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コーヒーをワイングラスで味わったことがあるだろうか。あるいはコーヒーのトニックウォーター割り、あるいは熱燗(あつかん)で抽出したコーヒーを体験ことがあるだろうか。2021年4月22日に高島平にオープンしたビバ コーヒーは、質の高い自家焙煎(ばいせん)豆の販売とコーヒーの提供に加え、コーヒーの新しい可能性を体感させてくれるコーヒーショップだ。
オーナーのビバ中川は、ドトールコーヒーのデザイナーを経てアマナでコーヒークリエーターとして活躍した経歴の持ち主であり、日本スペシャルティコーヒー協会認定の「アドバンスドコーヒーマイスター」という肩書きも持つコーヒーのプロフェッショナルである。
「ビバ」とは彼のコーヒーネームで、店名にもそれを冠している。いつでも楽しそうにコーヒーについて語ってくれる彼の人柄をよく表していて、カウンターでの立ち飲みを楽しめる角打ちスタイルにも似合う。
店舗全体のデザインはリビルディングセンタージャパンが担当。店頭の外看板や店内のカップ、トイレの手洗いボウルなどは益子の陶芸作家である石川若彦が、店内のコーヒー絵画は同じく益子の造形作家KINTAががそれぞれ手がけ、「コミュニティを築きながら、地元から世界へ楽しいおいしいコーヒーを発信したい」というビバ中川の思いが形になっている。
コーヒー豆は、エチオピア(浅いり)、ビバブレンド(中いり)、グアテマラ(中いり)、ケニア(中深いり)、マンデリン(深いり)、カフェオレブレンド(アフターミックス)の6種だ(現在カフェオレブレンドは終売したが、新たにおやつブレンドが登場)。もちろん全て自家焙煎だ。焙煎技術を競う世界大会で用いられているギーセン社の大型機種でそれぞれの豆の風味を引き出す焙煎を施し、常に高い鮮度で用意している。
コーヒー愛あふれる独創性
冒頭で挙げたワイングラス、トニック割り、日本酒との掛け合わせは店内で堪能できる。まずはワイングラスについて。店内で提供されるコーヒーは、カフェオレを除いて全てワイングラスで提供される。
ビバ中川いわく「コーヒーの芳醇(ほうじゅん)な香りを最も感じさせてくれるのがワイングラス」だそうで、実際にグラスを変えて飲み比べてみると本当に感じ方が違い、ワイングラスで飲むものがおいしく感じるから驚きだ。
続いて、トニック割り。実はエスプレッソトニックというものはすでに存在していて、コーヒーチェーンでもメニューに並んだことがあるという。まだ認知度も高くなく定着もしてこそいないが、この意外な組み合わせは相性が良く、ビバコーヒーでは水出しアイスコーヒーを用いることで口当たりをすっきりさせている。
日本酒との斬新な組み合わせも面白い。お湯ではなく熱燗でコーヒーを抽出する燗(かん)コーヒーは、熱くても冷めてもおいしい、という日本酒とコーヒーの共通点をヒントに考案したビバ中川のオリジナル。イベントなどでふるまってきた自信作で、満を持して提供する。
新しいコーヒーの楽しみ方。その意外性は実際に口にして初めてポジティブに感じることができるもので、この驚きを伝えきれないのが口惜しい。また、オープン時期と緊急事態宣言が重なったため、店内でのトニック割や燗コーヒー、ワイングラスでの提供スタートは少し先だ。
とはいえ、テイクアウトのコーヒーも焙煎豆も一級品で、これだけでも十二分にコーヒーの魅力を堪能できる。まずは素のままのビバコーヒーを味わいに足を運んでほしい。
テキスト:組橋信太朗
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