雑誌界では、ターゲットは絞れば絞るほど売れると言われている。絞ることによってテーマが明確になり、そのためターゲットの近似値の層までも巻き込むことができるからである。
今回取り上げる雑誌『昭和40年男』は、浦沢直樹による大ヒットコミック『20世紀少年』に比べて著しく狭い時間をタイトルに冠した雑誌だ。
これまでにも世代をターゲットにした雑誌は山ほど存在してきた。リクルートの『R25』も、まさにそれだ。しかし、潔くばっさりと、たったの1年だけに絞った雑誌は本誌が初めてだろう。
リリースされた当時は、出版界でもそれほど騒がれた記憶はない。しかし、書店で手にとった私も「え? 昭和40年だけ? さすがにここまで絞り込んだら売れないんじゃないか……。俺は嬉しいけど」と考えた。だが、本誌がコンビニ店頭に並ぶようになると、出版関係者でも同学年の知人から「おい、『昭和40年男』って雑誌、知ってる?」と声がかかるようになった。
ターゲット年代を絞りに絞ることで「俺の雑誌だ」とオヤジたちの心を射抜いた。飲み屋でそんな話を始めようものなら、昭和42年生まれの輩まで「あ、実は私も買いました」などとのたまう。編集者の思うつぼだ。