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ワタリウム美術館を舞台にしたVR作品に注目、雨宮庸介の都内初の展覧会が開催中

3月30日まで、初期作品や代表作の『溶けた林檎』、最新作を一堂に

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Kaoru Hoshino
雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino『溶けた林檎』(2004〜2024年)
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アーティストの雨宮庸介による東京の美術館での初個展「雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」が、2025年3月30日(日)までワタリウム美術館」で開催している。2000年に制作された雨宮の最初期作品から代表作の『溶けた林檎』から最新作『まだ溶けていないほうのワタリウム美術館』までを一度に観られる、またとない機会だ。

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino『Fruits and the colors(black & white)』(2020年)

1979年生まれの雨宮は、多摩美術大学美術学部油画専攻を卒業後、2011年に渡欧し、2013年にアムステルダムのサンドベルグ・インスティテュート修士課程を修了した。その後、ベルリンを拠点に活動し、2022年に10年ほど生活していた欧州から帰国した。

雨宮は、代表作として知られている『溶けた林檎』を2005年からライフワークとして作り続ける一方で、映像など多様な表現方法に挑み、常に現実と虚構について問い続けている。同展では、雨宮の多彩な作品を網羅的に配することで、アーティストとしての確かな足跡を示すとともに、彼の作品をさらに深く掘り下げる。

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshinoロッカーの入り口

展覧会は、2階に設置された小さな扉を開くところから始まる。屈みながら向こう側へ出ると、扉は複数並んだロッカーの一つにつながっていたことに気がつく。部屋に入るたび体のサイズが変わる『不思議の国のアリス』のように、この小さな扉は、身体感覚が揺さぶられる感覚を与えてくれる装置として機能している。身近なものを素材にしながら、鑑賞者に自身のリアリティーを再考させる問いを忍ばせる、雨宮らしい仕掛けだ。

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino『長テーブルと林檎が描かれたドローイング』(2001〜2024年)、『溶けた林檎』(2004〜2024年)

扉の先にある薄暗い室内には、柔らかなライトに照らされた長テーブルが置かれ、その上には雨宮の代表作『溶けた林檎』が30個ほど並べられている本物のリンゴと見紛うほどに精巧に作られた彫刻だが、それらは重力に押しつぶされたかのようにどろりと溶け出している。「リンゴらしさ」と「リンゴらしくなさ」の相反するする2つの要素を内包させた作品だ 

どこでもないここを肯定するVR作品

3階では、雨宮が同展開催直前まで制作していたというVR作品『まだ溶けていないほうのワタリウム美術館』が体験できる。展示室に座ってVRのヘッドマウントディスプレー(HMD)とヘッドフォンを装着すると、先ほどまで自分がいた展示室そのものが目の前に広がり、仮想現実で現実を体験するという不思議な状況に没入できる。

最新VR 作品のためのドローイング(2024年)
最新VR 作品のためのドローイング(2024年)

雨宮は、仮想現実へと誘う装置であるHMDを逆手に取り、鑑賞者を一度「ここではないどこか」へ送り出すことで、「どこかではないここ」へと再び目を向けさせる。鑑賞する前と後では、現実そのものを肯定する新たな視点が加わったような清々しい感覚が味わえるだろう。同展の中でも、特に印象的な作品だ。

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino「ビューイング・ストレージ」

あらゆる仕方で「普遍性」を表現

4階には、同展の手がかりとなる「ビューイング・ストレージ」が設置。ここは、雨宮がこれまでに制作してきた作品群や制作過程の木彫などが雑多に置かれたスタジオのような空間となっている

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino「ビューイング・ストレージ」では制作過程の作品群が鑑賞できる
雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshinoビデオインスタレーション『Translator's High』(2006年)

会場では、東日本大震災から10年後の2021年に開催された「Reborn-Art Festival」で上映されたビデオインスタレーション作品『石巻13分』の記録映像が鑑賞できる。また、6個の小さな石を6人が一つずつ持ち、5年ごとに引き継ぎながら1300年間ただ持ち運ぶ壮大な作品『1300年持ち歩かれた、なんでもない石』の概要も展示。これらの展示は、雨宮の世界観をさらに深く掘り下げる一助となるだろう。

雨宮庸介
Photo: Kaoru Hoshino『1300年持ち歩かれた、なんでもない石』(2014〜3314年)

雨宮がこれまで制作してきた作品が網羅的に展示され、作品の根底に流れるテーマが浮かび上がる同展。どの作品も見逃せないが、会場ではぜひVR作品の体験をおすすめする。毎時00分と30分から実施されるが、デバイスの数に限りがあるので、時間に余裕を持って足を運んでほしい。

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