バイオテクノロジーを市民にひらく「BioClub」が東京に生まれた理由
遺伝子改変やクローン技術などに代表されるバイオテクノロジー。実は近年、実験機材の進歩や低価格化により、個人でもバイオテクノロジーに手軽にアクセスできる環境が整いつつある。
「バイオを使って私たちは何ができるのか。バイオを正しく扱うにはどんなルールが必要なのか。そして、バイオがもたらす未来とは何なのか。海外では、そういった事柄を多様な属性の人々がオープンに議論し、新しい視点を模索するコミュニティが既に数多く存在しています。だからこそ、東京にもそのような場所が必要だと考えました」。
そう話すのは、アーティストで東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの研究員も務めるゲオアグ・トレメル(写真右から2人目)だ。「ITの進歩で世界が一変したように、バイオも世界を変革する可能性を秘めている」と考える彼は、同じ思いを持つクリエイティブ・エージェンシーのロフトワーク代表取締役の林千晶、バイオアーティストの福原志保らとともに「BioClub(バイオクラブ)」を設立した。
2016年2月には、遺伝子組み換えや微生物を扱う実験が可能なバイオラボも完成。現在は、定期的なワークショップやイベントを通じてバイオに関する知見を共有するほか、ラボでは個々のメンバーが細胞培養から発酵食品作りまでマイペースに実験を続ける。国内外のバイオコミュニティとの交流も盛んだ。
「BioClubは技術や知識を学ぶだけの場ではありません。メンバーそれぞれが『生命とは何か』を問い直し、安全かつ次世代に配慮したバイオのあり方を考えることも重要なテーマの一つです。誰もがバイオを学び、安全に楽しむ、そんな場を目指していきたいですね」(トレメル)