小宮山宏

あと1000日でできること 三菱総合研究所理事長 小宮山宏インタビュー

持続性社会を世界に先駆けて実現し、日本のレガシーに

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in collaboration with 日経マガジンFUTURECITY

これまでオリンピック・パラリンピックの開催都市は、大会前後でその姿を一変させてきた。2020年の東京大会まで、残すところあと1000日となった今、多様な人々が世界中から訪れるその日のために、東京はどのように変わっていくべきなのか。また、どのようにその魅力をアピールするべきなのか。「東京をもっとひらくためにできること」について、「プラチナ社会」を提唱する三菱総合研究所理事長の小宮山宏に聞いた。

持続性社会を世界に先駆けて実現し、日本のレガシーに

−小宮山さんは近年、日本が直面する課題を解決する新しいビジョンとして、高齢者を含む多様な人々が生き生きと共生する「プラチナ社会」を提唱しています。大会開催までの1000日間で、東京がこのような社会に近づくために取り組むべきことは何でしょうか。

1964年に開催された東京大会では、新幹線や高速道路が多数整備され、日本の高度成長を支えるレガシー(遺産)となりました。しかし物質的な豊かさは、同時に大量消費社会をもたらしました。私たちはまず、資源の過剰利用と製品の廃棄を繰り返す「過去のシステム」から脱却し、持続可能な社会の実現に本気で取り組まなければなりません。

−「持続可能な社会」とは、どのような社会でしょうか。

持続可能な社会とは、地球の環境を守りながら持続的に発展していく社会のことです。2020年の東京大会は、日本の高い環境技術をフル活用し、日本が主導する持続性社会の未来を世界に発信する機会にすべきでしょう。例えば、大会を再生可能エネルギーで運営したり、大会期間中に出る大量の廃棄物を再利用して「ごみゼロ」を実現する。また廃家電などに含まれる金属を再利用して大会メダルを作ることも、地球環境の持続可能性を示す素晴らしいモデルプロジェクトになるはずです。実は私たちが暮らす東京という街は、リサイクル可能な金属が豊富に眠る「都市鉱山」でもあるのですから。

−このようなアイディアを具体的なアクションにつなげるためには、どのような仕掛けが必要でしょうか。

重要なのは、オリンピック・パラリンピックを、すべての人が自由に参加できるひらかれたイベントにすることです。運営側がトップダウンに物事を決めていくのではなく、市民一人一人が高い参加意識を持ち、多様なプロジェクトをボトムアップで作り上げていく。そうした真の意味での民主主義の実現が、オリパラ成功のためには不可欠なのです。実際、前出の「メダル制作プロジェクト」は市民主導で進められています。

−オリンピック・パラリンピックを経た東京は、どのような姿になっているでしょうか。

ごみゼロの実現や都市鉱山、再生エネルギーの活用が進み、今以上に社会と人間が地球環境と調和しながら共生する、そんな「プラチナ社会」を実現していたいですね。ロンドンもリオデジャネイロもできなかった、未来の社会のあるべき姿を総体として実現すること。そして、この困難な課題に取り組んだ人々の知見やノウハウの全体像を資産と捉え、2020年の東京大会のレガシーとして残していきたいです。

小宮山宏(こみやま ひろし)

1944年、栃木県生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学工学部教授、副学長などを経て2005年、総長に就任。2009年に同職を退任後、三菱総合研究所理事長に就任。サステナビリティの世界的権威として知られ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では街づくり・持続可能性委員会委員長を務める。

日経マガジンFUTURECITY第2号から転載

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