かつては湖だったといわれる阿蘇のカルデラ。神話では、カルデラの水を流し、人々が住めるよう村や田畑を開いたのが、健磐龍命(たけいわたつのみこと)だと伝わる。その健磐龍命と家族神12神をまつるのがここ「阿蘇神社」だ。全国に約500社ある「阿蘇神社」の総本社でもある。
神殿や楼門などの6棟は、国重要文化財に指定。九州最大の規模を誇る楼門は、「日本三大楼門」の一つともいわれている。2016年の熊本地震で大きな被害を受けたが、現在復旧に向け作業が進められている(2023年9月時点で楼門のみが修繕中。楼門の復旧工事は2023年12月までを予定)。
阿蘇神社のユニークな点は、人格神(健磐龍命)と火山神(中岳火口)が一体化していることだ。火山の噴火は天下の凶兆として恐れられてきたことから、その噴火を示唆する中岳火口の湯だまりは神の宿る池と崇められ、阿蘇神のご神体とされてきた。「御池参り」として火口へ登山する人もおり、この地では健磐龍命と火口の両方を信仰するようになったのだという。
現在でも、阿蘇神社の宮司が阿蘇山の平穏を願って火口に御幣(ごへい)を投げ入れる「火口鎮めの儀」を毎年行っていたり、参道が中岳火口を向くように作られたことから「横参道」という全国的にも珍しい形になっていたりと、今でも阿蘇神社と阿蘇山のつながりは深い。現地を訪れれば、そういった結びつきも肌で感じられるだろう。
神社のある一の宮町は、古来、地下水の噴出する「清泉の町」として知られている。中でも、横参道沿いにある「神の泉」は、神域に湧き出ることから不老長寿の水としても知られているので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。