1. パラリンピアンがオリンピアンの記録を超える?
2015年の世界パラ陸上選手権。走り幅跳び男子T44クラス(片ひざ下切断など)のマルクス・レーム(ドイツ)は、8m40cmで自身の持つ世界記録を更新した。これは2012年のロンドンオリンピック男子走り幅跳びの金メダル記録をも上回る脅威のレコード。「ついにパラリンピアンがオリンピアンを越えた」と世界を驚かせた。背景の一つには、競技用義足の著しい進化がある。高い反発力を持つカーボン繊維製の義足は、様々な改良がなされており、義足アスリートの記録更新ペースを加速させている。一方、跳躍においては人間の脚より有利だという指摘もあり、レームがリオデジャネイロオリンピック出場を目指すと公言したことで、大きな議論が巻き起こった。テクノロジーの進化は、健常・障がいの境界を確実に溶かしつつある。2020年の東京大会は、パラリンピアンがオリンピアンの記録を次々と塗り替える、エポックな大会になるかもしれない。
※画像:マルクス・レーム(SportsPress/アフロ)