東京ひらく考 東京都知事 小池百合子インタビュー

障壁を取り除き、万人にひらかれた国際都市へ

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in collaboration with 日経マガジンFUTURECITY

2020年に向け、大きな変化のときを迎えている日本の首都、東京。今、東京が抱える課題、そして目指すべき姿とは何なのか。巨大都市の舵取り役を担う都知事 小池百合子に話を聞いた。

障壁を取り除き、万人にひらかれた国際都市へ

私たちは2016年に、東京の外国人旅行者数を2020年までに年2500万人へ増やすことを目標に掲げました。今はそこに向かって、明確なビジョンとともにさまざまな改革に取り組んでいます。

そのひとつがアジアの金融センターの地位を再び確立することです。世界は今、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領誕生などで揺れていますが、これを世界の高度人材を東京に呼び込む好機ととらえています。現在、大胆な規制緩和をはじめ、外国人の起業を促すワンストップサービスの提供や「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)*」の徹底、英語による医療、教育サービスの拡充など、「バリアのないビジネス環境づくり」を急ピッチで進めています。こうして世界に「Why not to Tokyo?」という空気をどんどんアピールしていきたいですね。

もちろん、そこには課題もあります。日本にいると気づきませんが、初めて日本を訪れる外国人にとって、東京はまさに「不思議の国」です。例えば、道路標識のローマ字表記や公共空間にある和式トイレ。外国人にとってこれらは謎でしかありません。残念なことに、国が言語政策や文化的な意図を持ってやっているのではなく、単にグローバルな視点の欠如によってこのような状況になっている。今は、公共サインの英語併記化やスマホアプリによるマルチ言語対応、そして公共空間のトイレ洋式化を都の政策として進めています。

一方で、その謎が東京らしさと理解され、人気を博している例もあります。新宿のゴールデン街有楽町のガード下などはその好例でしょう。こういう場所は、大切に残していかなければなりません。安全、安心であることも、東京が持つ素晴らしい個性だと思います。日本人にとっては当たり前の日常ですが、これだけの大都市で犯罪やテロのリスクが少ないことは、非常に貴重なことです。世界広しと言えども、落とした財布がそのまま戻ってくる都市はほとんどありません。蛇口からの水がそのまま飲めるのも日本ならではです。

東京には私たちが気づかない宝物が山ほどあります。その宝物をどんどん世界に向けて披(ひら)いていくのも、都のリーダーである私の使命です。世界に向けて「美食の街=おいしい東京*」を打ち出したり、老舗企業や伝統工芸品の海外展開をサポートする「江戸東京きらりプロジェクト推進委員会*」を設置するなど、今後も東京の存在感を高めるプランを次々に仕掛けていきます。

1964年の東京オリンピック・パラリンピックは、日本に成長をもたらしました。2020年の東京大会は、日本に新たな成熟をもたらすでしょう。あらゆるバリアをなくし、すべての人にひらかれた東京の立ち位置を明確にする絶好のチャンスです。これを機に、超高齢化や人口減少さえも強みに変える世界初の「高度成熟都市」を実現したいと思っています。

小池百合子(こいけ ゆりこ)

1952年、兵庫県生まれ。エジプト国立カイロ大学卒業後、アラビア語通訳、経済キャスターを経て1992年に参議院初当選。翌1993年には衆議院議員となる。環境大臣、防衛大臣、自民党総務会長などの要職を歴任。2016年、女性初の東京都知事に就任。

OPEN TOKYOを知るキーワード

フィデューシャリー・ デューティー(受託者責任)
金融商品の開発、販売、運用、資産管理などにおいて、顧客から信認を受けた金融機関=受託者(fiduciary)が果たすべき顧客最優先の義務や責任(duty)のこと。近年、金融庁によって確立と定着が図られている。

おいしい東京
「美食の街」として知られる東京は、ミシュランガイドの星を獲得したレストラン数においても世界トップレベル。この豊かな食文化を活かしたインバウンド戦略にも注目が集まる。

江戸東京きらりプロジェクト
都内の老舗企業や伝統工芸品、江戸から伝わる匠(たくみ)の技などの保護やブランド価値向上を目指す。民間からマーケティングやブランディングの専門家を招き、海外発信にも積極的に取り組む。

日経マガジンFUTURECITY創刊号より転載

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