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北品川にある築90年以上を誇る長屋の1棟が、2022年6月3日、最先端のデジタル技術と融合した『XR HOUSE 北品川長屋1930』に変貌した。 『XR HOUSE 北品川長屋1930』は1930年代に建てられた5棟の古民家群のうち1棟の内部を「XR技術」を活用して改装した実証実験プロジェクトだ。XR技術とは拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)といった現実世界と仮想世界を融合する表現技術の総称である。
同プロジェクトはリアル世界とバーチャル世界の共生を目指した空間や、人の動きに家が音と光で反応し、まるで家が人格を持ったように感じさせる空間を創出。建物とデジタル技術を組み合わせることで生まれる新しい価値の検証を行う。
大和ハウス工業とバンダイナムコ研究所とノイズ(noiz)の3社による共同事業で、各フロアの企画構成や建物についての知見提供を大和ハウス工業、デジタル技術の企画については、玄関からのアプローチと1階をノイズ、2階をバンダイナムコ研究所が担当している。
開発背景として、コロナ禍によるデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応や空き家問題という課題に対して、デジタル技術に知見の深い建築家であるノイズの豊田啓介が、「未来の暮らし」にエンターテインメントの視点を取り入れる提案を大和ハウス工業へ実施したことからスタート。XR技術の研究開発を手がけるバンダイナムコ研究所とのワークショップなどを経て、「少し先の未来の暮らし」を具現化するために、3社共同の形で2020年12月に『XR HOUSE 北品川長屋1930』建設プロジェクトが立ち上げられた。
リアル世界とバーチャル世界の共生を目指した空間演出は古民家内の和室にある襖(ふすま)、障子(しょうじ)、畳(たたみ)に施されており、日常生活に浸透するようなデジタル表現を追加している。 障子や襖を開けるとバーチャル世界を日常からのぞいているかのようなモノクロの屋外空間が広がる。高音質な環境音の効果により、外とつながっているような開放感のある空間を作成。畳はノイズがデザインした『ボロノイ畳』に、LED技術を組み込むことで、コンテンツに沿った自由度の高い演出を可能にした。
1階のプロジェクトでは、ビーコンやレーザーを使って測定するセンサー技術を取り入れたセンシングデバイスを活用。古民家が常に人の位置を把握し、人が建物内のLED電球に触れると、その位置などによって多種多様に変化する反応を空間内のタイルへ映像とサウンドに変換して投影する。古民家という環境自体がデジタル技術によってあたかも人格を持った存在として、家が人とコミュニケーションを図るという、未来の生活が感じられるような設計となっている。
こうしたリアルとデジタルの融合に利用者が触れることで、「住まい価値(利用上の価値)」についてどのように感じるかを検証する。期間中には未来の暮らしや住まいの価値について、有識者や業界関係者、学生などと意見交換するワークショップを開催。今後の住宅、建築業界の新しい価値の創出につなげていく。
実証実験は2022年8月31日(水)まで。募集によって参加者を募るが、残念ながら一般入場は予定されていない(募集人数なども未定)。だが、ニュースに目を通すだけでも「未来の暮らし」への想像がふくらむプロジェクトであることは間違いない。建築とデジタルが融合した新たな取り組みにこれからも注目したい。
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