開催までにどれだけ障がい者スポーツを一般に普及させられるかにかかっている
松岡:僕はライフワークのような形でオリンピック・パラリンピックを応援し続けていますが、パラリンピックについて調べてみると、競技内容やルールなど、知らないことがたくさんある。しっかり勉強しようと改めて感じています。
澤邊:障がい者スポーツって、目にする機会が少ないですからね。いわばパラリンピックについてはほとんどの人がビギナーなんです。触れる
きっかけがないから、楽しみ方も分からない。この点には大きな課題を感じます。
松岡:障がい者スポーツって、実際に観戦してみると、すごく面白いじゃないですか。澤邊さんにとっての魅力は何ですか。
澤邊:まずスポーツ用具の技術革新ですね。車いすや義足の素材、形状などが日々進化し、記録もどんどん更新されています。近い将来、ウサイン・ボルトより速く走る義足のパラリンピアンが登場する可能性は十分あるし、東京大会でも驚くような逆転現象が起きるかもしれません。そんな「超人感」を体験するという楽しみ方もあると思います。
松岡:そうなると「障がい者のためのもの」と思われている障がい者スポーツのあり方も、変化していきそうですね。例えば車いすテニスを実際にやってみると、戦略性やゲーム性が高く、健常者にとってもすごく面白い。障がい者スポーツの醍醐味(だいごみ)がもっと一般に知られれば、障がいの有無を超えて誰もが楽しめるものとして、裾野が広がる気がします。
澤邊:まさにそれが重要です。パラリンピックの成功は、開催までにどれだけ障がい者スポーツを一般に普及させられるかにかかっています。昨年、私たちは「サイバーウィル」「サイバーボッチャ」というデジタルゲームを開発しました。「サイバーウィル」は、車いすマラソンやレースを楽しく擬似体験できるVR(仮想現実)マシンです。タイヤに付いたハンドリムを回して映像空間を駆け抜け、タイムトライアルに挑戦できます。またパラ競技のボッチャに、映像と音の演出などを加えてエンタメ化したのが「サイバーボッチャ」です。
ゲームセンターやバーなどに設置し、一般の人に遊んでもらうのが狙いです。「ちょっとボッチャしに行こうか」と気軽に楽しめる日常を作りたいんです。それがファンを作る一番の近道だから。収益の一部は、日本ボッチャ協会に寄付され、選手育成などに充てられます。
松岡:ゲームを純粋に楽しむことが、結果的に障がい者スポーツへの貢献につながるわけですね。
澤邊:パラリンピックも同じで、会場に足を運んで「かっこいい」「面白い」という感覚で楽しむことが、最大の応援になると思うんですよ。