たこりき
Photo: Kyoko Otsuka(karamomo)
Photo: Kyoko Otsuka(karamomo)

真・大阪名物ガイド

定番グルメだけじゃない、「おいしいものがある場所を目指す」旅をしよう

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その土地ならではのローカルフードは、旅の楽しみとして欠かせない一つだ。しかしながら「お取り寄せ」が充実した今、ただ単に名物を味わうだけではもの足りない。そんなフーディーのために、ここでは「真・大阪名物」として、「おいしいものがある場所を目指す」旅を提案したい。

難波でしか味わえない1店舗のみで営業を続ける豚まんの店や、革新的なコース料理、店主の人柄が現れたラブリーなビーガンスイーツなど、ここでは定番だけではない大阪名物を紹介する。大阪でしか体験できない味わいをかみ締めよう。

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1844(弘化元)年、関東煮(大阪発のおでん)と燗酒(あつかん)を味わう「上燗屋」として始まり、日本最古のおでん屋ともいわれる「たこ梅」。一大観光地としてにぎわいを見せる道頓堀の中でも、威風堂々としたたたずまいに、浪花の老舗店としての貫禄を感じさせる。

店内でまず目に飛び込んでくるのは、あめ色に光る年季の入ったコの字カウンターとグツグツと煮えるおでん鍋だ。創業以来注ぎ足し続けるだしで炊く関東煮の「ネタ」は、「大根」や「こんにゃく」「ごぼう天」といった定番から「菊菜」や「子持ち烏賊」などの季節ものまで、約20種を用意する。

鍋は常に沸騰させて炊くことで、食材の風味を残しながらうま味を最大限に引き出す。名物はタコを柔らかく炊いた「たこ甘露煮」(600円、以下全て税込み)。かむほどに味わいが増すクジラの舌の関東煮「サエズリ」(900円)といった、創業者が考案したメニューもおすすめだ。

ネタの価格別に色分けした札を注文ごとに目の前に置くという、創業時から続く独特な会計システムも趣きがある。近年はオーダーのコツをメニュー表などで案内し、初心者向けの「関東煮セット」も提案。常連も一見さんも分け隔てなく出迎えることで、伝統を未来につないでいる。

大阪寿司の代名詞的一軒として知られ「箱寿司」発祥の地として畏敬される本町の老舗が「吉野寿司」だ。創業1841年、170年を超える歴史を誇る。今ではオフィス街の一等地になってしまった当地だが、ビル風になびく趣あるのれんをくぐる客は後を絶たない。

7代目となる店主、橋本卓児は大阪寿司の魅力をこう語る。「それは時間をかけた下仕事の芸術です。タイは塩締めし1日寝かせてうま味を引き出す。シイタケは5時間ゆっくりと炊いた後、1日寝かせて味を馴染ませる。そんな無数の手間と、長い時間が小さな箱に凝縮されているのです」

名物である「箱寿司」(1,760円、税込み)は、 戦前から継ぎ足されるたれで焼く「活け穴子」、瀬戸内の小鯛(こだい)、厚焼き卵、エビ、シイタケ、焼きのりなどを木枠の箱に入れて押した寿司。心華やぐ色鮮やかさに加え、かみしめるごとに寿司飯とネタが口で一体化し、深々と響くうま味は、まさに歴史に磨かれた、至高の名人芸のたまものである。

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大阪人が胸を張って勧められるたこ焼き専門店の一つ。大阪の食文化を守り伝える「こんぶ土居」の「天然真昆布」と「久間田商店」のかつお節、まぐろ節からだしを取り、伊勢産のタコを湯がいて使う。小麦粉、卵といった素材も全て吟味して焼き上げる「たこ焼き」は、ソースを付けなくてもうま味十分。大阪で親しまれてきた小ぶりのサイズもちょうどいい。

「たこ焼き 一人前」(14個、1,100円、税込み)は、一般的な相場からすればやや割高に感じられるかもしれない。実際、店頭にも「ちょっと高いです」という断り書きがある。「高級店を目指してるつもりは全然ないんやけど、昔ながらの当たり前のことをやろうとしたらどうしてもこの値段に」とは店主の言葉である。

たしかに、国産のタコでさえ「もはや高級食材」という今の時代。それでも、店主が子どもの頃に食べていた「当たり前のたこ焼き」を素材から追求することで、大阪人も納得のたこ焼き店として多くの人に愛されている。

なお、ナチュールワインをはじめとするドリンクメニューも充実して、たこ焼きに合わせて昼から1杯、というのもこの店では馴染みの光景。「たこやきグラタン」などのアレンジメニューと合わせれば、飲み過ぎ必至だ。

  • 中華料理

谷町の住宅街にひっそりとたたずむ中国料理店。週末のみの営業で、ディナーは1組限定(前日までに要予約)で提供している。

ランチメニューは、セットで1,600〜2,000円程度。オーガニック野菜、肉、魚を中心にした3種の選択肢のほか、一日一食限定の料理がある。驚くのは「本当に全部仕込んでいるのか?」と疑いたくなるほどの品数の豊富さだ。

取材時は「天然エビと剣先イカ、夏野菜炒め」(2,000円、以下全て税込み)、「鯛の天ぷら甘酢あんかけ」(1,900円)、「豚の角煮とゴーヤ、夏野菜ピリ辛炒め」(1,900円)に加え、一食限定では「小鯛のピリ辛四川風」(1,900円)、「茄子のピリ辛香り煮」(1,600円)など、トータルで12種類がオンメニュー。「迷ってもらいたい」という店主のサービス精神のたまものである。

「片口鰯のマリネ」「海鮮蒸し餃子」「蒸茄子の夏野菜ソース」「にんじんとセロリの山椒風味」「自家製柴漬け」「さつまいものつるの胡麻和え」(全て取材時)といったセットの小鉢や付け合わせも充実していて、細部まで行き届いた仕事ぶりがうかがえる。「おいしいものを食べてもらいたいから、やれることは全てやる」という気持ちが注ぎ込まれた食事で、腹も心も満たされてみては。

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「住居と個人商店のバランスが良いエリア」こと谷町六丁目には、昨今、若者たちが集う店が増えつつある。そんなムーブメントの要ともいえる「大衆食堂スタンドそのだ」の2号店として2018年にオープンしたのが、ここ「台風飯店」だ。

「台風が通る道のりの国の料理」をテーマに、タイ、ベトナム、台湾、沖縄の料理をヒントにしたメニューを提供している。店内は、東南アジアの食堂のような雰囲気。DJでもあるオーナーが同店用にミックスした音楽が響き、壁にはメニューの短冊がずらりと並ぶ。深夜2時までにぎわっているが、ランチタイムには子ども連れも多い。

まずは名物の「バイスサワー」(385円、以下全て税込み)で乾杯だ。次は、手のひら大の台湾唐揚げ「チョキチョキチーパイ」(605円)を、ハサミでチョキチョキしよう。ざくっとした衣に4種のスパイスをまぶした濃厚な唐揚げは、梅しそ味のバイスサワーとの相性も抜群だ。バイスサワーは1人3杯までが推奨摂取量。飲み過ぎ注意である。

「もやしのソムタム風」(385円)や「台湾タコス」(748円)など、次々注文しても全て1,000円以下というのが心強い。最後は「ルーローハン」(385円)や、中華麺で作ったモチモチの「パッタイ」(715円)で締めれば間違いない。

夜に輝く看板に描かれる店のロゴはイラストレーターのNONCHELEEEによるもの。マドラーやTシャツなどオリジナルアイテムが続々と誕生している。楽しい記憶と一緒に、こうしたアイテムもぜひ手に入れたい。

  • ショッピング

1940年創業、箕面市の銘菓として知られる「もみじの天ぷら」の老舗店。衣を付けた葉にまんべんなく火が通るように約20分くるくると返しながらじっくりと油で揚げられた「もみじの天ぷら」を1年中販売している(11〜12月の繁忙期は電話での完全予約制で販売)。

「もみじの天ぷら」に用いられるのは、観賞用として馴染みのある「イロハモミジ」ではなく、「一行寺楓」という食用のもの。柔らかく歯ざわりのいい食感をさらに追求するべく、1985年ごろから同店が所有する山林で「一行寺楓」を木から無農薬栽培で育てる取り組みをスタートした。毎年、黄色く色づいた頃合いで葉を収穫、水洗いして1年以上塩漬けに。寝かせた葉を丁寧に塩抜きし、1枚ずつ天ぷらにして提供している。

2020年には「もみじ茶」を用いたソフトクリームや「箕面ビール」なども味わえる、カフェスペースを併設した「小紅(Cobeni)」を本店のすぐそばにオープン。本店では「プレーン」のみの提供だが、ここでは「グリーンティー味」や「黒糖味」「七味味」など、新感覚の「もみじの天ぷら」も揃えている。

小紅では、電話予約をせずに商品を購入することもできるが、前日までの予約分で店頭販売分がなくなってしまうこともしばしば。事前に予約をしておくのが安心である。

創業時から受け継がれる伝統の製法と技術で手間ひま惜しまずに作られた「もみじの天ぷら」は、かりんとうのような優しい甘さ。一度口にすれば、きっと手が止まらなくなるはずだ。

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  • ショッピング

京阪私市線の郡津駅前から13分ほど歩いた先に、暖炉がよく似合うヨーロッパの田舎町のような建物が見えてくる。2008年のオープン以来、焼き菓子やケーキを販売し、地域に愛され続けてきた洋菓子店「ルラシオン デュ  クール アミエル(relation de coeur amielle)」だ。

元々は私市線交野駅前に店を構えていたが、2016年に現在の場所へと移転。名物は手触り、舌触りともにフワッと感がたまらない生菓子「アミエル」。そのほか、地元である交野市の山野酒造が作ったとろとろの酒かすを使った「酒かすマドレーヌ」、私市にある茨木養蜂園のアカシアはちみつを使った「きさいちハチミツロール」など甘過ぎない上品な菓子が揃う。

オーナーが看板メニューとして推すのは、フランスの伝統菓子である「ガレット・デ・ロワ」だ。シンプルな作りとその形や模様にほれ込み、試行錯誤を重ね、同店が考える最高のものを作り上げた。3日前にオーダーすれば季節を問わず用意できる。訪れる際には、ぜひ予約してほしい。

北新地駅近くにあるイノベーティブ・フュージョンレストラン。完全予約制で、洗練された店内では革新的なコース料理を提供している。

シェフの小川大喜が手がけるのは「素材×素材」の無限の可能性を追究し、創造し続ける料理。フレンチの場合、素材を重ねて奥深い味わいを出していくことが多いが、小川が目指すのはそれぞれの素材本来の味わいが生きた料理だ。用いる食材自体は少なくとも、旬のものを用いたり、柔軟な発想で素材同士を組み合わせることで、独創的な一品を生み出している。

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心斎橋駅から徒歩10分ほどの場所にある、ダイニングを併設したアーバンワイナリー。2階のダイニングフロアから見下ろせるのは、1階にあるワイン醸造所の巨大タンク。まさにその場で、発酵、熟成しているワインの息遣いを感じながら食事が楽しめる。

サーブされるグラスワインは、ヨーロッパ各国産も含め約15種類(550円から)で、そのうち約3分の1が日本ワイン。もちろん、1階の醸造所で造られた自社ワインも欠かさずラインアップされる。自社ワインはボトルでの購入も可能だ。

前菜からパスタ、メインまで充実のイタリアンのアラカルトメニューは、どれもが超一流トラットリアのレベルにある。ワインのみならず、料理にも大いに期待して、島之内に向かおう。

本場ナポリで行われた「ナポリピッツァ職人世界大会」でインターナショナルカップの優勝に輝く(2016年)など、「ナポリピッツァ」の大会で輝かしい成績を収めてきた一軒。

オーナーの山口真希は「ナポリピッツァを極めるには薪窯焼きは大前提。その上で素材一つ一つの吟味が本当に大切」と語り、水牛モッツァレラだけでなく、ツナなどもイタリア産にこだわっている。

バリエーションは28種類で、「マルゲリータ」などの定番だけでなく、揚げなすが乗った「ピッツァメランザーネ」、チョコレートやバニラの入った「ドルチェピッツァ」なども用意する。2種類のピッツァを選びハーフアンドハーフで注文できるので、 初めてのピッツァにも気軽にトライしてみよう。

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  • ショッピング

「ビーガンスイーツ」というと色合いもヘルシーなイメージが強い。しかしその概念を覆してくれるのが、アメリカンスタイルのビーガンスイーツを提供する「カネリータ・スイーツ」だ。

同店のショーウインドーに並ぶのは、カラフルなケーキやドーナツにカップケーキ。水色、ピンク、グリーンなどに着色したクリームの色使いはもちろんのこと、ブタの顔をあしらった「スプリンクルケーキ」や、ニンジンが描かれた「キャロットケーキ」など、そのラブリーなデザインにも胸をきゅっとつかまれる。

もちろん、牛乳やバター、卵などの動物性食品は一切使用していない。もっちりとした生地は甘さも控えめで、さっぱりと味わえるのも魅力だ。

  • ショッピング

大阪の豚まんといえば「551蓬莱」が有名だが、もっとローカルさを追求したい人は「二見の豚まん」を訪れよう。南海なんば駅から歩いて5分ほど、なんば南海通りに店を構える「二見の豚まん」は、この1店舗のみで営業する豚まんの店で、商品も「手造り豚まん」だけ。支店やオンラインでの販売は行っていないため、まさにこの場所でしか楽しめない味なのだ。

蒸したてで提供される「手造り豚まん」は、一般的な豚まんの1.5倍はあるであろう大きさにまず驚く。生地は蒸しパンのようにふわふわで、タマネギをたっぷり使ったあんは優しい甘さが印象的だ。

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いかにも大阪の下町という此花の住宅地を抜けると、市内では珍しい漁港が現れる。その伝法漁港に隣接するのが「てっちり 克政」だ。

ここは6,050円からさばきたてのフグをコースで堪能できる、知る人ぞ知る「てっちり」(フグの鍋料理)の名店。のれんをくぐれば、底抜けに明るいおかみさんが出迎えてくれる。

まず、てっさ(フグ刺し)の歯応えに思わず「おっ」とうなる。カリッと揚がった唐揚げもとてもジューシーで、追加注文が多いという。鍋の具材が運ばれてきて、人気の理由が分かった。ここで出されるフグは鮮度抜群なのだ。それゆえに、鍋用の身は1切れずつ鍋にサッとくぐらせ、表面が白くなったくらいで食べるのがこの店のおすすめ。

夏場(6〜9月ごろ)限定で楽しめるハモのコースも必食だ。

  • 焼き鳥

ミシュラン一つ星を獲得している焼き鳥店。地元の人も足繁く通う一軒だ。店主が素材と真摯(しんし)に向き合って焼き上げる焼き鳥は、もちろん絶品。肉の焼き加減が絶妙で、どんなに疲れていても、ハッと目が覚めてしまうような感動がある。

予約をしておくのがベターだが、予約が取れなかった場合は金曜日を狙おう。金曜日だけは予約を受け付けずに営業しているので、本当に運の良い人だけが入店できる。

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約100の飲食店が軒を連ねる、新梅田食道街にある串カツの名店。カウンターに置かれた銀のトレーには次から次へと揚げたての串カツが並ぶ。ここから好きなものを自由に取り、ソースに付けて食べるというシステムだ。

ソースの2度付けは禁止なので、ソースを足したい場合は、キャベツですくって串カツにかけよう。串カツは1本100円(税込み)からとリーズナブル。スタンディングのみなので、サクッと食べたい時にもうってつけだ。

南船場の​​路地裏に残された希少な町家に、飲食店舗が集まる施設「船場裏路地」。町家とは、かつての商家や職人の住まいで、店舗と住居空間を兼ね備えた住宅のことだ。

コンブの老舗「小倉屋山本」がだしにこだわった料理を提供する「だし処 船場山本」のほか、紀州備長炭で鹿児島の地鶏を焼き上げた焼き鳥と一品料理の「焼鳥 サイヒ」が入居。ミシュランビブグルマンを獲得した女性寿司職人が握る江戸前寿司の「鮨とよたか」、会員制でありながら肩肘張らない雰囲気が魅力のバー「よすか」の個性あふれる4店舗は、ついついはしごして楽しんでしまいそうだ。食を通じた、上質な一夜を楽しみたい。

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  • ミュージアム

この地を訪れたならば、大阪の食文化の基礎を支える「昆布」を知らずには帰れない。「大阪昆布ミュージアム」は、空堀商店街の老舗昆布店「こんぶ土居」が2022年、店のすぐ近くに築き上げた昆布がテーマのミュージアムだ。

1階で見られるのは、北海道・道南の「昆布漁」で使われていた漁具などの展示や、漁業の様子を収めたパネルの数々。不作が続く「天然真昆布」の窮状を知ることができ、また大阪の食文化を今一度見つめ直すことができる。

ほかにも江戸時代の北前船の航路の話、なぜ大阪で昆布が使われるようになったのかなど、大阪と昆布の関係性も学べる。1階の床にある「長い昆布」の展示も必見だ。

開館は不定期なので、電話やメールで確認をしてからが望ましい。帰りにはこんぶ土居を訪れ、大阪土産をしっかりと手に入れて、締めくくろう。

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