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クィア&フェミニズムパーティーのWAIFUがDOMMUNEで配信

誕生のきっかけとなったDJを追悼、4月10日の模様をレポート

Hisato Hayashi
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Hisato Hayashi
Editor/Writer
WAIFU @ DOMMUNE #2
WAIFU @ DOMMUNE #2
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2021年4月10日、クィア&フェミニズムをメインテーマとするDJパーティーのWAIFUが、SUPER DOMMUNE開催を迎えた。WAIFUはジェンダー、セクシュアリティー、人種などに関わらず、さまざまな人が安心して楽しめるセイファースペースを作り出すパーティーとして2019年に青山蜂で始動。2020年末にはコンタクトでカウントダウンパーティーを行い、注目を集めている。

WAIFU
左からリサ、エリン、ローレン、ミドリ(Photo: DOMMUNE)

今回は、WAIFUが始まるきっかけとなった人物で、2020年に逝去したDJ、Dora Diamantへの追悼パーティーとして開催。トランスジェンダーカルチャーと差別、アクセシブルなセーファースペースについてのトークや、DJ、ライブイベントもある約4時間の見応えある配信となった。

4月10日はWAIFU誕生のきっかけとなったDJの命日

トーク第1部には、WAIFUメンバーのエリン・マクレディ、ローレン・ローズコーカー、ミドリ、元オーガナイザーのリサ、DJのTica、NATURE DANGER GANGのプラズマが登壇。WAIFUの始まりは、2019年に新宿2丁目のとあるレズビアンパーティーで、トランスジェンダー女性のエリンが入店拒否を受けた事件から始まった。

パリのクィアシーンでアイコン的存在だったDoraは、当日ゲストDJとして呼ばれていたが、エリンの入店拒否を受けて「そのようなパーティーではプレイできない」と抗議し出演をボイコット。WAIFUはDoraの勇気ある行動に応え、新たなパーティーとして立ち上がったのだという。

『Dora ♡ ARIGATO ーDora Diamant 追悼 WAIFUー』
『Dora ♡ ARIGATO ーDora Diamant 追悼 WAIFUー』

リサ:話を聞いて、「トランスの女性が差別されるのはおかしい」と仲間たちで渋谷の居酒屋に集まりました。その夜にWAIFUの名前も思いついた。WAIFU(ワイフ)は英語と日本語のどちらでも意味が通じるけれど、ネットで検索すると「俺の嫁」と表現されるようなポルノ要素も含むアニメキャラクターの女の子がたくさん表示される。WAIFUを続けて行くことで、強い女性たちがパーティーを楽しんでいる様子が検索結果を埋め尽くすようになったら面白いなって。

またWAIFUは、トランスジェンダー女性のエリンとパートナーであるミドリのカップルの「婦婦」のつながりを示す言葉でもある。WAIFUメンバーとDoraとの親交が深かったTica、DoraのスカウトによりBALENCIAGAのモデルとして大抜擢されたプラズマが、Doraへの思いを語り、TicaのDJで締めくくられた。

トランスジェンダーカルチャーと排除の歴史

トーク第2部では『トランスカルチャーとトランス排除』をテーマに、トランスジェンダー活動家でセックスワーカーの健康と安全のために立ち上がったSWASHのメンバーである畑野とまと、WAIFUメンバーのアサミが登壇。クラブカルチャーの歴史とクィアカルチャーとの関わりや、クラブはもともと人種やセクシュアリティのマイノリティ達にとってセイファースペースとして機能していたこと、エリンとミドリの「婦婦」としての在り方をめぐる訴訟の進捗(しんちょく)が話された。

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左からエリン、畑野、アサミ(WAIFU @ DOMMUNE #2)

畑野:ドラァグボールカルチャーの始まりは、1920年代のニューヨークの地下。当時はドラァグクイーンとトランスジェンダーがごっちゃになっていた時代です。女装をしていることが逮捕の理由になるなかで、警察がマフィアと癒着して賄賂を受け取ることで当事者たちを守るという、とんでもない時代でした。

資料: 畑野とまと
資料: 畑野とまと

畑野:有名なマドンナのヴォーギングダンスも、ドラァグクイーンの文化から育まれたもの。クィアカルチャーのなかで生まれた文化はたくさんあって、現在もずっと交差しています。

2部の最後には、「婦婦」としての訴訟に向けてクラウドファンディングを行ったエリンとミドリのドキュメンタリー映像が流れるシーンも。

続いてスタイリスト、ミュージシャン、アーティストとしての活動行う清水文太と、ドラマーのhina、音大生のそうたろうによる和太鼓を用いたライブパフォーマンスが行われた。

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清水文太×hina×そうたろう(Photo: DOMMUNE)
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hina(Photo: DOMMUNE)

可能な限り全ての人を属性で排除しないWAIFUの趣旨

第3部となるトークには車いすユーザーでジャーナリストの徳永啓太、白杖(はくじょう)ユーザーでNPO NEW VISION代表の松村智也、WAIFUオーガナイザーのマユコ、アサミが登壇した。

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左から徳永啓太、松村智也(Photo: DOMMUNE)

3部のテーマは『よりアクセシブルなセーファースペースを目指して』。クラブとアクセシビリティーについて話されるなかで、車いすユーザーでコラムニストの伊是名夏子が受けた体験にも触れ、バリアフリーの定義や障害者差別解消法、合理的配慮への無理解や、運動と怒りの歴史についても語られた。

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資料: WAIFU

またクラブのほとんどは、車いすに適した環境ではない現状がある。可能な限り属性による排除がないパーティを参加者とともに作り上げることを目標にしているWAIFUにとってもこの課題は重要だと、メンバーのマユコは話した。

徳永:バリアフリーが施されている会場は、私が知っている限りでは、東京だとContact Tokyoのみです。小箱で面白そうなことをやってる場所に限って、アクセスが難しいという問題がある。

松村:クラブカルチャーが盛んなベルリンでも、そして東京でも、入店を止められた経験があります。ゲストで呼んでくれたDJが来て、1時間も粘ってやっと入れてもらった。付き添いの人がいないとダメだと言うけど、クラブ会場で友達に付きっきりで居てもらうのも、深夜に福祉の人に来てもらうのも難しいことです。

マユコ:公共機関などに対しては合理的配慮の実施に法的義務があるのに対して、民間業者に対してはあくまで努力義務に留まっていますが、民間であっても介助者の同伴がないことで入場拒否を行うことは、障害者差別解消法では禁止されている不当な差別的扱いに当たります。

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松村智也(Photo: DOMMUNE)

トークを受けてDOMMUNE代表の宇川直宏は、「DOMMUNEは地上9階のアンダーグラウンド。今日の話を聞いて、障がい者の人にもディープなカルチャーやサウンドシステムを体感してもらえる場としてDOMMUNEを活かせることに気づきました。障がい者へ向けたプログラムをSUPER DOMMUNEでやろう!」と応えた。渋谷パルコはエレベーターとユニバーサルトイレもあり、通路も広いことからアクセスがし易いと、実際に車いすで来場した徳永からも高評価だ。

後日、2021年4月27日配信のDOMMUNE別番組『「アンジェラ・デイヴィスの教え〜自由とはたゆみなき闘い」に教わったこと』でも、出演者と宇川直宏はこの話題に触れ、「渋谷PARCOでスタジオを運営する意味を車いすの方の目線でフロアを見ることが事が新しい発見。本日より身障者手帳を見せると入場無料」と宣言する一幕もあった。

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Sobriety(Photo: DOMMUNE)

WAIFU@DOMMUNEは予定時間を過ぎ、ラストはSobrietyのDJで締めくくられた。カウンターパーティーとして始まったWAIFUは、誰しもを排除しない開かれたパーティーへ歩みを進めている。また5月29日(土)には、関連パーティーのSLICKを予定。成田空港で行う野外シークレットイベントで、16Portal、7e、Mari SakuraiほかDJ陣による16時間ものパーティーだ。踊りたい人はチェックしよう。

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