タイムアウト創業者のトニー・エリオット(1947〜2020年)が長い闘病の末、2020年7月17日に死去した。73歳だった。葬儀は家族と近しい友人同僚のみで執り行われる。 トニーは先見性に富んだ出版人にしてシティーカルチャーの倦むことなき擁護者、そしていつも頼もしい味方だった。その生涯と業績は、彼を個人的に知る機会に恵まれなかった数多くの人々をも照らし続けている。
全ては1968年に始まった......
1960年代ロンドンのカルチャーに魅せられ、そこで起きているイベントの信頼できる情報が必要だと考えたトニー・エリオットは1968年、キール大学の夏季休暇中に「タイムアウト」を創設。彼はケンジントンにある母親の家のキッチンテーブルで、最初のエディションを70ポンドで制作した。その資金は、20歳になったばかりの彼のために叔母がくれた誕生日プレゼントの一部であった。
タイムアウトはほかとは一線を画したマガジンで、
Tony Elliott, photographed in 1970 by Jeremy Beadle and 2018 by Andy Parsons
1970年代
今日まで使われることになるアイコニックなタイムアウトのロゴを生み出したアートディレクターのピアース・マーチバンクも加わり、1971年、エリオットはタイムアウトを週刊に変更。
LGBT+ の権利のような政治的主張のキャンペーンを展開し、『ノッティングヒルカーニバル』の急速な発展にも寄与した上、1973年には伝説的なイギリスのコメディー集団、モンティ・パイソンが客員編集者を務めている。
Time Out covers, 1968 to 1974. Warhol: Pearce Marchbank/Peter Brookes. Churchill: Pearce Marchbank/Roger Perry
1980年代
1981年の労働争議の後、タイムアウトはタイムアウトは「ゲイ&レズビアン」やナイトライフのセクションもマガジンに加えて、ライフスタイルに改めて力を入れるようになった。
1990年代
1990年代を通して、タイムアウトはロンドンの生活とカルチャーの一部としての地位を盤石のものとした。90年代最初のインタビューはダミアン・ハースト、トレイシー・エミン、スパイスガールズで、ヤングブリティッシュアーティストの「センセーショナル」で論議を巻き起こした展示に協賛し、ブリットポップや『トレインスポッティング』の影響を受けた現象を擁護してもいる。
1995年に立ち上げられたタイムアウトニューヨークは急速な成功を収め、そのことでタイムアウトというブランドが海外でも通用することが存分に証明されたのだった。同じ年には世界各地で展開を始めただけでなく、初のウェブサイトも立ち上げている。このサイトには、オンライン時代に向かう道を照らしてくれるエキスパートたちのおすすめ情報が詰まっていたのだ。
Time Out covers from 1980 to 1996. Video games: Pearce Marchbank. Weird Sex: Kirk Teasdale. New York: Troy Word
2000年代
イスタンブールを筆頭に、ドバイやサンクトペテルブルク、
タイムアウトニューヨークが立ち上げた、
2010年代
新時代の始まりにあって、タイムアウトのeコマースのプラットフォームも立ち上げられ、ユーザーは記事を読むだけでなく、その都市のベストな体験を予約することもできるようになった。2012年にはタイムアウトロンドンは週刊のフリーペーパーとな
2014年にはタイムアウトマーケット リスボンがオープンした。これは彼の地の最良のレストラン、バー、カルチャーが一箇所に集められた、まさにタイムアウトの理念の具現化とも言うべきもので、専門的なキュレーションという新時代を切り開いた。2016年にはCEOのジュリオ・ブルーノの主導下で、タイムアウトグループはAIM株式市場に上場、「TMO」のティッカーシンボル(※1)で将来のさらなる投資のために取引を行う。フランチャイズだったオーストラリア、スペイン、香港、
※1 ティッカーシンボルは株式市場で企業などを識別するために使われる符丁で、多くは会社名を短縮した形が採用される。「TMO」はTime Outの短縮形。
Time Out covers from around the world. Chicago: Stephen Meierding. Barcelona: Diego Piccininno. Hong Kong: Phoebe Cheng
未来へ
50年以上をかけてタイムアウトはグローバルメディアとなり、315都市58カ国のコンテンツを網羅して、
収益の大部分は今やデジタルによるものであるが、印刷物は依然として非常に熱心な読者に向けた重要な存在であり続けている。マガジンは40都市で入手可能で、雑誌とデジタルの両軸でタイムアウトブランドが成功を収めている
Time Out Market Lisbon
タイムアウトのハイクオリティーなコンテンツは、経験を積んだジ
この成功に続く2019年、マイアミ、ニューヨーク、ボストン、モントリオール、シカゴといった北アメリカの5都市にタイムアウトマーケットが開業。ドバイ、ロンドン、プラハなど、ほかのグローバル都市でも、
多くのことが変化しているが、タイムアウトのミッションは、