一番みんなが知りたがっている質問から始めましょう。和牛は、本当にマッサージを受けたり、ビールを飲んだり、クラシック音楽を聴いているのですか。
フェデリコ:和牛たちが家族の一員のように扱われているのは本当ですし、実際、飼育している和牛に音楽を聴かせる生産者に会ったこともあります。しかし、ほとんどは誤解です。和牛の質の良さは、その遺伝子と与えられている高品質の飼料、それから、一人一人の生産者が完璧なサイズと姿形の牛を創り出すために、独自に開発した複雑なプロセスに根差しています。
浜田:くわえて、和牛が普通の牛よりも長く生きることが風味の向上に大きく関係しています。和牛は約30ヶ月、ときに35ヶ月生きますが、たとえばアメリカの牛は15から22ヶ月で屠殺されます。
なるほど、和牛たちは人生を謳歌しているのですね。では、それが和牛があんなに美味しい理由なのでしょうか?
フェデリコ:それももちろん理由の一つです。ですが、和牛は脂肪がとても多いことで知られており、それが一番の違いです。どの生産者も、牛が理想の大きさに育ち、完璧な霜降りになるような飼料の配合を見つけるのにとても苦労しています。
浜田:和牛の美味しさは脂肪にあります。それは、とても独特なことです。チャーハンなど、ほかの料理にも使うことができるのですが、この脂肪を使うと味の質が変わるんです。格段に美味しくなるんですよ。
フェデリコ:そう、まるでバターのようなんです。和牛の脂肪は融点がとても低く、28度で溶けます。
翻訳:浅井桃子
なぜ和牛がこんなにも崇拝されているのか。その理由を突き止めるため、タイムアウト東京はパークハイアット東京のシェフ、フェデリコ・ハインツマンと、「和牛マスター」浜田寿人にインタビューを行った。「和牛はただの肉ではありません。日本を有名たらしめているもの……伝統、品質、信念、そのすべての結晶なのです」と、シェフのフェデリコ・ハインツマンは言う。アルゼンチン出身の彼は、パークハイアット東京のNEW YORK GRILLで腕をふるい、客のために垂涎ものの和牛料理を提供している。日本の和牛生産者が世界に和牛を輸出する際のサポートを行っている株式会社VIVA JAPANの創立者にして「和牛マスター」の浜田寿人にも加わってもらい、フェデリコのレストランにてインタビューを敢行した。