南阿蘇鉄道の高森駅から九州産交バスで15分ほど、日常の喧騒(けんそう)から離れた大杉の山の中で凛(りん)とした空気をまとう神社。約220段の石段の両脇には100基もの灯籠があり、一歩ずつ歩みを進めていくと、まるで異世界へと足を踏み入れたような不思議な気持ちになる。
具体的な時期は不明だが、相当古くに創設されたといわれており、熊野から移したものとも伝わる。御祭神としてまつるのは、日本列島を創成した物語「国生み神話」にも登場する伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)、そして阿蘇という土地を開墾した健磐龍命の荒魂とされる石君大将軍(いわぎみたいしょうぐん)だ。
石段を上りきったところにある拝殿からさらに奥へと進むと、健磐龍命の元従者である鬼八法師が蹴破ってできたという大きな風穴「穿戸磐(うげどいわ)」がある。鬼八法師の伝説によると、弓を楽しむ健磐龍命が放った弓を拾い続けていた鬼八法師だったが、次第に弓矢を拾うことに飽き、100本目の弓矢を足の指に挟んで投げ返したのだそう。それに怒った健磐龍命が鬼八法師に斬りかかり、逃げ切るために蹴破った岩壁が穿戸磐なのだそうだ。
今では、巨大な岩山を大きな穴が貫く様子がどんな困難な目標でも必ず達成できる象徴として、合格や必勝のご利益があるといわれている。ちなみに、穿戸磐を蹴破った際に飛んだとされる岩が、石段を半分ほど上ったところの鳥居付近にあるので、訪れた際はぜひチェックしてみてほしい。