—『きゃりーぱみゅぱみゅアートワークス 2011-2016 | STEVE NAKAMURA』にはスティーブさんが手がけたきゃりーぱみゅぱみゅのビジュアル約300点が収録されていますが、作品をまとめて見渡してみて、どんな印象でしたか。
スティーブ:まずはこんなにいっぱいやったんだ、ということ。ひとつひとつ、その場では分からないけれど、ものすごくエネルギーを使ったなと思う。あと、全体をまとめてみると流れがあったんだなと。僕は(制作において)アドリブを大切にしているんです。きゃりーとの仕事では、その場でのアイデアを実験、試すような作品が多かった気がした。それが全部まとまったものを観ると、ドキュメントでもあり、ひとつの作品でもあると感じたな。
—制作時に意図していたわけではないけれど、流れができているのを感じたと。
スティーブ:きゃりーの作品は、時間がない中で思い浮かんだものを形にしているので完璧じゃなくても、アイデアが伝わることが大事。いちいち振り返ることはしない。完璧に作り上げる仕事もあるけれど、きゃりーに関しては、アドリブ感の方が大事だったな。
—彼女の第一印象は、覚えていますか。
スティーブ:初対面する前に、彼女のブログを見せてもらっていたんですが、ビジュアルの面で見ると、ほかの女の子より見る感覚が明らかに変わっていた。だから面白く作れる可能性を感じた。
—スティーブさん自身の手法と、相性が良いと思ったわけですか。
スティーブ:うん。彼女の計算されていないところ、狙っていないところが、僕にとって大事なポイント。狙い過ぎていないようなビジュアルが好きです。
—幅広い表現を試すことができそうという期待があった?
スティーブ:というよりは、彼女がいいように驚くアイデアを持ってくるようにしています。彼女に合わないものを作ってやってもらっても、楽しくならないし、それは表情にも出てしまう。だから、半分精神的なことかもしれない。あとは、前にやったものとは被らないようにする。それは本人のためでもあり、自分の作品ですからね。気持ちが入らないと、良いものって作れないから。
―彼女のアートワークと広告を作るプロセスはどう違いますか?
スティーブ:広告の世界だと、マーケティングをして、今これが流行っているからとか、若い人がどうとか、計算で動くけど、僕がきゃりーを手がけるときはそういうことには、乗らない。自分がその場の面白いと思うネタをすぐ形にする。