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新潟県南部の越後妻有(えちごつまり)地域で3年に1度開催される、大規模な国際芸術祭『大地の芸術祭』が、7月末から始まった。2015年には50万人以上が訪れた、この夏注目のイベントである。今年は、十日町市から津南町までの6つのエリアに、過去の開催時に制作された恒久作品と新作を合わせ、アジアを中心に44の国と地域の作家による作品378点が展示される。ここでは、2018年の新作を中心に、芸術祭の見どころを紹介する。
キナーレにまず立ち寄る
キナーレ中央の水盤には、レアンドロ・エルリッヒの新作が登場
オニバスコーヒーのスタンドは、東京芸術大学藤村龍至研究室によるもの
越後妻有里山現代美術館 キナーレは、2003年に交流館としてオープン、2012年に現代美術館としてリニューアルした施設。芸術祭のメインイベントのひとつとなる企画展『建築家とアーティストによる四畳半の宇宙』が開催中だ。会場には、段ボールを材料にしたオニバスコーヒーのスタンド(東京芸術大学藤村龍至研究室)や、最小空間のカラオケスナック(GRAPH + 空間構想)、公衆サウナ(カサグランデラボラトリー)など、約30組のアーティストが2.73メートル四方の空間にアート作品を作りあげた。
トップシェフの料理を味わう
ガイドつき日帰りオフィシャルツアー「カモシカぴょんぴょんコース」では、ミシュラン創刊以来三つ星を連続獲得しているフレンチレストラン、ジャン・ジョルジュ・ゲリスティンの味が楽しめる。東京店のシェフ、米澤文雄が監修した特別ランチは、前菜からデザートまで全5品。越後妻有の郷土料理や地元食材からインスピレーションを受けたランチメニューはどれも優しい味わいだ。涼やかな『フレンチ冷や汁』は、暑さの中で作品巡りをした体にじわりとしみ込む逸品。
洒落た土産はここで揃える
カフェ喫茶TURN(右)と10th Days Market(左)
10th Days Marketには、ひびのがデザインした雑貨が並ぶ
旅行に行ったら手に入れたいのは、素敵な土産。十日町駅東口を出てすぐの場所にある、日比野克彦とひびのこずえ夫妻の作品は忘れずに立ち寄りたい。日比野のカフェ喫茶TURNでは、太陽の熱で温められた水と同じ温度の茶のもてなしを受けられるほか、パッケージがリデザインされた名産品などが販売されている。ひびのの10th Days Marketでは、彼女がデザインした、洒落たハンカチやハンドタオルなどのアートな小物が購入できる。
時間がないならツアーがおすすめ
温泉や食を楽しみながらのんびり巡るのもいいが、アート作品を計画的に見たいなら、ガイドつき日帰りオフィシャルツアーがおすすめ。ツアーは2種類あり、信濃川沿いに点在する作品を巡る「シャケ川のぼりコース」と、ダイナミックな地形の川西エリアを巡る「カモシカぴょんぴょんコース」がある。料金は9,800円(パスポート代別途必要)で、昼食付きだ。
見ておくべき新作3つ
1.クリスチャン・ボルタンスキー『最後の教室』『影の劇場』
クリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマン『最後の教室』(2006年)photo by Takuboku Kobayashi
2006年から旧東川小学校全体を使った大規模な展示。この作品でアートに目覚めたという人もいるかもしれない。この場所に新作『影の劇場』が加わった。フランス出身のボルタンスキーは、一貫して生と死をテーマにした重い作品を発表してきた現代美術の巨匠。今年は地元のボランティアが、制作に参加したこともあってか、ボルタンスキーはワイン片手に陽気に作品づくりをして帰っていったそうだ。
2.マ・ヤンソン(MADアーキテクツ)『ライトケーブ』『ペリスコープ』
2021年にロサンゼルスにオープンするジョージルーカス博物館の建築を手がけることでも注目されている、若手建築家のマ・ヤンソン。今年4月にリニューアルした、清津峡渓谷トンネルの3つの見晴らしポイントに作品を作りあげた。途中にあるトイレはマジックミラーになっていて、用を足しながらでも、絶景を楽しめるという気の利いた仕掛けがある。
3.アーメット・オーグッド『カードリフターズ』
トルコ人アーティストアーメット・オーグットは、道ばたに車を奇妙な姿で放置した。この作品は、1970年代後半からサウジアラビアなどの裕福な若者たちのあいだで流行している、車体をドリフトさせて片側の二輪だけで走行しながら、乗客が車外に出て踊ったりする行為を再現している。ドリフトする車のほとんどが日本車であることに着想を得たそうだ。