—どういった経緯で、徳島県にフードハブ ・プロジェクトを設立されたのですか?
始まりのきっかけは、 神山町地方創生戦略を考えるワーキンググループでした。2015年7月から約半年間、神山町役場と住民が一体となって行われたプロジェクトで、私は町民としてこのワーキンググループに参加させてもらいました。終了後も、取り組みを継続していくために、フードハブの起業の話が持ち上がったんです。役場からの後押しもあり、2016年4月に、神山町役場と神山つなぐ公社、私が部長を務める、東京代々木にある広告制作会社モノサスが共同で出資して設立しました。
―どういったミッションを掲げておられますか?
ひとつは、地域内での経済循環を強固にしていくこと。地方では消費する場所が限られるため、資源もお金も地域から流出していくばかりなんですよ。人材も資源だとすると、地方で育てたもの全てが、東京などの大都市に吸い上げられてしまう構造になっている。だから、地域内で資源を循環させる仕組みづくりに注力しています。
例えば、神山町にあるコンビニでパンを買って食べると、原材料は県外のものである上に、利益は外部の大手企業に流れていきます。しかし、地域のパン職人が、地元の小麦で作ったパンを買える店があれば、地域内で循環が生まれますよね。
もうひとつは、町内に新規就業者を迎えて、定着させること。神山町の農業従事者の平均年齢は71才。業界の継続を考えると笑えない数字なので、新しい事業者を育て、定住してもらえる環境を整えるのは急務です。
―具体的にどのような取り組みされているのですか。
現在は、地元食材を積極的に使用する食堂、かま屋や、地元の在来小麦で作ったパンを販売するかまパン&ストアなど、2店舗を町内で運営するほか、地域の教育機関と連携して食育にも力を入れています。
食堂とパン屋はオープンから2年が経ち、赤ちゃんからご老人まで幅広い年齢層の方が来店してくださるようになりました。移住者の方も多く、コミュニティのハブのような場所でもあると思います。かま屋では、地元の食材をどのくらい取り入れたかがわかる「産食率」という数値を出して公開しています。昨年の平均は約54パーセントでした。そのように、地域の人にもフードハブの取り組みが伝わるようにしています。