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最新の研究成果も、ミイラやピラミッドの謎に迫る古代エジプト展が開催

六本木「森アーツセンターギャラリー」で4月6日まで

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Chikaru Yoshioka
ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima展示風景
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ミイラ、ピラミッド、スフィンクス、ツタンカーメン、クレオパトラ……さまざまなイメージを持ち、世界中の人々を強く魅了し続けている古代エジプトの世界。しかし、その3000年の歴史は未だ多くのミステリーに包まれている。

森アーツセンターギャラリー」では、そんな謎を掘り起こす「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が、2025年4月6日(日)まで開催。質の高いコレクションが、最初にこの分野の収集を始めたニューヨークの「ブルックリン博物館」から来日した。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima貴族の男性のレリーフ

彫刻、ひつぎ、宝飾品、土器、パピルス、そして、人間とネコのミイラなど約150点の遺物から、最新技術に基づいたピラミッドの研究成果までを通じて、高度な文化を創出した人々の営みをひもとく。

ユニークな出産や衣食住の謎

本展は「暮らし」「王族」「死生観」の3つのステージに分け、古代エジプトの謎に迫る。監修を務めたのは、気鋭の考古学者である河江肖剰(かわえ・ゆきのり)。彼が携わった最新の研究成果も本展で紹介し、知への探究心が呼び覚まされる空間が広がっている。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima女性を描いた壁画

第1ステージでは、衣食住や、出産などの暮らしに焦点を当てる。例えば、サンダルは履物ではなく、社会的地位や宗教的儀式などの象徴であった。また、目の周りのアイラインのことを指す「コホル」は、目を邪悪なものから守る呪術的な意味を持つ。孔雀石(くじゃくいし)などをすり潰して目の周りに塗り、眼病を防ぐ目的もあったという。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima第1ステージの展示風景

出産に関しては、出産してから3年間ほど母乳を与えるのがよいとされていただけでなく、母乳には治癒力もあると信じられていた。そのため、母乳をつぼに入れて保存し、クリーム状になった母乳を傷口などに塗っていたという。当時の常識がトリビアとして紹介されており、古代エジプト文化のユニークさと奥深さを発見できるだろう。

ピラミッドの知られざる内部構造

地球上で最も知られた古代建造物であるピラミッド。ピラミッド建造時、労働者が1個9500キロカロリーのパンを一日に数回支給されていたことや、ヒツジやビールなども数日に一度配給され、豊かな生活をしていたことが古代都市の発掘から判明している。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshimaピラミッドの内部構造に関する映像

また、3D計測や宇宙線ミューオンでの透視調査などの最新の研究結果から、これまで知られてなかったピラミッドの内部構造も展示。河江が発掘時に使用する「七つ道具」も並べられ、興味深い。

必見のクフ王の頭部

第2ステージでは、神の名前を冠し、巨大な権力を握っていた王を意味するファラオがテーマだ。その偉業や王朝史、王族の暮らしを紹介している。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima花崗岩(かこうがん)でできた王の頭部

見どころは、大ピラミッドを作ったクフ王と考えられている、花崗岩(かこうがん)でできた王の頭部。クフ王の彫像は極めて少なく、スペイン、ドイツと、ブルックリン博物館が所蔵する3点のみである。また、身分が高い家以外は一夫多妻制であり、90歳ほどまで生きたラメセス2世には子どもが100人近くいたというトリビアなども面白い。

ミイラの作り方も分かりやすく解説

最後は、死生観にまつわる謎を紹介。永遠の命を得ることができると信じていた古代エジプトでは、ミイラとして肉体を保存することが重要だった。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshimaミイラとなった遺体を収めるひつぎ
ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshimaそれぞれの臓器を入れるつぼ

遺体が腐敗すると死者の復活は不可能と考えられ、遺体から取り除いた胃や肝臓などの臓器を入れるつぼが臓器ごとに用意されていた。また、専門の職人や、天然の炭酸塩鉱物・ナトロンを大量に要するため費用がかかり、ミイラは身分の高い人々しかできないものであった。会場では、このような材料や手順などを示したミイラの作り方もアニメーションで分かりやすく、かつ、かわいらしく説明されている。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshimaジャッカルの像
ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshimaネコのひつぎとミイラ

さらに古代エジプト人は「神聖なものが動物の形で現れる」という概念を持っていたため、ペットに対して深い愛情を抱いていた。神聖化された動物は、死後の世界の奉納品であり、また、ほぼあらゆる動物がミイラとしても発見されている。死後も現世と同じような生活ができるとも信じられ、儀式用品や装飾品だけでなく、衣服や食べ物などもひつぎに入れられていた。

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima出品作品をモチーフにしたグッズ
ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
Photo: Kisa Toyoshima本展限定のタイアップメニュー

ショップも必見だ。古代エジプトファンにたまらないであろう出品作品をモチーフにしたオリジナルグッズが並ぶ。またカフェでは、エジプトフードのプレートや「発掘パフェ」といった本展限定のタイアップメニューも提供している。

頭も体も「古代エジプト尽くし」になれる本展。好奇心を満たし、謎を掘り起こす喜びを感じてほしい。

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