいショッピングモールはあまりおもしろくないと……。

新しい建築物は世界中どこでも似通った見た目になる傾向があります。グローバル化によって好みがまとまってしまい、世界中どこに行っても複合商業施設のなかに同じブランド、ときには同じレストランでさえも存在するようになりました。これは明らかに退屈です。だから街に深い関心を寄せる人々は代わりに古いものに引きつけられます。ある意味では、代わりに建てられた新しい建築物にはない、こういった力が三越のような建物にはあるわけです。

伝統を捨てるのではなく、むしろ磨くことです。僕が歌舞伎座の仕事をしたときは、古い建物を取り壊しはしましたが、もともと使われていた材料はほとんど残して、修繕してから再利用しました。僕たちが取り扱った白い大理石のブロックなど、こうした建築材料の一部は、もはや(市場で) 手に入れることさえできなくなっているものでした。

ー2020年までに完成予定のプロジェクトはいかがですか?

建設は品川駅と田町駅のあいだにできる (山手線の) 新駅でもうすぐ始まる予定です。こちらのほうは天然素材をかなり取り入れるようにしていて、屋根は木製の枠組みに大きな白いシートをその上に広げます。なので、駅全体が光を浴びて輝きます。こういうものはこれまで東京では造られたことがありませんでした。オリンピック前にオープンすることになっているので、訪れる人たちに好印象を持ってもらえることを願っています。

ー2017年に個人的に楽しみにしているものは何ですか?

オリンピックスタジアムの建設が始まることですね(インタビュー時は2016年12月で建設がはじまる前)。自分のオフィスに行く途中、毎日あの場所のすぐそばを通るので、少しずつ建物が姿を現すところを見るのが楽しみです。自分にとってはこれまでで最大のプロジェクトなので、一刻も早く、そのスケールを身体で実感したいと思います。

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