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神奈川の相模原に、約90もの自販機が並ぶ場所がある。その多くが1965〜1975(昭和40〜50)年代に稼働していたもので、テレビでも何度か紹介され、週末には県外から自販機を目当てに人が集まってくるという。いったいどんな自販機に出合えるのだろうか。
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電車とバスを乗り継いで、中古タイヤ市場 相模原店にたどり着いたのは休日の14時ごろ。あいにく小雨が降っていたが、にぎわいがある。子ども連れが多い。約50メートルにわたって整然と2列に並ぶ自販機の光景に圧倒されながらも、まずは全体を見回してみる。今ではすっかり見なくなったハンバーガーやトースト、ポップコーンや瓶コーラの自販機もあり、1955(昭和30)年代から動いているという「ロッテ チウインガム」と書かれた自販機などは、団塊のジュニア世代のノスタルジーを刺激してくれる。ドリンクには、懐かしいものもあれば、見たこともないものもあり、フィルムや乾電池の自販機まである。
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こうした多様なラインアップのなかでも、多くの人が集っていたのはうどんやそばの自販機だ。うどん、そばの自販機の隣にある『チャーシュー麺』(400円)もかなり気になったが、今回は『天ぷらうどん』(300円)を食べてみた。料金を入れるとガタゴトと機械音が鳴り響く。わくわくしながら25秒待つと、自販機の取り出し口にプラスティック製の丼に入ったうどんのお出ましだ。汁は丼を模したカップからあふれんばかりの大盤振る舞いで、すっきりとした汁に心身が温もる。
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すれ違った50代前後の男性が、「映画『トラック野郎』でよく見た。懐かしい」と言っていたので調べたところ、確かに1970年代にヒットした映画シリーズの作中で、菅原文太演じる星桃次郎は時折、自販機のそばやうどんをすすっていた。
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『ハムチーズトースト』と『コンビーフトースト』の2種類から選べるトーストサンド自販機には、「こんがり焼いて40秒 COFFEEといっしょにどうぞ」のキャッチコピーが付いていた。こんがり焼けたトーストサンドは普通においしい。
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『ボンカレー&ライス』は甘口と辛口の2種類(各400円)が用意されており、自家製のパッケージも気が利いている。『ポップコーン』(150円)の自販機にはウェイティングが発生していたが、待ち時間も音楽で楽しませてくれる。『激辛チャーハン』(300円)は激辛ではないが、これもまた自販機の醍醐味(だいごみ)だろう。
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ほとんどの人は車で来訪して、広大な駐車場に車を停め、ドライブインよろしく車内で飲食していた。親に小銭をねだる子どものほかにも、ユニフォーム姿の子どもたちを引率し、「先生の子どもの頃はなあ」とうれしそうに昔話を始める、部活の顧問らしき男性も印象的だった。
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何度も通路を行き来して何を食べようか考えている人や、商品ができるまでのカウントダウンの数字を真剣に見守る人など、誰もが楽しそうな時間を過ごしている。レトロ自販機が余生を送るその場所は、人も童心に帰ることができる楽園だったのだ。
テキスト:長谷川あや
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