Toyota taxi

東京をひらくヒト・モノ・コト

多様性豊かな街づくりに向けた最新の取り組み

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in collaboration with 日経マガジンFUTURECITY

1300万人を超える人々が暮らすメガシティ、東京。そこでは日々、街をより良くするためのサービスやプロダクトが生まれ、さまざまな取り組みが続けられている。東京の未来をインスパイアする、重要なファクターの宝庫である。ここでは東京のオープン化を理解するために知っておきたいヒト・モノ・コトを、独自にピックアップして紹介する。

デザインとエンジニアリングの越境行為がイノベーションを生む

ものづくりにイノベーションを起こす手法として注目される「プロトタイピング」。日本においてこの分野をけん引するひとりが、気鋭のクリエイター集団「タクラム・デザイン・エンジニアリング」代表の田川欣哉だ。「プロトタイピングとは、試作を繰り返し、短期間で製品のベースを生み出すこと。言わば、まだ世界に存在しないモノを形にする正解のないものづくりと言うことができます」。田川は東京でエンジニアリングを、その後ロンドンでデザインを学んだ。現在はデザインと工学の深い知見をもとに、両者の視点から課題にアプローチする「デザイン・エンジニア」を名乗る。

「技術革新のスピードが加速する昨今、製品やサービス自体の仕組みもどんどん複雑になっています。そうなると、従来のように専門家が分業する体制では間に合わない。複数のスキルを持つひとりの人間が、異なる領域を振り子のように行き来しながら、統合的にものづくりを行う重要性がますます高まっていると感じています」。

だが田川は、こうした新しいものづくりを行う土壌が日本にはまだ足りないと指摘する。「日本社会は極端に同質性が高く、構造的にイノベーションが起きにくい。そんな状況を変えるべく、東京大学とイギリスのロイヤル カレッジ オブ アート(RCA)と共同で『RCA-IISデザインラボ』を設立しました」。ラボは東京大学生産技術研究所内にあり、外部企業を招いたワークショップも行っている。「現在、多国籍な生徒や教師陣が集まり、先端的な研究に取り組んでいます。ここをアメリカの『MITメディアラボ』のような世界最先端の研究機関に育てることが大きな目標です」

田川欣哉(たがわ きんや)

1976年、東京都生まれ。東京大学、イギリスロイヤル カレッジ オブ アート修士課程修了。2006年より現職。主な仕事に、日本政府の地域経済分析システム「RESAS」プロトタイピング、NHK Eテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなど。

2017年度、本格運用するトヨタの次世代タクシー

2013年の東京モーターショーに参考モデルを出品したトヨタの次世代タクシーが、2017年度中に発売される。安全性や環境への配慮はもちろん、高齢者や障害者に優しいバリアフリー化が大きなポイントだ。

スライド式になった乗降口にスロープをセットすれば車いすのまま乗車することができ、後部シートに移乗する場合は車いすを畳んで後部トランクにも収納できる。トヨタの現行タクシーのボトムエンドのモデル「コンフォート」よりも全高が215ミリ、室内高も約75ミリ高くなっているため、高齢者や妊婦が楽に乗り降りできるだけでなく、身体の大きな外国人が窮屈そうに体を丸める必要もなくなりそうだ。

トヨタは、藍染やサッカー日本代表のサムライブルーなど、日本文化につながりの深い藍色を「深藍=koiai」と命名し、ボディカラーに搭載。次世代タクシーの東京におけるアイコン化を提案する。ニューヨークのイエローキャブやロンドンのブラックキャブのように、深藍カラーが路上を駆け巡る東京の風景を歓迎したい。

※写真:従来のどの車型とも違う、ユニバーサルデザインを 取り入れた新しいタクシー専用車

軽量で安価な「3Dプリント義足」が叶える快適な旅

義足ユーザーにとって、旅行はしばしば心理的な負担を伴う。例えば、通常義足には金属が使われているため、温泉や海は錆(さ)びの一因になるからだ。空港の保安検査場では、金属部品がセンサーに反応することも少なくない。

そんな義足歩行者の「旅のハードル」を解消するため、全日本空輸(ANA)と合成ゴム大手のJSR、ハードウェアベンチャーのSHCデザインが共同開発しているのが「3Dプリント義足」だ。SHCデザインの3Dモデリング技術によって作成されたデータをもとに、JSRが開発した特殊ポリマーを使って出力する。金属を使わないため、従来品よりかなり軽量なのが特徴だ。ANAは空港における実証実験やサービス提供検証などで協力していく。現在、SHCデザインは慶應義塾大学と協力し、実用化に向けた耐久性や安全性の評価を実施中だ。「高価な特注品」という義足のイメージを覆す3Dプリント義足がもたらすイノベーションに期待したい。問い合わせは、SHCデザイン info@shc-design.com まで。

※画像:全パーツ3D完全出力の義足

行政や企業が動きた出す、LGBTを取り巻く環境整備

国際オリンピック委員会(IOC)は、201412月に開催された総会で、性的指向による差別の禁止をオリンピック憲章に盛り込むことを決議した。2020年にオリンピック・パラリンピックを開催する東京は、単に「差別をなくそう」というだけでなく、LGBT(性的少数者)の人々が暮らしやすい社会をつくるための法整備をしていかなければいけないのだ。日本に暮らすLGBTを取り巻く環境においてエポックメイキングな出来事といえば、20154月に渋谷区が全国で初めて制定した「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」だろう。世田谷区では「パートナーシップ宣誓書受領証」を同年11月に施行。このような動きに対応し、ライフネット生命が同性パートナーを死亡保険金受取人として認めるプランを発売、3大携帯キャリアも同性パートナーも家族割の対象にするなど、企業も動きつつある。とはいえ、全州で同性婚が合憲とされたアメリカに比べると、まだ小さな一歩だ。国際都市東京都が大きな変革を起こすことを期待したい。

※写真:Tokyo Rainbow Pride 2017のパレード風景

日経マガジンFUTURECITY創刊号から転載

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